第22話 転送バッグを引き渡す
1人と1匹が騒いでいる所へ領主様が現れた。救いの神だ。
「これこれスザーナ、何を1人で騒いでいる?客人の前で、失礼であろう」
御領主のダリス様には小亀のヒメが目に入らないようだった。
「お久しぶりですダリス様」
「おお、トオル君、ひょっとして転送機能付きマジックバッグが出来たのかね?」
「はい、出来ました。必要な部署のバッグを管理する予定の方々を集めて頂けませんか?担当者の登録を行います当然のことですが全てのバッグにダリス様の登録をしておきますね。それと担当者を変更する時に備えて変更魔具を渡してきますね。説明書きが
出ますのでそれに従って操作してください」
「おお、それは有り難い」
領主様専用のバッグにダリス様の登録をしているうちに各担当者達が集まってきた。
登録したバッグのアドレスがダリス様のバッグに自動的に登録される。だがダリス様のアドレスはダリス様が選んだ人物だけに登録されるのだ。
スザーナさんの場合は相互登録されたようだった。
そしてここは来るまでに登録したアドレスは個人的なもの以外は既に登録してある。個人的なアドレスを知りたければ実際に会って許可を得てやっとアドレス交換出来るのだ。
その煩わしさを考えると各ギルドの金銭のやり取りが出来る口座システムはほんとうに良く出来ている。然も1世紀以上前に既に完成されていたなんて驚きしかない。それもこの国だけじゃなく、商業ギルドや冒険者ギルドが有る国全てが対象になっているんだよ。凄くない?
そのくせ、金銭以外の物品は転送出来ないというのも驚きだ。
考えられる理由は物品を転送出来るだけの魔力を持った者が開発者グループに居なかったことと魔石に魔力を蓄積する技術が開発されていなかったのだろうと推察するしかなかった。
この先、どこかの国が解析出来るか、或いは解析することを諦めて
ま、そんなことは偉い学者先生にお任せすることにする。
それより今は米の種籾を手に入れることの方が俺にとっては大事なことだ。
それで俺はダリス様に商人のミラネルさんが今どこに居るか知らないか訪ねてみた。
「うーんあの日の5日後に我が領の西の果てバランコット山脈の麓の町に行くと言っていたがそこから先はどうするかは聞いていないなあ」
「その町の名前は何と言うのでしょうか?」
「ビギンと言う町だが行くのかね?」
「はい、聞きたいことも有りますし、転送バッグの登録をして引き渡しておきたいので」
「そうか、ならば引き留めるわけにもいかないなあ。それにしても転送バッグの値段だが本当にこれだけで良いのかな安すぎないか?
俺が売ろうとしている転送バッグの価格が王都で売っている時間停止は付いているが転送機能の無いマジックバッグとほぼ同価格なのだ。俺からすれば容量もその辺の倉庫と同じ位なのに5億デルもするなんてぼったくりもいいところだと思う。正に殿様商法いや、王様商法だ。
俺の作った転送バッグは容量はその5倍は入る。お買い得だ。
余り安すぎると王国に眼を付けられるだろうけど……。
その為に他の貴族とかに訊かれたら8億デルで買ったと言ってくれるように念押しして置いた。
スザーナさんに見つからない様に館を抜けて西の町を目指して出発した。
西の町には何があるのかな楽しみだ。
ダリス様の言うことには、ビギンの町は鉱山の町で普通の鉄、銅、銀、金、等の鉱石の他に水晶とか少量ながらも宝石も算出すると言う。ミスリルも少量採れたという。過去形なのは今は採れないということなのかな?オリハルコンとか採れたら面白いと思うのだけれど。
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