第25話 精算と旅立ち

坑道入り口に帰って来たら大騒ぎになっていた。

まさかジャイアントホワイトモンスターベアみたいなとんでもない魔物が居たなんて思いもしなかったのだ。そこへ超貴重なサファイアメタルを纏った豹の魔物が居たという事実が嬉しいやら恐ろしいやら複雑な思いだったろう。そして次々に送られてくる貴重な鉱物の数々。しかもそれは壁の表面だけを鑑定した結果なのだ。

壁を掘り進めて行けばもっともっとおびただしい数量の鉱物が発掘される可能性がある。名実共に宝の山になったわけだ。


さて討伐料やら鉱石の探索料、地図の作成料等の清算をする事になった。

結論から言うと討伐料5億デルと、大熊の死体、サファイアメタルレオパードの焼け残った分(鎧、牙、奥歯、骨一式、筋肉に含まれていた微細なサファイアメタル)が俺の物になった。


討伐料に関しては述べ300人の高位の冒険者を雇って昼夜交替で攻撃し続け、ポーションを湯水のように使ってようよう倒せるほどの強い魔物だったのを1人で倒してしまったのだ。前代未聞のことだったのでいくら払えばよいのか判らないということだったが、俺の方から5億デルと情報を貰うことで手を打ってもらった。

今回採掘して来た鉱物のサンプルだけで3億デルは下らないはずで、それにどこで何を採掘したのかを詳しく記した地図の価値は値を付けられないほど貴重なものだと言われた。

採掘人夫頭が部下を連れて地図の精度を確かめる為に、その周辺を掘るとサンプル通りの鉱物がドンドン出て来たとの報告が有った。地図の正確さが証明された。


で、俺はミラネルさんに玄米の生産国の情報と種籾を買いに行きたいことを伝え、交渉相手への紹介状を書いてもらう事で手を打ったのだ。


俺は魔物が復活しないことを確認する為にそこの労働者宿舎で1泊した後玄米の生産国、南のヤピン王国のミラネルさんのお店の

支配人さんと、その国の農業ギルドギルドマスターへの紹介状を

書いてもらってから旅立つことにした。


転送バッグの引き渡しも忘れずにおこなった。

その際時間停止も無い廉価版の転送バッグが欲しいと言われた。

鉱山で使いたいと言う。そりゃそうだ。鉱物の選別や精錬所は麓の自分の家から通える場所に勤務先が有れば働く人たちは大いに助かる。坑道で採掘した鉱物を麓の工場に転送出来れば輸送方法は解決する。選別所から精錬工場へもトロッコとかベルトコンベアーの設備を作る必要もなくなる。


幾つ欲しいのか調査して貰ってから注文書を送ってもらう事になった。


さて出発の時が出た。最初は歩いて行く予定だったが人気の無いない所に来たらヒメが言った。

「あたし空を飛べるから、あたしに乗って行かない?」

「ヒメ本当に飛べるのか?その小さい身体で?」

「ちょっと見てて」

そう言うとヒメはピョンと20mほど跳んでポンと言う音がした気がしたらヒメの身体が一気に6m×4mの大きさになった。

「おお!凄いなお前!」

「えへへ、トオルの魔力を吸収し続けてたら、神獣としての能力が目覚めたみたい」

「へえーヒメお姉ちゃんすごいなあ。おいらも大きくなって空を飛べるようになれるかなあ」

「ハッコだってトオルの魔力を吸収してたら大きく強くなれるよ」

ということで俺は大きくなったヒメの背に乗って、俺の頭にハッコが乗ってスッと上昇した。不思議なことに風も当たらず前後左右上下の景色が頭の中に入ってくる。今の俺は柔らかな床の上であぐらをかいて座っている。試しに椅子を持ち込んでみても前から有ったようにしっくりきて、ゆったり出来る。


乗り心地を楽しんでいるうちに南のヤピン王国との国境付近に来ていた。なんか、とんでもないスピードだ。1時間もかかっていないんじゃないか?



国境を越える前に人目の無い所に着陸してヒメに小さくなって貰ってヒメとハッコを入れておくカバンの中に入っているように言った。

「ハウス」

2人ともサッとカバンの中に入り込んだ。

さあ、まず先にミラネスさんのお店を探そう。

そう決めてヤピン王国に入国する。そのお店は王都の冒険者ギルドのすぐ近くに有ると聞いていたので王都を目指すことにする。


この辺は王都の野菜畑と言われているそうで、野菜畑、小麦畑、芋畑が続いているが、稲の穂は見当たらない。別の地域で栽培しているのだろう。


王都は高くて頑丈そうな塀に囲まれている。おおよそ塀の中央部に王城があり、貴族街が取り囲んでいる貴族街の外側に騎士や、魔法使い等の王国軍の兵士の屋敷や軍の訓練所が取り囲んでいる。

そのそとがわがやっと一般庶民の街並みになっている。冒険者ギルドは街の市場のはずれにあってミラネルさんのお店はその斜め向かいに有った。思っていたより、随分大きなお店だった。

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