第46話 トオル襲撃される
今回向っているのは元マルテウス王国の西に位置するエストロア王国で、ヤピン王国の紹介で、その国で造っているワインについて相談したいことがあると言うことだった、ヤピン王国には色々お世話になってるので行ってみることにしたのだ。
正直言ってワインの事は殆ど知らない。そこでトジノのお父さんのバッカスさんにも同行して貰っている。
バッカスさんはワイン造りの名人だと聞いていたから適切な意見を言って貰えるだろう。
エストロア王国に行くにはアクーノ王国の境界近くの街道を通らなくては行けない。空を飛んで行けば早いけれど、バッカスさんがヤピン王国から出たことがないので、のんびりと馬車で行きたいと言われた。俺も義父であるバッカスさんともゆっくり話がしたいと思っていたので元気そうな馬と少しでも乗り心地の良さそうな馬車を購入した。御者はそこで紹介された経験豊富だという触れ込みのおじさんを、往復する分の期間雇って出発した。
「んーん、この辺はヤピン王国とさほど変わらぬ景色じゃのう」
「ええ、そんなに離れた土地でも無いですからね」
「なんか道がドンドン狭くなっているようだが」
「そうですね。御者さんに確認しましょう」
「ねえ、道が細くなっているようだけど大丈夫?」
「へえ、予定通りの脇道に入ってますんでね」
御者は笑い声を含んだ声で答えた。
(ほう、こいつ俺達を罠に嵌めようとしているな。いいだろう。どんな敵なのか見極めてやろうじゃないか)
俺はバッカスさんに小声で伝える。
「これから俺達何者かに襲われかもしれません。防御結界を張っておきますから、安心して馬車に乗っていて下さい」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫です、いざとなれば4大守護神獣達がすっ飛んで来ますよ、あの子らが見当たらないってことは、敵は大したこと無い証拠です」
「そ、そうか。ま、婿殿の活躍を見せて貰おう」
と言って、俺がプレゼントした日本産のワインを味わいだした。
肝が据わっているのか?怖さを紛らす為なのか?
ただ単に飲兵衛だけだったりして。
「ふむ、これは俺の知っているブドウの味じゃ無いな」
流石は名人、使っているブドウの違いが判るらしい。
「へい。着きやしたぜ」
窓から見るとだだっぴろい平原だった。
周囲の敵を探索すると四方を囲まれている。
俺は馬車から飛び出して、敵の剣や弓、槍、魔法の杖に立続けに1ミリ指弾を放った。敵の武器が壊れていく。人には当てない。
もし頭にでも当たったらスイカ割のスイカ状態になってしまう。
ちょっとグロいのは勘弁だ。手に持っていた武器がことごとく壊れてしまって、敵のアクーノ王国軍兵士と鑑定された男共は慌てふためいている。
御者はあっという間に逃げ出していた。雇った時点で怪しい男だと知ってはいたが、守護神獣達が騒がないのでたいしたことが無かろうと面白半分に雇ってみたのだ。
敵兵士の中で1番偉そうな男を捕まえて尋問しようとしたところへ後方から矢が飛んできた。防御結界で弾くと矢は逸れてあらぬ方へ飛んで行った。
矢を放った相手を探すとそいつは次々と矢を放ち、別な男が魔法撃ってをきたが、すべて敵兵に当たっていた。
(なんだこれは、敵かと思ったら俺を助けようとしてくれたのか?)
だがそれまでは気配を感じなかった。まるで隠蔽魔法で姿を消していたみたいだ。すると後方の岩陰から8人くらい冒険者風の男たちが飛び出してきた。見た感じ日本人みたいな顔立ちだ。髪の毛は赤かったり金髪だったりするが、染めているようだ。あるいは鬘を被っているような不自然な感じがする。その男たちは少しは腕が立ちそうで、次々と敵兵を倒していく。すると先ほど尋問しようとした敵兵士が、するりと俺の手から抜け出して号令をかけた。
「作戦は失敗だ。全員撤退せよ!」
あっという間に兵士は逃げ去ってしまった。
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