第30話  再出発

 王都の商業ギルドへの売り込みを終えて俺とトジノと3神獣は今、海の上を飛んでいる。アテルイ村に帰る為に北上しているわけだがあわよくば東の守護神獣の青龍に合えるかもしれない、という思惑も有った。


 驚いたことにハッコもシュも空を飛べるようになっていた。飛ぶときは大型化する。

 俺と一緒にいる間に俺の膨大な量の魔力を吸収して成体と同等の力を得たのだと口を揃えて言った。俺自身は自分の魔力量が膨大だとは思っていない。確かにどんなに魔法を使い続けても魔力切れしたことは無いのだが。考えてみればマジックバッグを錬金術で製造する時には常人の何倍もの魔力を使っていたはずなのだ。

 逆に俺とトジノも3神獣から飛行能力を分け与えて貰っている。

持ちつ持たれつの良い関係になっている。

「確かこの辺からバジリス王国になると思うわ」

トジノが教えてくれた。

「空から見降ろしたことなんか無かったから確実とは言えないけれど、でもあの山、あの独特な形の山は間違いないと思うの」

それはまごうかたなき富士山の美しい形だ。

この国は文化も気質も日本と同じようなのだろうか?

興味が湧いて降りて見たくなった。


 俺達は徐々に高度を下げて行った。すると砂浜に武装した人々が集まって沖の方を見て何やら騒いでいる。

見ると沖の方から2頭のドラゴンみたいな魔物が背中に大きな箱を乗せて白波を蹴立てて砂浜目掛けて進んでくる。その箱は上部が開いていてそこにオーガらしき魔物が複数乗っている。

「ウオータードラゴンよ。オーガにテイムされてるみたい」

ヒメが言った。オーガの中にひときわ大きい個体が居る。そいつがウオータードラゴンを操っているのだろうか?

と、1頭が大きく口を開けて水を噴射した。砂浜の兵士たちが水で薙ぎ倒されていく。

と、もう1頭のウオータードラゴンが近くの集落に向けて水を噴射した。家々が破壊されている。

 「これは助太刀しないといけないかな!」

と、思ったその時、グウオーと腹に響く咆哮が轟いて空から青い龍が1頭のウオータードラゴン箱に乗っているオーガに向けて口から強風を放った。オーガ達が吹き飛んで海に落ちていく。身に着けた鉄の鎧の重さで海中に沈んでいく。残ったウオータードラゴンが青い東洋風の龍に向けて水砲を放った。それがまともに当たって落ちてくる。

「あの青龍まだ幼体で弱いよ!助けなきゃ」

とヒメが叫んで青龍のもとへ急行した。水面に落ちる寸前で甲羅に乗せて急上昇した。

そのヒメの腹に水砲が当たった。

ヒメの敵は俺の敵だ!

俺はウオータードラゴンの1頭の首に怒りの斬撃を打つ。そいつの首が離れ飛んだ。背の箱のオーガたちにハッコが白虎電雷タイガーサンダーを放つ。稲光を放ちながらオーガ達が倒れ伏す。


 生き残ったウオータードラゴンにシュが朱雀炎を放った。ドラゴンが焼けて周囲の海水が沸騰する。そこへヒメが凍結魔法を撃った。炎が消えた。沸騰が収まった。

「トオルもったいないからマジックボックスに収納して」

ヒメは貴重なウオータードラゴンの素材を残してくれたのだ。ヒメは出来る子だった。

これで誰がどんな攻撃方法を持っているのか知ることが出来た。


 そう言えば青龍の子はどうしたのかな心配だ。

ヒメが戻って来た。背中に小さくなってしまった青龍が乗っていた俺は蘇生魔法を掛けてあげる。

「あー、凄く気持ちいい魔力。お兄さんありがとう」

4神獣が揃って彼らだけが判る念話で情報交換している。そして

「トオルお兄さんボクは東の守護神獣の青龍だよ。ボクとも契約して頂戴。きっとまた奴らがこの国を侵略しようとやってくるはずだ。今度はボクだけで守れるようになりたいんだ」

「判った。名前を付ければいいんだな」

俺は例によって体の色から考えていく。アオ、ブルー、アクアブルー、ブルードラゴン、ブルーウインドウ、ブルゴン

うーんこんなものかな、俺のセンスだと。


 ブルンなんてどうかしら可愛いと思うんだけど」

トジノが案を出してくれた。

「うん、ボク、ブルンが良いな」

彼が言うので、ブルンで決定した。

 無事に契約出来て、お腹が空いてるようなので食事をさせることにした。彼は魚も肉も大好きなようだ。ブルンも俺の影で待機出来るようだ。


 「大いなるご助力感謝の念に堪えません。拙者はバジリス王国の沿岸守備隊隊長のジュウベエ・トリイと申しまする。卒爾ながらこちらの可愛らしい方々は4神獣とお見受け致しますが如何でしょうか?」

 「はい、如何にも左様でございます。僕はトオルといいます。この子らと契約している者です」

つられて武士っぽい言葉を使ってしまって慌てていつもの言い方に戻した。

そして水砲で薙ぎ倒された兵士達に広範囲治癒魔法を掛ける。

幸い死者は居なかった。


 「この事を国王様に報告せねばなりません。トオル殿及びお仲間の皆様にも国王様に会って頂きたいのです。今後の沿岸警備のあり方についてのご意見も頂きたいと存じます」


 「トオルお兄ちゃん、あいつら必ずこの国を占領しようとやって来るヨ。それに備えないといけないと思うよ」

 ブルンの進言で俺達はバジリス王国の王都へ行くことになった。

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