第28話 旅は道連れ
ブラウングレインの種籾を受け取ってバッカスさんに残っていた日本酒をさしあげて別れの挨拶をしてアテルイ村に帰る事になった。
その時にバッカスさんに号泣されたり色々あったが何とかヤピン王国の国境を越えることが出来た。人の通らない所でトジノにヒメとハックを紹介した。そしてヒメに大きくなって貰い、ヒメに乗って空の旅としゃれこんだ。
そうもうトジノとよびすてにしている。トジノの方から言って来たのだ。ヒメはトジノに突っかかるようなことはしなかった。俺の奥さんと認めたからだと言っていた。
忘れていたが、俺が勇者召喚に巻き込まれたのはマルテウス王国だった。その南にヤピン王国とヤピン王国の東にキツナエ王国が有る。ヤピン王国とキツナエ王国合わせてマルテウス王国とほぼ同等の面積になる。両国とも南端が海に面している。
アテルイ村に帰る前にキツナエ王国に寄って、売る機会に恵まれなかったドラゴンの素材を売って行くことにした。
カンセコ領とアキレス領の冒険者ギルドでは高価すぎて買えないと言われた。売れたのはワイバーン5匹分だけだったのだ。王都には行きたくなかったのだ。まあ誰も知っている人間は居ないし見た目も10歳も若返ってるのだから国王が追放した俺だと判る筈も無いが、気持ち良くないから行きたくない。なのでキツナエ王国の冒険者ギルドで売っておこうと思ったのだ。
ヤピン王国の冒険者ギルドはあまり活発な活動はしていない。せいぜい畑を荒らす害獣駆除くらいの依頼しかない。魔物が少ないのだ。なので寄らずに来た。
今度も国境近くの無人の草原に着陸してそこから歩いて国境の門に向うと、ヒメやハックと会った時に感じた懐かしい魔力を感じた。これはひょっとしたら……。
俺がその魔力の方に近づくとピーピー鳴き声がする。草叢の中に赤い羽毛が見えた。
『ひょっとして
念話で聞いてみた。契約していないから通じるかどうか判らないが。
『うちのこと知ってるの?玄武と白虎の魔力も感じるし貴方トオルさん?』
やっぱり朱雀だった。この子は礼儀正しいようだな。名前にさん付けされただけでそう思ってしまった俺はちょろいのかな?。
朱雀が姿を現した。まだ鶵の形態だが頭の飾り羽と長い尻尾が綺麗な朱色の毛色を見ると大きくなったら
もっとも俺はどれも実物を見たことは無いんだけどね。
そう言えばフェニックスってエジプトの想像上の火の鳥、不死鳥と言う存在で、鳳凰は中国の鳥の中の最上位の存在で霊鳥であり、神獣とは、別物だった気がする。まあ、そのうちに色々判って来るとは思うけれど。
そうしてその子に名前を付けると無事契約出来た。名前は羽根の色から真紅、スカーレット、レッド、シュなどの候補から選んで貰ったらシュが可愛いと言うのでシュに決まった。センスの無い俺の案から選んで貰って正直嬉しい。
契約出来たところで皆に紹介する。シュの魔力を感じた辺りからみんなの時間は止まっていたらしく驚かれた。
「一体何時の間にこんな可愛い鳥さん見つけて来たの?私はトオルさんの婚約者のトジノよ宜しく、シュちゃん」
「あたし全然気が付かなかったわ、やるわねシュ、あたしはヒメよ玄武よ」
「流石トオルお兄ちゃん。こんなにも簡単に4神獣のうちの3神獣と契約しちゃうなんて!おいらハッコだよ、白虎なんだ。宜しくねシュ」
シュの食べ物は主食が玄米で自生している草を自分で探して食べて、時々ご褒美で俺とトジノが作った料理を食べさせるといいみたいだった。因みに虫の事をたんぱく源と言っていたから虫も食べてるらしい。
シュは人が居ると気配を消して太陽の光に隠れたり、時間を止めて俺の影に隠れたり出来た。ハッコやヒメももう少し大きくなったら影に隠れる様になるらしい。
キツナエ王国の冒険者ギルドに入るとここは大勢の冒険者で賑わっていた。トジノを冒険者登録させる。身分証明書になるからだ。神獣を契約獣にしてるなんて知れたら煩そうなのでバッグの中と影に隠れていて貰う。
トジノの登録が終わったので、ドラゴンの素材を売りたいと言ったら受付嬢はびっくりした顔をしたが、叫ぶことも無く買い取り所を教えてくれた。うん,この人プロだな。
買い取り所に行って冒険者カードを提出するとランクがAに上がっていると言われた。カードを作ってから倒した魔物が自動で記録されていたんだっけ。
「うむ、確かにドラゴンを討伐しているな。えっ、ジャイアントホワイトモンスターベアにサファイアメタルレオパードだって!
兄ちゃん何者だ?それにワイバーン15匹にレッドワイバーンだと、こりゃSクラスでも不思議じゃない強さだ!兄ちゃん昇級試験は受けてないのか?」
ああ、そう言えばカンセコ領のギルドでそんなこと言ってたな。
でもSクラスになると、国家レベルの大きな討伐に強制的に参加させられると聞いて受けなかったんだっけ。特にあの国王だと戦争の兵士にさせられそうだ。あの勇者召喚でこの世界に来た高校生らは今頃どうしているんだろう?
魔王討伐に行ったという話も聞かないし、軍隊に入れられて訓練させられているのだろうか?
でもまあ、召喚された時は皆嬉しそうにしていたから大丈夫だろう。深く考えるのは止めにした。
査定の結果、ドラゴンもレッドワイバーンも肉が無かったので、がっかりされたが、それでも総額は10億デンを越えたので良しとしよう。
でも、ジャイアントホワイトモンスターベアの肉とサファイアメタルレオパードの素材は売らなかった。錬金術の熟練度が上がったら1万度の高熱もそれに耐えられる結界も作れそうな気がする。最強の剣を作れそうなのだ。
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