第48話 アクーノ王国と繋がる国々。宝の山発見
アクーノ王国がトオルを襲って失敗した事実がヤピン王国同盟国全体に直ちに報告された。それによって各国から不信の目で見られて、他国から嫌味を言われ、同盟国から追放すべしと言う声が溢れた。その一方でアクーノ王国に内密に近寄って来る国々も有った。
それはマルテウス王国が完全に負けるのが確定したころに、のこのこと参戦証明して同盟軍に入ったヒキーヨ王国だったり、勝利国の一員なのに、大した戦利品を得られなかったヒビーテ帝国だったりだ。ひどいのはマルテウス王国の一員だったのに勝利国側ツラつらして褒美を要求するクアンコン王国だ。
それらの国はアクーノ王国同様あわよくばトオルを誘拐して奴隷働きさせようと計画していた国々だった。1国で駄目でも4国が協力すれば誘拐出来るのではないかとアクーノ王国にトオルのデータを明かすように迫った。データを分析して4カ国の知恵を出し合えば不可能ではないとアクーノ王国をそそのかした。
一方で同盟国側もこれらの国に放っておいた間諜からおかしな動きをしていると報告が入って、戦争前に打ち合わせて置いた暗号でトオルに報告されていた。トオルからは暗号でヤピン王国に信頼できる国のみに秘密のチャンネルで転送バッグでの手紙のやり取りとか物資の転送をするようにと伝えた。
あの4カ国は秘密のチャンネルが有る事さえ知らない。
トオルは転送バッグに仕込んでおいた機能で4カ国の連絡を盗み見ることにした。この際地球でのモラルは無視する。
下手すると自分の命に係わることなのだ。トオルは聖人君子じゃ無い。やられる前にやるつもりだ。
其の後は何事もなく目的地のエストリア王国に着いた。
「ようこそよくおいでくださいました。早速ですが相談させて頂きたいのはこのワインですが、まず飲んでご意見をお聞かせください」
そのワインは見た目も匂いも別段おかしいことは無かったが、何か味が変だ、はっきり言って不味い。
『何だこれは⁉変なブドウを使ってないか⁉」
バッカスさんは容赦ない。
「やっぱりそうですよね。実は2年前から、栽培しているブドウの味が苦くなってしまったのですよ。思い切って隣の領から成木を買って移植してみたんですが、結果は同じでした。結局、ブドウ畑の土が変質してしまったとしか思えません」
「思い当たる原因は無いですか?」
「はい、まったく。土地が呪われてしまったとしか思えません」
呪いが信じられている世界なのだ。
「畑に案内して頂けませんか?」
「はい、どうぞ、こちらです」
ブドウ畑に案内されると見事な房を付けたぶどうの木がズラッと遠くまで並んでいた。手入れは良く行き届いているようだ。試しに1粒食べてみると
「ウワッ苦い‼」
思わず吐き出してしまった。トオルは早速鑑定する。
【過大な魔力を含有する土壌で栽培されたブドウ】と出た。
次は土壌を調べる。
【多量の魔力を有する地下水の影響で土壌にも膨大な魔力を蓄積
している、ブドウ栽培には味を変質させるので不向き】
そのことを担当者のセルフさんに伝えると、
「この辺の地下水はあそこのコンロン山の伏流水で、ずうっと下の水無川の中流域から湧き出して来るんだそうです。そう言えば
その川の魚も不味くなって困っていると聞いたことが有ります」
と判ったのでその山に行ってみることにした。
今回もハッコを召喚してコンロン山に飛ぶ。山裾をゆっくり巡っていると水が途中で消えてしまう所を発見した。水があそこから地下に潜ってしまうのだろう。そこに降りて水を鑑定するとやはり大量の魔力を含んでいる。
大量の魔力を含む原因を突き止めるために上流へ飛ぶ。
崖が崩れているところが有った。上流から流れてきた水がそこで堰き止められて土砂から滲み出てきて再び川の流れをつくっている。
何故か黒光りする石や岩が水中に見える。
それが気になって近付いてみると、大量の魔力を感じる。
これが原因のようだ。トオルがあの黒光りする岩を調べてみたいと言うと、バッカスさんとセルフさんは顔を青くして汗を流している。魔力にあてられているようだ。いわゆる魔力酔いの症状だ。
トオルは2人に治癒魔法を掛けてハッコにもっと上空で待機するように言った。2人を乗せて上昇していった。魔力の影響を受けない所まで上昇してそこで静止した。
トオルは加護のおかげで正常のままだ。崖に残っている黒光りする石を手に取って鑑定する。
【魔力を蓄積出来る魔鉱石。自然の魔石。太古から魔力を蓄積したために過飽和状態。川水に放出している】と出た。
このままでは危険なので魔鉱石をマジックボックスに収納した。100トン収納した時点で収納を止めた。地層のずっと奥まで鉱脈が続いていたからだ。
なので、鉱脈を覆う結界を張って魔力が大気や土壌や川水に流れ出さないようにした。
この魔鉱石は魔力量を害の無い量まで浄化すれば、魔道具制作に役立つ。この山は文字通り宝の山になったのである。
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