第57話 トオル、邪神と戦う
次の国へ救済に行くことになった。
あの4カ国が集まる領域の上空を飛んで行くことになる。あわよくば邪神の女神サイテンが手を出してくることを予測しての行動だ。一応仲間の4神獣には気配を消して雲に隠れていて貰う。
ヒキーヨ王国の上空に来た。神気察知に反応が有る。同時に前方から強力な魔力を持つ魔物が5匹、トオル目掛けて飛んでくる。
上位ドラゴンのエンシェントドラゴンが2匹。中位ドラゴンのファイヤードラゴンが3匹だ。
どうやら邪神が操っているようだ。
ファイヤードラゴンがブレスを吐いて来た。
10倍に強化したトオルの防御結界に当たって、10倍に強化されたファイヤーブレスが反射して放ったドラゴンを襲う。
そこへトオルの鉄球投擲が追い打ちをかける。
3匹のファイヤードラゴンは、なすすべなく頭部を粉砕されて命を失った。一般庶民に害を為さないように落下するドラゴンの死体はトオルのマジックボックスに収納された。
エンシェントドラゴンはトオルを動けなくしようと威嚇の咆哮で襲うが、そんなものはトオルには少しも効果が無い。
トオルの反撃だ。2匹のエンシェントドラゴンに時間停止魔法を掛ける。ドラゴン共は脳と心臓と筋肉の動きが止まって落下していく。ドラゴンはまだ生きている。亜空間に収納する。心臓の動きは止まったままだ。やがて最強と呼ばれたエンシェントドラゴン達はあっけなく亜空間の中で死んでいった。
『むむむ、何と言うことじゃ!わらわが命がけで育てたドラゴン共をいとも簡単に屠ってしまいおった。ハーフドワーフごときにやられるとは、嘆かわしい。何が最強の生き物だ』
女神サイテンが嘆いていた。
さて次はどんな手段で襲おうかと計略を巡らす邪神サイテンだった。
目的地アイリス王国に到着した。この国はアクーノ王国とクアンコン王国に接している。もしもの時の為に悪意ある者が入れない結界を張って置いた。トオルが居なくても遠隔操作出来る魔道具を作って普通の人間には判らない所に仕掛けて置いた。
アイリス王国は小さい国で、アクーノ王国と、クアンコン王国から嫌がらせされて搾取されていたが、ミレーナ女神信仰心が強い国民が多く、その願いが女神に届いたのだ。
トオルは【大規模畑地改良魔道具】を使って国全体の畑を肥沃に変えて、元の作物を、日本の小麦、ジャガイモのセットに替えるように勧めた。時間魔法で収穫までの時間を短縮させて味見を
させてさらにパン用のイースト菌を日本から取り寄せてパン職人に渡してパンを作らせた。
柔らかくて美味しい食パンの美味しさの虜になってイースト菌の研究に精を出して遂にこの国産の高品質なイースト菌が出来上がった。そして菓子パンや惣菜パンまで創り出すようになっていった。
この国もヤピン王国の同盟国だ。転送バッグも保有している。
この国産のパンが大陸を席巻するのに時間はかからなかった。
トオルはこの国には1年も滞在していた。
「これならもう大丈夫だな」
トオルはアイリス王国の行く末に安堵の念を覚えたのでモスタの森に帰る事にした。
さてどこをどう帰るかな、飛んで帰るか?、陸路で行くか?それとも転移か?
もしも邪神が待ち構えているとしたらどこだろうか?
良し陸路で行こう。
「出来るだけ人けのないところを通りたいのでどの道を通って行ったら良いのか教えて下さい」
冒険者ギルドに寄って道を尋ねる。間諜らしき男が聞き耳を立てているのが判る。
「ははあ、このテナンテーノ野営地には明日の昼ごろに着きそうですね」
わざと大きな声で喋る。怪しい男の姿がギルドから出て行ったので受付嬢にファイヤードラゴンの素材の買取の依頼をする。今回は肉も売る。その金でパンを大量に買っておく。
朝早くアイリス王国を出てテナンテーノ野営地を目指す。
怪しいグループが付いてきているが敵意は感じられない。
若い冒険者パーティーだろうか?単に新人がベテランの行動を参考にしただけかも知れないが、自分の戦いに捲き込んでしまう恐れが有るので少し距離をとったほうがいいかも知れない。歩く速度を上げることにした。
みるみるうちに距離が離れて行く。
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