第23話 鉱山の町にて
標高2500m以上の山々が連なるバランコット山脈が見えて来た。頂上付近は雲で隠れていてよく見えない.。麓の方は結構な緑で覆われている。下に広がる平野は水に困らなそうだ。
ビギンと言う町は山脈の中央黒木山の標高1000m付近に有るらしい、鉱夫の住むその町は人口3万人でその内1万5千人が鉱山で働いていて残りはその家族だそうだ。子供達が多く、大きくなったら鉱山で働くのが夢だと言うほど、鉱山に支えられている豊かな町だった。
町には3軒の宿屋が有ってそこのどれかにミラネルさんが泊まってといないか聞いて回ったら、何やら新しい鉱脈が見つかったとか何とかで、鉱洞の入り口に行っていると聞いて早速山登りを始めた。
登っている間にも坑道があって、その周辺に採掘した鉱石を選別する施設やら広場が有って鉱夫の寝泊まりする宿舎や事務所等の建物が並んでいる。鉱石の運搬にトロッコが使われているが100万円程度のマジックバッグを使ったら楽になりそうだなと思ってしまう。
坑道入口がある度に事務所を訪れてミラネルさんの事を聞いてみると
「最近見付かった鉱脈ってこの先1㎞登ったところだろうと言われた。つまり標高2000m付近ってことだ高山病にならなきゃいいが。この高度ならまだ大丈夫なのかな?でも気温はグッと下がっている気がする。
あ、あそこか?洞穴の入り口付近に人が集まっている。ぼん、ぼん、ぼんの見事な体型のミラネルさんが居た。
「ミラネルさん、お久しぶりです」
「おお、トオル君じゃないですか!どうしてここに?」
「転送バッグが出来たので持って来たのですよ。皆さんは何でここに集まっているんですか?」
「この洞穴の奥になんらかの鉱物があるみたいなんだが奥の方か得体の知れない魔物の咆哮が聞こえるんで中に入って調査出来ないでいるのですよ」
「で、なんでミラネルさんはここに居るんですか?鉱山関係者なんですか?」
「はい、確かにここの鉱山に出資しているんで、折角発見した宝の山を指を咥えて見ていなくちゃいけないなんて商人として歯痒い思いをしていたところですよ、あ、そうだトオル君はドラゴンも倒したんですよね。私からの未知の魔物討伐依頼を受けてくれませんか?」
「うーん、どんな魔物なのか判らないんですよね、これは命がけで臨まないといけないですね。条件を出してもいいですか?」
「どんな条件でしょうか?」
「倒した魔物の所有権、討伐の際に採掘出来た鉱物の所有権を主張します。討伐料は魔物の正体が判明したらそれに見合った金額を請求します」
「よろしいでしょう。その条件でお願いします」
俺はミラネルさんと契約を交わして洞窟に潜った。
入った途端地の底から響くような重低音の咆哮が聞こえた。
圧倒的な強者の叫び。スキル【精神異常皆無】が無ければ恐ろしさに身がすくんで動けなくなっていただろう。
ゆっくりと気配を消して歩を進める。暗い洞窟の奥深くにそいつは居た。暗視の効力を最大限に高める。
赤外線カメラで見ていたような画面が薄明りの中で見る画像に変わった。そいつは地球で見られる獣,白熊に良く似ていた。
鑑定するとジャイアントホワイトモンスターベアだった。2本足で立ち上がると5mくらいになる。体重約1,5トン。大きい図体のわりに動きが速い。突如奴が俺を見た。気配遮断が効いていない。
完全に俺を視認したそいつは(名前が長いので大熊と言うことにする)俺目掛けて駆け出した。
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