第24話 坑道の魔物たち

 俺目掛けて突っ込んでくる大熊の眼球を狙って指弾10㎜弾を撃った。見事に当たったがもう1方の眼球は俺からは見えない。眼を潰された奴は苦しそうな声を上げながらも一層狂暴になって俺の匂いを的にして襲い掛かって来る。

仕方ない投擲で行こう。

 俺は10㎝鉄球を向かってくる大熊の顔面に投げ付けた。

ドゴ―ーーン!信じられな程の大音響を発して熊の顔面を破壊して鉄球は洞窟の壁に大穴を開けたその際に弾け跳んだ何らかの鉱物を採集して置いた。大熊が死んだことを確認して転送バッグに収納した。壁にめり込んだ鉄球を回収しようとしたら綺麗な青く輝く金属が含まれた鉱物が壁から飛び出していた。

鑑定すると【サファイアメタル】だった。。10000℃の高温で金属を溶かし、型に入れて5000℃~7000℃まで冷ましてから金槌でたたいて剣を打つとミスリルの剣より5倍は堅く、ダイヤモンドの粉末を仕込んだやすりで研ぐとミスリル剣も切れる、切れ味抜群の剣が出来る。但し鍛冶師の腕の良しあしで剣の質も変わる。  一応この世界の最強の剣はオリハルコン製だと言う。

現在のこの世界での技術では、難しいのは鉄の溶鉱炉の温度が1500℃くらいだということで

1万度に耐えられる坩堝も高温を作れる装置もない事だ

フアンタジーでなら 温度魔法で10000℃を作り出し、それ以上の温度に耐えれる結界を作ってその結界の中で錬金術を行えれば可能なのかも知れないが。この世界で扱える人間(ドワーフも含む)が居るだろうか?おそらくは金属としてではなく宝石として流通するのではないだろうか。


 まだ奥の方に強大な魔力を感じるのでこの後も探索を続けると手紙を書いて転送して置いた。鉱石の欠片も送って置く。倒した魔物も送っておく。契約は交わしているので所有権は俺に有るが、どんな魔物だったのかを確認して貰う為だ。


 洞窟を歩いていると魔物の魔力が強まって来る。敵も俺の魔力に気が付いたのかウロウロ歩き回っているのが感じ取れる。

敵の動きが止まった。

俺の10m前方は行き止まりで、左に横道があるようだ。どうやらその横道に息を潜めて待ち伏せしているようだ。狡猾な奴みたいだ。

油断なくその分岐点に向う。


 何かが襲って来た。ネコ科の猛獣の様な動きだ。俺は転移でそいつの頭の真上に転移してミスリルの剣で首に切りつけた。

カキ―ンと音がしてミスリルの剣が弾かれた。なんて硬さだ!

ライト魔法で周囲を照らす。見えた。全身が濃い青の豹の様な魔物だった。眼だけが異様に赤い。

鑑定すると【サファイアメタルレオパード】だった。

 眼球がルビー。全身がサファイアメタルで覆われている。エサはサファイアメタル鉱石で奥歯で鉱石を磨り潰して取り込み全身の

鎧にしているらしい。

 その奥歯を砥石代わりに使えば剣の刃付けが楽に出来そうだな。

なんて、呑気に考えている場合じゃない。こいつを倒す方法を考えないとな、なにしろミスリルの剣が歯が立たないのだ。全長2mながら体重は1トン近い。なのに素早く動ける。恐らく牙もサファイアメタルで出来ているだろう。


 俺は決断したこいつの肉は諦めて、口の中に炎を放り込んで中から焼いてしまおう。肉の中にもサファイアメタルが入り込んでいたら食べた人間の胃や腸が削られて大事になりそうだ。

奴が俺に嚙み付こうと大口を開けて襲って来た時がチャンスだ。

さあ来い。

 敵もさるもの引っ搔くもの、さっきの俺の転移を危険だと感じたのかなかなか襲ってこない。

ならばおびき寄せよう。

 足元が滑ったふりをして横向きに倒れる。

掛かった!大きく口を開けて牙をむきだして俺の首に嚙み付こうとした。今だっ。口の奥、胃の中に高温の炎の塊を転送させてやった。

 悶え苦しむサファイアメタルレオパード。10000℃でないと溶けないサファイアメタルの鎧で覆われた豹の魔物は鎧と牙と爪と歯と全身の骨を残して息絶えた。

(生きたサファイアメタル鉱石だったな。いくらで売れるんだろう?)転送バッグに収納して帰ろうとしたとき、頭上の壁の小さな窪みに小さな白い生き物が見えた。

「ミャウミャウ」と子猫の様な鳴き声でまるで助けを求めているみたいだ。

「新たな魔物か?」

 身構えたとき俺の服の下に隠れていたヒメが出て来て言った。

白虎びゃっこの幼体だよ。あそこに隠れていたのに降りれなくて泣いているみたい」


 又ドジっ子が現れたようだ。


 俺はその子の居る壁の所まで転移してその子の前に手のひらをさしだして、自分から手に乗って来るのを待った。

くんくん、俺の手の匂いを嗅いでいたがやがておずおずと手のひらに乗って来た。

(可愛い)

 片手に乗ってしまうほどちいさな真白なその子はまるで子猫のミニチュアだった。白虎と言う割に毛皮に縞は無く本当に真っ白だった。

「なあ、お前は本当に白虎なのか?」

呟くと

「うん、そうだよ。生まれて2日目だから真っ白だけど成長したら縞が現れるんだって」

と、返事が返ってきた。

「そういえばお前の親は?この洞窟の中に居るのか?」

「ううん、おっぱいを飲ませてくれたあとどっかに行っちゃった。トオルと言う人間が現れるだろうから着いて行きなさいと言ったんだ。お兄ちゃんトオルだよねぇ」

「そうだけど、なんなでそうおもう?別な人間かも知れないだろう?」

「だって、あいつに勝てる人間は滅多に居ないし。おいらを連れて行ってくれるトオルは強い人間に決まってるもの」

「そっか。それじゃあお前おっぱいを1度飲んでからもう1度も飲んでいないのか?」

「うんそうだよ。もう歯が生えてるからお兄ちゃんと同じものを食べれるよ。お兄ちゃん何か食べさせて」

「いいぞ。ちょっと待ってろ」

「うん、待ってる」

素直でよろしい。食事の用意をする間にこの子の名前を考えておく。

 猫みたいだから魚の料理がいいかな。

生がいいのか?煮たのがいいのか?焼いたのがいいのか?

並べて見たらどれもみんな美味しそうに食べた。野菜も魔物の肉も食べたが、俺の好みと同じだった。これなら食事で苦労することもなさそうだ。


 「なあお前に名前を付けようと思うんだがお前男の子だよな」

「そうだよ」

「じゃあ、シロ、ハク、トラオ、ハッコどれか好きなのは無い」か?

「ハッコてどういう意味?」

「白い虎と言う意味だな。白虎びゃっこの違う読み方だ」

「へえ同じ意味なのに色んな読み方が有るんだね面白いね」

「じゃあ、ハッコでいいか?」

「うん、ハッコが良い」

『4大神獣、白虎びゃっこの幼体ハッコを契約神獣にしました』

 天の声が聞こえた。無事に契約出来たみたいだ。


 もはや人間に害を為す魔物のたぐいはもう居ないみたいだ。帰る前に壁を鑑定して他の貴重な鉱物が無いか探しつつ採掘した場所に印をつけ、地図を作成してから帰還した。

 地図とサンプルのデータは大いに感謝された。何を最優先に採掘するのか?その次は?計画を立てるのに大いに役立つからである。





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