第39話 それから5年

 アテルイ村に日本酒の酒蔵、味噌醬油の醸造所、およびそれらの関連会社を作り始めて5年経った。計画は順調に達成されている。その上、この世界の主食であるパンの原材料の小麦も日本から種子を召喚。更にジャガイモも日本の品種を召喚(購入)して アテルイ村で大規模に栽培をしている。モスタの森も大規模開拓している。今では当初の10倍以上の農地が広がっていてアテルイ村の60%の人間が俺の事業で就労している。

日本産の作物はこの世界の原種の小麦、ジャガイモの何倍も品質が良く、病気に強く味が良い。それらの作物は売れに売れてカンセコ領と、アキレス領にも種子、種イモを分配して各領の経済を潤している。もっとも、種子やイモが手に入れば他の土地でも一気に栽培を始めるだろう。そこで俺はそれらの栽培方法に罠を仕掛けて置いた。

俺が認めた国や領地以外では立ち枯れてしまう性質を魔法付与しておいたのだ。各地によって空気に含まれる魔力が違う。その違いを巧みに利用しているのだ。

 因みにマルテウス王国の他の領地、王都では絶対に育たないのだ。カンセコ領内のワ村にも許可していない。その理由は今の村長が信頼出来ない人間だと、鑑定で疑問視されていたので様子を見ているところだ。息子のステーブルさんなら信頼出来そうだが今の村長が居る間は栽培を許可しない。この処置が正しかったと知るのはまだ先の話だ。

 この新しい作物の登場でこの世界の俺と仲の良い国々に飢饉が訪れることが無くなった。ヤピン王国にもバジリス王国にもオーガ王国にも栽培を許可している。

 今考えているの日本のふんわり食感のパンの登場だ。この世界の堅いパンの事を考えるとふんわり食パンが出来たら飛ぶように売れる事だろう。


 ということで現在俺は信頼できるパン屋さんを探している。日本のイースト菌を使ったパンを試作して貰っている最中だ。恥ずかしい話だがイースト菌にも色んな種類がある事を知らなかった。


 トジノに相談したら

「【インスタントドライイースト】が使いやすいんじゃないかなあ」

と言われた。

 その【インスタントドライイースト】にも赤、青、金、の種類が有ってフランスパンに合うもの、菓子パンに合うもの、食パンに合うものに分かれているらしい。

召喚した容器にこちらの世界の言語に翻訳された注意書きが書いてあったので、どう使うかは本職のパン屋さんにおまかせすることにした。長年の経験と勘で何とかしてくれるだろう。


 日本の物をこうホイホイと異世界に持ち込んでも良いのだろうかと悩んだことも有ったが、ミレーナ女神様から頂いたチートなんだから構わないだろうと思って、有り難く利用させて貰う事にする。駄目なことを神様がくれるわけがないものね。

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