第26話 玄米探しとギルド訪問
ミラネル商会ヤピン王国支店の店長さんにお会いしたい旨を告げてミラネルさんからの紹介状を見せると応接室に通された。
「わたくしが本商会のヤピン王国支店長のバリエスです。会長の
紹介状を読ませて頂きました。トオルさんはこの穀物の種子を手にいれたいとのことですが今すぐには無理かと思います。先月2期作の種まきを終わったばかりですからねえ」
「そうなんですか。とすると手にいれるには約半年後になるのでしょうか?」
「そんなところでしょうね。ただ……」
「ただ?」
「この後農業ギルドのギルドマスターに顔を覚えて貰った方が次回の交渉に役立つと思います。行きませんか?」
「有難う御座います。是非お供させてください」
農業ギルドは街を囲む塀際の南側の入り口脇に有った。反対側には門番兵士の詰所が有る。犯罪者を入れておく牢屋も兼ねている。
バリエスさんの紹介でギルドマスターのケッフェルさんに会うことが出来た。
「で、君が欲しいと言うのは何の雑穀の種何だい?」
「これなんですが」
玄米を出して見せる。
「なんだ、脚気の薬にしているやつじゃないか。何でこんなものが欲しいんだ?」
「これを加工すると美味しい食材になるんですよ」
と焼き鮭入りのおにぎりと、ワイバーン肉の薄切り焼肉を入れたおにぎりとそれらに合う味噌汁を出して2人に振る舞った。
「な、なんだこの白い穀物は!美味い!。ほんのり甘みが有って入っている焼いた魚や焼いた肉と良く合って更に美味しくなっている、まさかこれがあの雑穀だと言うのか⁈」
「そうです。美味しいでしょう、でも、こればっかり食べているとかえって脚気になってしまうので時々茶色いままで食べてあげないといけないんですよ。それか豚肉をおかずにするとかね」
「な、なんで、君はそんなことを知っているんだ?まだ若いんだろう」
「はい、この前14歳になったばかりです」
ステータス画面にそう書いて有ったのだ。
「僕の故郷ではこれが主食だったんですよ」
「トオル君と言ったね、このブラウングレインを真っ白にする加工技術を教えてくれないかね。教えてくれたら備蓄している種籾を譲ろう」
「わかりました。では栽培方法も教えてください。栽培している畑をみせてくれたらありがたいです」
「良し分かった。これから行こう、今直ぐ行こう」
余程精米したお米のおにぎりが美味しかったのだろう、俺の気が変わらないうちにとブラウングレイン栽培畑へ案内してくれた。そこには稲の新芽が顔を出していた。水田では無く陸稲だった。しかも、
水田の稲ほど気を使わなくともすくすく成長してくれる逞しい植物だった。
ギルドに戻って来て精米機を取り出して玄米を精米して見せた。
「凄い機械だ。是非これを売ってくれ。又は種籾5俵と交換でどうだ?」
「トオルさん、この機械ミラネル商会で1台150万デルで売ってる機械じゃないですか?」
そう、俺が30万デルで仕入れて、ミラネルさんに100万デルで売ったやつだ。ミラネルさんは150万デルで売っているらしい。
「なんだと、そんなに高価な機械だったのか!すまない、交換の話は無しにしてくれ。しかしなんで俺はこの機械の事を知らなかったんだ?、バリエス君何で俺ところに売り込みに来なかったんだ?」
「いえいえ、サンプルを持って実演販売しようと思って来たのに
担当者のケリーさんが「茶色いままで売れるのに何でわざわざ白くせにゃいかんのだ!」とけんもほろろに追い返されましたよ。なので直に取引させて頂いている貴族のお屋敷に納めさせて頂いていますよ。あのおにぎりの作り方もお教えするために炊飯器も同時にお買い求めいただいています」
「な、な、なんとそんなことがあったとは知らなかった。おい誰かケリーをここに連れてこい!」
ギルド内でごたごたが始まった。
「おい、ブラウングレインを白くする機械が有るって本当か?」
今度はドワーフのおっさんが乱入して来た。
「おいこら、酒バカのバッカスじゃないか、なんの用だ。今は大切な客人との交渉をしているところだ。邪魔するな!」
酒バカとはなんだ。俺の天才娘がブラウングレインをもっともっと白くセイマイ出来れば美味しいセイシュが出来ると言ってるんだ。話ぐらい聞かせろ」
バッカスさんの娘さんがこの雑草あつかいされていたブラウングレインを脚気の薬として売ることを薦めてくれたおかげで今はこの国の大事な収入源になっているのだそうだ。
話を聞いているうちにその娘さんは元日本人ではないかと俺は思った。
俺は精米したお米を小袋に入れてバッカスさんに渡して言った。
「バッカスさんこの白米を娘さんに見せて下さい。それとこの米から作った清酒を持って来ているので、1度娘さんとお話しさせて下さい」
「おお、娘が言った通りブラウングレインから酒が造れるのか!判った今直ぐ呼んでくる。絶対に逃げるなよ。ギルマス、この客人を丁重にもてなして絶対に逃がすなよ!」
バッカスさんは大慌てで出ていった。俺も内心ワクワクしている。
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