第33話 結界を張る

 翌日トジノが仕込んでおいたどぶろくの元に時間を進める魔法を掛けた。1日を1分に縮めて1日分に1回かき混ぜて、10日分進めたら立派などぶろくになった。うん美味そうな匂いがする。

早速これを持ってオーガの居るダンジョンに行って実験してみる。バジリス王国にもそんなダンジョンが存在した。【オニガシマ・ダンジョン】である。そこへも飛んで行く。今日は昨日より成長著しいブルンに乗って行くことにした。俺とトジノと、小さくなった3神獣が長ーい龍の身体のどこに乗っても安定していて落っこちる不安感が無い。

500kmの距離を30分飛んで着いた。


 そのダンジョンでは5階層にオーガが居るそうだ。4階層まではブルン達の訓練に利用することにする。訓練にもならない強さでサクサク進みあっという間に5階層に着いた。


 広場に止まってどぶろくを皿に注いで置いておくと続々オーガが集まってきた。やっぱりオーガは、どぶろくの匂いが好きなようだ。ついでだから飲ませて見る。どぶろくがたっぷり入った甕を連中の前に転送すると、連中は不思議とも思わずに、ドガッと座り込んで酒盛りを始めた。1匹当たり5合飲んだだけで泥酔してしまった。俺たちが目の前に居ても気にすることなく大騒ぎしながら酒盛りは続き。いびきをかいて寝込んでしまった。アルコール度数は、せいぜい5~6パーセントだと思うんだけど、オーガって酒に弱いくせに酒好きなんだなあ。

 オーガ討伐の新しい方法を発見した瞬間である。寝込んでしまったオーガをどんどん討伐していく。オーガの肉は硬くて臭くて食べられたもんじゃないと言ってギルドでも安く買い叩かれる。農業の肥料に加工されるらしい。俺も肥料用に保管しておく事にした。

 それでも魔石はオークよりも高く買って貰える。オークよりも強い魔物だから当然である。

それにつけてもオーガの国のオーガにはウォータードラゴンをテイムできるほど強い賢い個体が居たことが驚きである。単なる群れじゃなく国を作れるほどの能力を有していることは侮れない。【どぶろく作戦】が何処まで効果を発揮できるのか不安要素でもある。それだけに頼らない作戦を考えて置こう。


 一旦沿岸の集落に戻ってどぶろく作りの事を訊いていく。どぶろくは昔々ヤピン王国の冒険者が船でこの地を訪れた時、船に種籾と玄米を積んでいて玄米をガラス瓶に入れて木の棒でつついて精白して炊いて食べていたらしい。嵐で船に穴が開きもう沖に出れなくなったので食料を得るために種籾を畑に播いて育てていたらしい。何時しか時は流れ、たまたま米ぬかに水が混じってカビみたいなものが発生していた、それに炊いた米を一緒にして置いたら酒っぽい匂いがしてそれに水を加えて放置して置いたら白く濁った酒が出来ていたとの言い伝えが有って、糠に生えたカビを麴菌だと閃いた村人が蒸した白米にカビを発生させる技術を覚えてこの村に広めたらしい。それがこの村でどぶろくを作るようになった原因だと言う言い伝えが有った。

 言い伝えには伝えきれない苦労や技術が隠れている筈だが、先人達は試行錯誤をしながら技術を伝承してきたのだろう。

この村の各家庭によって独自のどぶろくを作っている。中にはどぶろくと言うより濁り酒と言っても良い品質のものを作れる家庭も有ったのだ。もろみを濾す技術を独自に開発していたのだ。凄いと思った。

 酒粕で甘酒を作って子供たちにも飲ませているという。


 さて結界を作ろう。結界の範囲だがどぶろくの匂いでオーガを引き寄せるポイントを作ってそこに集中的におびき寄せる。そこを中心に左右約1㎞の幕みたいな反射付き防御結界を張る。問題はおびき寄せた敵を殲滅させる罠を仕掛けることだ。逃げられないように罠への入り口は、入って来るのは拒まず出ようとするものは絶対に出れない半導体ならぬ半導入結界にしておく。これは敵意を持つ者にだけ有効だ。村人の船は自由に出入り出来る。

 ある程度敵が溜まったらブルンの【ドラゴン・ウインドカッター】が発動して敵を切り刻む。死体はマジックバッグに自動的に収納する。

生き残った者にはハッコの【タイガーサンダー】が襲いそれでも生き残りが居たらシュの【朱雀炎】で焼き尽くす。

 それでもまだ生き残った強者がいたらヒメの【広範囲凍結ワイドフローズン】が発動するようになっている。何ともえげつない非情な罠が待っている。

 それで全滅させられるとは思うがそれでも駄目な場合は俺の隠し技が発動するように魔石に記録して残しておいた。恐らくだがこれで50年以上は罠が有効な筈だ。

 俺たちがここを去っても半世紀以上守ってくれるはずだが、結界が敵の気配を感じた瞬間俺に報告が届くようにしておいた。次からは瞬間転移出来るのでそれまでは酒蔵建設、稼働、販売開始出来るように頑張ろうと思う。

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