第56話 思いがけない提案
播いた種が育ち順次収穫していく。
甘いトウモロコシ、そしてサツマイモ。野菜が甘いなんて信じられないと皆に言われた。砂糖が高価なこの世界。主食にもおやつにもデザートにもなる。
「これは売れますよ。量産して他の国にも売ってみます」
農業大臣が張り切っている。
例の4カ国が動く気配が無い。その間にミレーナ女神から頼まれて【大規模畑地改良魔道具】を持って貧困国を救うべく飛び回っている。操作方法を説明しながら、その国の特産になりそうな物を探しては試しに栽培して貰う。
それがまたよく当たる。貧困国を脱した国々から感謝され、庶民から神様扱いされて困惑するトオルだった。
「俺はただ、ミレーナ女神の手伝いをしているだけだ」とトオルが言うと「ありがたやありがたや、ミレーヌ女神様」
と、民衆の信仰心が爆上がりしていった。
そんな時ミレーナ女神からメールが届いた。
『ハーイ、君のマドンナ・ミレーナ女神よ。元気してた?ところであまり喜ばしくないお知らせがあるわ、あの頭のおかしい4カ国に頭のおかしい女神のサイテンが味方についたみたいなの。平気で卑怯なことをして来る悪女神だから充分に気を付けて』
憎々し気には話すミレーナ女神。過去に何か有ったのか仲が悪そうだ。
詳しいことを聞くと、彼女が半神前になって管理を任された土地は本来であればチリント王国やアテルイ村等の方じゃなくマルテウス王国を筆頭とした広大な土地を任されるはずだったのだそうだ。それが土壇場でその5分の1にも満たない大陸の東端を担当するように命令された。
後にそれがサイテン女神の陰謀によるものだと判明した。有ること無いこと誹謗中傷の話を上級神に吹き込んでいたらしい。上級神がそんな嘘に騙されるのかと疑問に思うかも知れないけど、上級神もやっぱり男。子供っぽいミレーナ女神と違って、女っぽいお色気むんむんのサイテン女神が甘え声で囁くとコロッと騙されていたと別の同僚女神が目撃したらしく、最上級神に報告した為に真偽を確かめた結果サイテン女神は左遷させられてミレーナ女神がこの大陸全体を管理するようになったのだそうだ。
神様の世界も人間の世界も同じだな、嫌だ嫌だ。トオルの中の菅山徹は召喚前の自分のおかれていた立場を思い出していた。
それが原因でサイテン女神はミレーナ女神を逆恨みした。ミレーナ女神の信仰心を爆上げさせているトオルを目障りに思って、同じ穴のムジナであるアクーノ王国、ヒキーヨ王国、ヒビーテ帝国、クアンコン王国の悪だくみに手を貸そうとしているらしいと、これまた別の同僚女神から忠告されたそうだ。
『もしもトオルやトオルの仲間に手を出すことが有ればそいつらの国を滅ぼしてもいいわよ』とのミレーヌ女神様の御許しも得た。
『但し何も知らない国民は予め周辺諸国に逃がしてあげて。その辺はわたくしが周辺諸国に避難民の面倒を見るように説得しておくから安心して』
というわけでそれら4カ国に特殊な結界を張って置いた。トオルに悪意を持つ者は結界外に出れないが悪意が無ければ外に出れる結界で、トオルがその国を滅ぼす気持ちになった時に発動するようにしておいた。
人間相手ならそれで対処出来るだろうが、問題はサイテン女神が自ら戦いに臨んで来たときにどう対処するかだがサイテン女神(この際邪神と呼ぶことにする)の力量がどの程度なのか?果たしてトオルが敵う相手なのか判らない。
判らないことに悩んでも仕方ないので常時自分の防御結界を10倍強化しておくことにした。その分の魔力量をコンロン山で採掘した魔石で補う。
更に魔力察知、索敵能力、神力察知能力も鍛えておく。
今自分が出来る事を精一杯やっておこうと決意したトオルだった。
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