第44話 戦後のマルテウス王国軍兵士

敗残兵の者達は武器を没収されて帰路に就いた。帰り道で一般人を襲ったり盗賊化しないようにだ。先ず鑑定人に鑑定されて盗賊や盗っ人になりそうな者は牢に収監され、余罪を厳しく追及されたのちに奴隷などの重労働が課される事になる。まともな職につけずに軍隊に入隊する者が多いのだ。そんなやつらの方が躊躇ためらい無く人を殺せるものが多いから人を殺すのが仕事の軍隊は性に合っている。なので多少の犯罪には目をつぶって採用される。


一方で、税を払えずに徴兵された農民とかも多い。そんな兵士には家へ帰ることが許された。1人当たり10日分の水と乾パン、干し肉が配給された。その配給食料を横取りする者も居るだろうがそこは自己防衛で凌いで欲しい。戦勝国がそこまで面倒見られないってことだった。



武器を没収されていたことが運が良かったと思うことになる。

マルテルス王国は既に同盟軍に統治されていて、敗残兵の取り調べが厳しく行なわれていた。武器を持っている者は皆拘束されていたのだ。



勇者召喚された者たちの処分は無理矢理異世界から召喚されて戦争に参加させられたという情状酌量の余地は有るものの普段から戦争で手柄を上げると息巻いていた連中はみんな牢に入れられ洗脳を解除させられることになった。


そうでない者は冒険者として魔物退治で生きて行けるように同盟国の冒険者ギルドに配分されて、冒険者教育を受ける事になった。


あの【戦場の聖女】の女性はヤピン王国の神殿で治癒魔法を行うことが義務付けられて神殿に預けられた。


この件についてはどうやらシュの思惑が影響しているみたいだった。何でも彼女の治癒魔法の魔力がミレーナ女神の魔力に良く似ているみたいでおろそかにしてはいけないと感じていたらしい。

この事に関しては大神官も同様に感じていたらしく一も二も無く賛意を示した。同盟国の代表国であるヤピン王国の思いのままにしてくれと全同盟国の賛成を得られたようだ。

なぜ、シュの思惑が大事にされたのかはマルテウス王国軍を破った時、シュの隠蔽能力で身を隠して待ち伏せ出来ていたので戦いに勝てたかららしい。


ところで、同盟軍に統治された元マルテウス王国は戦勝国によって国が細かく分割されて10カ国に分配された侵略されて国土の1部を失っていた国は出来るだけ元の国の大きさを取り戻したいようだったが、それだと不公平になると異議が出て大体同じ面積の土地を分配されることになったようだ。トオルはそれを他人事のように聞いていた。確かに他人事なんだけれど。

元々、トオルに国を支配したいと言う欲望は無い。親しい仲間と平和にスローライフを送りたいだけなのだ。


だが好むと好まざるとにかかわらずトオルも政争の渦に巻き込まれることになる。

マルテウス王国の領土でありながら今回の戦争に参加しなかったカンセコ領とアキレス領、そしてアテルイ村をどうするかで同盟国同士で揉めだした。これらの領や村は最近何かと景気が良いらしい。新種の小麦やジャガイモ、日本酒と言う美味い酒。これらの領や村を手にいれたなら大儲けできるのではと欲深い国共の餌にされそうになっているらしい。


ヤピン王国とキツナエ王国、サウスパーク王国はその地はミレーナ女神様の管轄する聖域であるから下手に手を出さないほうが良いと激しく抗議した。これら3国はトオルのお陰で利を得ている国々だ。それともう1カ国、元マルテウス王国の北西にある小さな島国のエルソル王国も3カ国に同意した。この国は海を渡ってバジリス王国と国交を結んでいる。オーガの国の事も知っている。当然トオルと4神獣の事も知っていた。もしもそのトオルという青年に(この時トオルは19歳、ドワーフの血の影響で見た目が髭もじゃのドワーフになっていた)何かあれば、4神獣とバジリス王国と、遠く海の向こうのオーガ王国が加勢に来ると聞かされていたのだ。

どう考えても同盟国7ヵ国では万が一にも勝ち目がない。

「我が国もミレーナ女神様の聖域には手を出さない。もしも戦闘状態になったらヤピン王国側と共闘すると宣言した。


果たして宝の山を目の前にして欲に眼がくらんだ連中が、大人しくしていられるだろうか?

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