第55話  大規模畑地改良魔道具

 ミレーナ女神の許可を得たので堆肥製造魔道具を作ることにした。この世界にはまだない魔道具なのでトオルにとっては作るではなくの文字が今の気持ちに合っていると思う。


先ずは落葉樹の腐葉土を集める機能を考える。幸いこの国の東はオイラキ山脈の山裾で落葉樹の森林がずーっと続いている。そのままでも畑に使えそうだ。

 それにアテルイ村やバジリス王国には米ぬかともみ殻が大量に有る。これだけでも堆肥は出来るが他の材料を使った堆肥と混ぜ合わせることでより栄養価の高い肥料になりそうな気がして色々試してみた。

堆肥を作るにはミミズや微生物が必要だから生き物を生きたまま保存できる亜空間と土が必要だな。醗酵してきたら自動的に天地返し出来る様にしておこう。それと適度な湿度が保てるようにしよう。

 完成時の状態を記憶するように1度完成品の堆肥を召喚しておこう。

 醗酵を早めるために時間魔法を組み合わせて堆肥製造魔道具を完成させた。


 伝承行事用の100m×100mの畑を貰い受けて実験する。

 まずフカフカの土壌を作るために畑を耕して腐葉土、もみがらと米ぬかの堆肥をを混ぜ込んでおく、これで保水性の良い、適度に空気を含む、保肥性の良いフカフカの土壌が出来た。

 そこに、雑草、野菜くず、米ぬか、魔物のくず肉、内蔵、糞、落ち葉などを堆肥製造魔道具に収納して堆肥を作って、土壌改良した畑の土に混ぜ込んで栄養たっぷりの畑が出来上がった。



 これを複製して王国内の畑の土を入れ替える。この時の魔法に使用する膨大な魔力をエストロア王国のコンロン山で採掘した魔石の魔力で代用して魔道具を操作する者の魔力が枯渇することが無くなったのだ。


 前述した作業を1台の魔道具で出来る様にした。【大規模畑地改良魔道具】が完成したのである。この魔道具で改良した畑地は約100年その性能を保つ。

ミリーナ女神のなせる御業みわざを完全に再現してしまった。


 ということで3日後に国中の畑の土を入れ替えるのでその日は畑に立ち入ってはならぬと国中にお触れが出された。


 それまでに農業大臣と打ち合わせてこの国で栽培している作物の種や苗を日本産の物に入れ替える準備を進めておく。さぞ美味しい野菜や果物、主食に出来るイモ類が食べれるようになるだろう。


3日後無事に国内の畑の土が入れ替わった。

農業大臣の指示に従って栽培したい野菜の種子や種芋を農民の手によって植え付けた。実際に野菜やイモ類を実際に育てるのは農民の人達なのでトオルが出来るのは栄養豊富に含んだ土を作るところまでだ。


それともう1つ。この国の原種に近い農作物を日本で、もしくは地球で品種改良された物に替えて行くことだ。

で今回用意した種は小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、ニンジン、タマネギ、キャベツ、白菜、ホウレンソウだ。


ただ、日本の米は水稲なのでこっちの世界では今すぐには作れない。なので米はこの世界のブラウングレインをそのまま育てることにした。時がたてばこの世界でも品種改良するだろうからそれに期待しよう。


 数年後にはチリント王国産の農作物がこの大陸の国中に出回り食生活に大きな影響を与えることになるだろう。


 そこでミレーナ女神から提案が有った。『今回作った【大規模畑地改良魔道具】をわたくしに売って欲しい』とのことだ。

 今ではミレーナ女神の管理地域はこの大陸全部に及んでいる。

今後この国のようにミレーナ女神が応援したい国が出てくるだろうからこの魔道具を運搬してその国の国王に操作方法を伝授してやって欲しいとのことだった。

 どうやら助けてやりたくない国もあるようだな。多分あの4カ国の事だろうと思うトオルだった。


さてチリント王国の100年毎の伝承をどうやって伝えていくかだが、国王の部屋に伝承行事の事を大きく書いた書面を額に入れて飾っておく。次期国王になる者の部屋にも飾って置いて、90年経った時から魔道具の操作方法を国王から次期国王に教えることにしたようだ。操作手順を書いた取説を大金庫に仕舞っておいて何時でも見て確認出来るようにすると言うことだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る