第52話 ブドウ畑に戻る
なんだかんだ構想を纏めて、帰路につくことになった。
帰路はここから1番近い街道までの最適なルートを空から探しながら、地図を作製して帰るために神獣の誰かに頼むことにした。
玄武のヒメが応じてくれた。
「トオルしばらく会えなくてさびしかったよう。さあ皆乗って」
トオルがヒメの背中にみんなと一緒に転移する。
「これが神獣玄武様の背中か!不思議だな下の景色がはっきり見えるが足元はしっかり支えてくれていて、落ちる恐怖心が無い」
「風も感じないし、快適だ」
「もっと上昇して近くの街道を探しましょう」
トオルの意思を感じたヒメがスーと上昇する。
エレベーターに乗っている気分だった。
「おお、雲が横に見える」
「雲が邪魔で下が見えないな」
トオルは風魔法で雲を遠ざける。
「ここだ。ここで止めてくれ」
地図作成職員が紙に地上の様子を写生している。早い。手慣れた手順で大まかな地図を作っていくそこへ既存の地図を重ねて詳しい地図に仕上げていった。
「道路は川沿いに作った方が良さそうですね」
地図担当の職員さんの指示に従って高度を変更する。
「洪水になったときに影響を受け無い高さで道路を作りたいのです」
地図担当職員のマットさんが教えてくれた。
傾斜が急になる所はジグザグに進み馬車がすれ違える幅の道にするそうだ。
「あそこに橋をかけて近道にしましょう。洪水の時は遠回りでも高い方の道を通る様にして」
「この辺に宿場が欲しいのう」
などと意見が飛び交い、おおよその道を作る案が出来た。
今後これを精査して予算を算出。工事を請け負う業者を募集するのだそうだ。
「魔鉱石を利用する道普請の魔道具を作るぞ。皆張り切ってくれ!」
「はい、長官」
魔法省の皆さんも張り切っている。
この大規模な工事には沢山の人力が必要だ。お金を稼げる仕事が出来て国民にも恩恵が有るだろう。道路工事の他にも魔道具製造工場も作るらしい。現金収入が有るのはいいことだ。
王宮に帰り皆さんを降ろす。国王陛下には頭を下げてお礼を言われた。
そして「あの愚かなアクーノ王国一味がトオル殿に危害を加えようとするときは及ばずながら我が国はトオル殿の助成をいたす所存。気軽に声を掛けて下され」
トオルは強力な味方を得た。
セルフさんの住むエストロア王国のワインの一大生産地グル―ナ領に帰って来た。
新しく植えたブドウの木も順調に育っていた。
たわわに実ったぶどうの実をたべてみる。うん、美味い。
これならトオルたちが去ってもだいじょうぶだろう。
地下の浄化装置も今は停止状態だ。魔力が正常な証拠だ。
「さあ、バッカスさんヤピン王国に帰りましょう」
「そうじゃな、今度は我らのワイン造りに
「そうですね」
さて、ヤピン王国に帰った途端。またまた国王陛下に頼まれた。
「トオル殿はオイラキ山脈を御存知かな?」
「はい、マルテルス王国の東側に有る山脈ですね。その山脈の裏側にはバジリス王国が有る」
「よく知ってるな。その山脈の裾野に細長いチリント王国が有るのだが、こたびの我が国侵略に、チリント王国は参戦しなかった。 戦争に参加するお金が無いのだ。そんな国がマルテウス王国に屈せず生き延びてこられたのは女神ミリーナ様への信仰厚く女神に愛された国と言われていてマルテウス王国も手を出しかねているからだった」
アテルイ村と同じだ。ということはトオルと同じ立場らしい。女神ミリーナの寵愛を受けし者として。
「で、俺にどうしろと?」
「国民を飢えさせたくない。その為に力を貸してほしいということだ。詳しいことは国王のトレーナー殿にきいてくれ給え」
ヤピン王国もその国を助けてやりたいようだ。エストロア王国の件にしろ今回の件にしろ優しい国王だなと思うトオルだった。
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