第41話 ワ村村長の裏切り
国王にトオルの捕縛を命じられた王国軍司令官のガジランは重要なことを思い出した。
モスタの森は何百年か前にミレーナ女神の管理する地であり、そこに攻め込んだ王国軍がコテンパンにやられた。その時にミレーナ女神と不可侵条約を結んだいわく付きのの厄介な地であったはずだと。
そのことを国王に進言すると、
「そんなの頭を使え。カンセコ領か、アキレス領か、アテルイ村にトオルなる者を面白く思っていない者が1人や2人はいるはずだ!そんな奴を探し出してトオルに騙されたとか身内が殺されたとか言って王国にトオル捕縛の願いを出させれば良い事だ。直ぐに探し出せ」
「はっ、仰せのままに」
そこで目を付けられたのがワ村と言う村の村長だった。
間諜(スパイ)の話だと今、巷に出回っているミソショーユと言う調味料はそのワ村に自生していた黒瓢箪と、シットパンプキン(糞カボチャ)と言う植物の実だったという。何の役にも立たない雑草だと思っていたところにトオルと言う少年がやってきてそれらを売って欲しいと言う。村出身のカンセコ領主の料理長をしている娘が着いて来てそれらの実から取り出した物で今迄食べたことの無い美味しさの料理を食べさせてくれた。
領主様の話では「これらは絶対に売れるものだから生産に励むように」との事だった。
そんなに大事な物ならば出来るだけ高く売りつけようと思った村長は村民が3年掛かってやっと食べきれる量のワイバーンの肉をただでくれたので、役立たずの実を売ってやったという。
間諜はこれは使えると思った。
ワイバーンの肉を見せられて「お前もこうなりたいか」と脅かされ、それらの実を強奪されたってことにしよう。
どうせその肉も死んだワイバーンを運良く見つけて、自分が倒したと言い張っているのだろう。13~14歳のガキが1人でワイバーンを倒せるはずが無い。ハッタリに決まってる。
ワ村の村長チピーラはその話にのってきた。
調べてみるとチピーラは村民の為に置いていったワイバーンの肉を横流しして私腹を肥やしていたようだ。家を新築したり高価な酒を買いあさっていたようだった。
ところが最近更に美味しい調味料が出回って,ミソ、ショーユの実がサッパリ売れなくなっていたらしい。それでもカンセコ領には新しい小麦とジャガイモという野菜が栽培されて飛ぶように売れていると言うではないか!それにあのトオルが絡んでいるらしい。だが文句を言える立場ではない。あの時にトオルに言われていたのだ。
「最初は売れると思うけどその内、売れなくなるかも知れないので、利益を使って次の売れる作物を探したり村特産の何かを創り出す資金にした方が良いですよ」と。
でもチピーラ村長はそんなことは聞かなかったことにして、村人の賃金までピンハネして自分の懐に入れていたらしい。
息子に何度も注意されていたが聞く耳持たず散財を繰り返していた。そのうち息子に愛想をつかされて、息子は村を出て行った。村人の7割が着いて出て行ったらしい。
残ったのはチピーラの下でうまい汁を吸っていた連中とチピーラをそそのかしていた連中と、出て行きたくとも行けない体の弱い年寄りとか病人達だった。
チピーラは逆切れしてトオルを恨んだ。こうなったのもあいつがこの村に来たからだ。皆彼奴が悪い!復讐してやりたいと思っていたところに王国の間諜の話が舞い込んで来た。しかも言うとおりにしたら金をくれると言う。渡りに船だった。
チピーラは間諜の指示のもと国王に訴状を書いた。
「わたくしの村の村特産の黒瓢箪と、シットパンプキン(糞カボチャ)を強奪して、他の地で栽培してミソ、ショーユとして売り出して暴利をむさぼるアテルイ村モスタの森に住むトオルなるものを逮捕して厳罰に処して下さい」
よしこれで女神ミレーナのモスタの森に襲撃できる口実が出来たな、とほくそ笑んで国王は王国軍に進撃の命令を下した。
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9月30日追加で書いた文章があります。
ワイバーンの肉を見せられて「お前もこうなりたいか」と脅かされ、からの5行です。
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