第38話 本格的事業化
俺とトジノは酒蔵を本格的に立ち上げることにした。
村の使えないと思われている土地を買って醸造所を作ることにした。設計はトジノに一任した。出来た設計図を基にして建物を建て、中の部屋や設備はトジノの指示に従った。至る所に温度計を設置して温度の設定に気を配った。壁の中にも断熱材を充填して置いた。
現代日本の電子温度計も召喚出来た。蒸した米の温度を測って麴菌の活発になる温度で作業出来るのだそうだ。文明の機器を利用できる。これこそチートと言う奴だ。
火入れの際は火属性の魔石を使って行うようにする。これによって安定した温度を維持できる。これに水属性魔石を使って湿度を維持できる魔道具も作っておいた。
科学と魔法のハイブリットである。
力に自信のない人間と、暑さ寒さに弱い人間でも働けるように魔道具を作って職人見習いを募集したところ10人の募集に対して30人の応募があった。せっかくなのでどぶろくづくりの経験者で知識のテストを行い、実技試験の合格者を雇うことにした。
本当にこれでいいのか分からないがやってみないともっと分からない。月々決まった額の賃金が貰えるとあって人気な職場になっていった。首にならないように一生懸命に仕事に励んでくれた。首に成ったら後釜を狙う人が沢山いるからだ。
もしも仕事を覚えたら独立して酒蔵を作っても良し、杜氏として酒蔵を回って新しい酒を造っても良い。そんな未来を語って聞かせるトジノ。その為にはまず一流の杜氏にならないといけないことを説くのだった。
酒蔵を始めて1年。醸造所内は温度を自由に設定できるので何時でも仕込みが出来る。出来上がった酒を保管する蔵と、熟成する為の蔵も作って、売れ行きは上々である。最初はオーガ王国がお得意様だったが今では国内国外にも積極的にセールスして、製造が間に合わなくなってきた。
なので、アテルイ村とヤピン王国にも酒蔵を作ることにした。
1人前になった職人に杜氏の免許を発行して杜氏の仕事に誇りを持って貰い、より良い酒を作り出すライバルにさせる。
このやり方に地球の日本人の中には文句がある人が居るかも知れないがあくまでここは異世界だ。俺達の好きなようにさせて貰う。失敗したら次に生かせば良いではないか。
これだけ酒が売れると国の専売にしようとする動きが出て来そうだ。或いは税金を吹っかけて来るだろう。気を付けないといけないな。
今では米生産農家の生活も俺達が支えていると言っても過言ではない。
アテルイ村には酒蔵の他にも大豆を栽培して大豆から作る味噌、醬油醸造所も作ることにした。味噌醬油は今では世間に大分行き渡って舌が肥えてきた。より美味しい本物の味噌醬油を世に出していきたいと思っている。これにはトジノも賛成している。元日本人としては本物の味を知っているからこその我が儘なのだ。
新しく作る酒蔵の施設には使い慣れたものが良いだろうと今まで働いていた酒蔵の施設も器具も、同じものの新品を渡した。使いずらくなったら改良改善して行ってくれ。米麴菌は未だに現地生産出来ていないので、俺が召喚した物を買って貰う。
独立採算制ではあるが。米麴菌の配布には制限を設けたいので
新しく酒蔵をつくりたいときにはフランチャイズ契約して貰う頃にしてある。
浜村の酒蔵はプリッチーさんに責任者になって貰った。彼女の酒に対する情熱と杜氏としての腕はピカ一だ。
此処で作る酒の名前を【ハマノホマレ】と名付けた。ヤピン王国の酒蔵で造った酒は【コメノシズク】にした。この世界のお米の発祥の地である事を記念したいからだ。アテルイ村で造った酒は何という名前にするかは、トジノに一任してある。きっと良い名称を考えてくれるだろう。
アテルイ村に帰って来た。魔物の森の畑を10倍に広げてブラウングレインの種籾を播いていく。ここの土がいいのか、俺のマジックボックスで作られる肥料がいいのか、魔法水で育てるのが良いのかそのすべてが良かったのか病気にもならず、ヤピン王国で育っている時よりも3倍は収穫量も多いし味も格段に美味しくなった。稲刈りの時は日本の機械を召喚して機械化を図ろう。
村の自宅の周囲の土地は大豆畑にした。1回目の収穫は時間を早めて1週間で収穫した。畑の傍に味噌醬油の醸造所を作った。
ここでは20人の職員を雇った。
最初は畑で収穫できる味噌醬油を、何で手間暇かけて作ろうとするのか疑問を持たれたが、トジノが試作した物の味見をすると
「こりゃ別もんだ!豆から作るとこんなにおいしくなるのか!と驚かれ、工場が出来たら是非雇って欲しいと沢山の人達からお願いされた。
遊びのつもりで藁つと納豆を作ったら思いがけず好評で、追加で納豆工場も作ることになった。米農家も募集して稲刈りから脱穀までを農家に依頼して、籾すりから精米までを請け負う工場を作って米の保管までをしてもらうことにした。食料用と米味噌用と、煎餅などの加工用に選別して、保管して置いて、注文受付出荷までを仕事にする会社も作った。ここで各農家のお米の品質をバラツキの無いようにする責任を負って貰う。農協みたいなものになるだろう。農業機械の貸し出しも行う。
こうしてアテルイ村開発計画がスタートしたのであった。
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