第31話 バジリス王国王都に飛ぶ

 俺達は4神獣に分乗して王都に飛んだ。また、敵が現れた場合に備えて見張り番に転送バッグを渡しておいた。敵影を見たら連絡するように使い方を書いた紙を付けておいた。


 さて、俺はジュウベエさんとシュに乗っている。まだ魔力が少ないブルンは、俺の首に軽く巻き付いて俺の魔力を補充している。

 トジノは、ハッコに乗っている。ヒメは小さくなってトジノの懐に入っている。まあ、女の子同士だからセクハラじゃないよね。水龍の水砲を腹に喰らったのがまずかったらしくて、トジノの魔力がまるでお母さんに抱かれている様な心地良さを感じていて痛みを癒している状態なのだ。


上空から見るこの国の建物の屋根は瓦や、杉の皮ぶきや、だかだかの植物ぶきが入り混じっていてまるで昔の日本のようだ。もっとも俺が生きていた頃は瓦、トタン屋根、コンクリートの平屋根だったはずだ。瓦屋根は田舎に行かないと滅多に見られないようになっていたが……。


行く手に上が霞んで見える山脈が見えて来た。

「標高5000m級の山々が連なるオイラキ山脈です。山脈の向こう側がマルテウス王国です。この山脈のおかげであの国からの侵略を防げています」

「マルテウス王国って侵略して来るようなやばい国なんですか?」

「ええ、元来あの国は侵略に次ぐ侵略で大きくなってきた国ですからねえ」

「ところで魔王の噂を耳にしていませんか?」

マルテウス王国が勇者召喚した理由に疑いを持った俺は訊いてみた。またどこかの国を侵略しようとしているのではないのか?


「魔王だなんていつの時代の話ですか?そんなのは1万年も前のおとぎ話ですよ」

やっぱりそうか、あの国王、噓ついて、あの高校生達を侵略の兵器代わりにするつもりだな!だが強力な力を手に入れたなら王国の企みにホイホイ乗って戦争したがる馬鹿ばかりだとは思えないし、力尽くでもあの国を脱出する者も居るだろう。俺はその時になってから考えよう。決まっているのは俺は俺の大事な物を守るために動くってことだ。


「ところで、あの水龍を操って攻め込んで来たオーガ達は何なんですか?どこかの国の兵士達ですか?」

「あの大海原の東の果てにオーガの国が有るらしいです。7年前にも襲われた時が有ってその時も青龍様が守って下さったのですが、その時に捕虜から聞いたらしいです。詳しいことは国王様がご存知だと思います」

これは是非聞かなければいけないな。


「何だ何だ⁉あの朱色のでかい鳥は?」

「その後ろに飛んでるとんんでもなくでかい縞模様の猫は!」

「ばっきゃろーありゃあ猫じゃねえ、虎だ!それもただの虎じゃねえ、

西の守護神獣の白虎様だ。てことはあの大きな鳥は南の守護神獣の朱雀様ってことか?」

「じゃなんで、そんな大層てえそうな神獣様が2体もいやこの場合、2柱って言った方がいいのかな?なんてこと言ってるうちにお城の方に飛んで行っちゃったぞ。何か有るのか?吉兆だったらいいけどな」

目撃者の者達の心配はもっともだった。この国は昔から4神獣を実在のものだと信じている。更に7年前に水を吐く竜に乗ってこの国に攻めて来た大きな鬼どもを青龍様が追い払ってくれた事が有ったのだ、最早おとぎ話でも夢物語でもない現実的な心配事なのだ。


お城の前の広場には目撃者の報告によって大勢の兵士や王様を始めとする重役達が空を見上げていた。


「拙者東の沿岸守備隊隊長、ジュウベエ・トリイと申します。この度鬼どもから沿岸の集落を救って下さったトオル殿とそのお仲間の4神獣様をお連れ致しました。広場をお空け下さい。これより地上に降りまする」

俺の作った拡声器の魔道具で伝えるとお偉方の指示で広場が空いた。

俺はジュウベエさんと一緒に地上へ転移し、次いでトジノを転移させて下した。ハッコとシュにも小さくなってから降りさせた。

密集した所には降りない方がいい。不慮の事故が起きないとも限らないからだ。


「これはこれは我が国の大恩人のトオル様と奥方様、4神獣の皆様ようこそおいで下さいました。バジリス王国国王のノブヤスと申します他の者の紹介は後程致します。まずは城内にご案内致します。こちらにお越しください」

随分謙虚な国王様だ。鑑定しても用心しなければいけない人物では無さそうだ。

俺達は後に続く俺の頭や肩にシュとブルンが乗ってトジノの肩にはハッコとヒメが乗っている。一応神獣達は俺達を護衛しているようだ。

会談の場所は畳座敷では無く椅子の間だったので、正座が苦手な俺はホッとしている。

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