第40話 マルテウス王国の陰謀

 その頃トオルらを召喚したマルテウス王国では御前会議が開かれていた。

「どうじゃ、勇者召喚した異世界の小童こわっぱ共の訓練状況は?いっぱしの人間強力兵器に成長しているか?」

「はっ、先日ドラゴンダンジョンで1階層の階層ボスのグリーンドラゴンを1パーテイで討伐出来たところです」

「来年までに隣国のヤピン王国を侵略攻略出来るまでに育成せよ!いつまでも奴らに只飯を食わせて置く余裕は無い、特訓せよ!」

「御意!」


 「それと最近変わったことは無いか?」

「はっ、カンセコ領から新種の小麦とジャガイモと言う芋が入って来ており、すこぶる品質が優良なるが為に王都近郊の農作物が売れなくなっております」

「そんなものは種とイモを王都で植えれば済む話だろうが!それで駄目ならカンセコ領から植える前の種とイモを盗み出せ」

「は、はあ、直ちに」

「無能者め、それくらい子供でも分かろうが!ゴブリン以下の頭しか持っておらんのか!愚か者め」


(ヘッ、そんなことは既にやっているっちゅうの、上手く育たないんだから仕方ないだろうが。自分はこんな所でぬくぬくとしやがって、てめえでやってみやがれ!)

と心で反発するが口に出して言えないのが辛い所だ。

(しかしカンセコ領の料理は美味かったなあ。又国王に難癖付けられたらあそこに移住してのんびり暮らそう)

と思う農業大臣であった。


 その日以来勇者候補たちへの特訓は熾烈を極めた。

翌年には隣国へ侵略出来そうなくらいには強くなっていた。


 一方小麦とジャガイモの育成はサッパリ進んでいない。芽を出したと思ったら翌日には枯れていた。

 各国に放っている間者達から次々と国王の元に報告が上がってくる。ヤピン王国と、バジリス王国で清酒という今まで飲んだこともない透明な酒が造られていて世界各国に輸出されて外貨を稼いでいると。

5年前から出回りだしたショウユとミソと言う変わった調味料よりも1段と美味くなったものが出回り始めていて今迄のミソ、ショウユが売れなくなっていると言う。

そのどちらの情報にもトオルと言う名前が出てくる。国王はトオルと言う名前に微かに聞き覚えが有る気がしたが、思い出せない。

それも仕方がないことだろう。役にも立たない加護持ちをサッサとモスタの森へ転送したのだから、その男がどんな風体だったのか?どんな名前だったのか?すぐに忘れてしまったのだから。


 そして国王の元に味噌醬油を使った料理と日本酒が運ばれてきた。勿論裏で毒見がされていて。王の目前で毒見がされた。

幸い、その料理が冷めても美味しい料理だったので国王は目を見張っていた。そこに添えられたパンは柔らかくふわふわで、甘味さえあった。

醬油を使ったジャガバタ醬油のイモは新種の日本のジャガイモだった。これらはカンセコ領で入手してカンセコ領で8億デルで買ったマジックバッグにいれてきたものだった。

国王がその料理と酒を堪能した後に運ばれてきたものはかたくて不味いいつものパンとさっき食べたばかりのジャガバタ醬油に似てはいたが、似ても似つかぬやせ細ったイモだった。そう、この国の野生種のイモである。国王に現実を知って欲しくて農業大臣

が用意させたものである。


 この話を聞いた国王に農業大臣は言った。

「国王陛下、これが現実です。カンセコ領から盗んで来た小麦もジャガイモも植えて芽が出た翌日に枯れてしまうのです。間諜の調べた結果どうもトオルと言う少年が関わっているようなのです。

国王様から【モスタの森】に転送されて開拓しているようなのです。何か心当たりはございませんか?」

「うーむ、ああ、そういえば勇者召喚の時に【自給自足】とかいう使えぬ加護を持っている男をその森に追放したことが有ったな」

 「国王様、ひょっとしたら大変な逸材を逃してしまったのかも知れませんなあ」

「むぐぐ、あの時はその様な凄い加護だとは思いもよらなかったしのう……ならば軍を率いてそやつをひっくくってこい!殺さぬ程度に痛めつけても構わぬ」

 命を受けて王国軍の100人部隊が翌日モスタの森目指して出発した。


 ミレーナ女神様の加護を受けた女神様のお気に入りのトオルを奴隷にしようとする国王の運命やいかに?笑いをこらえて待たれよ次回!



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