第13話 領主館に戻る

 翌朝早く俺達は領都に帰る事にした。さすがに魔物の襲来は無かった。

「あの黒ソイのお吸い物、とっても美味しかったわ。お味噌汁もね。何処で仕入れたの?」

「僕の住んで開拓しているモスタの森の近くの村が海に面していて新鮮な魚介類が手に入りやすいのですよ、今夜の領主様への献上料理は海老や貝をふんだんに使った鍋料理にしましょう。味噌仕立てがいいかな、とっても美味しいですよ」

「それは楽しみね、カンセコ領は陸のど真ん中だから魚介類の料理は経験不足なのよね」

「僕だってずぶの素人だからそんなに詳しくはないですよ」

「領主館に戻るに市場を覗いてみる?」

「はいっ、是非に」




市場は今日も賑わっていた。でも米のヒントは得られなかった。

ヒエ、蕎麦、あわなどは見つかったが米は無かった。


ガッカリしているとスザーナさんに話しかけてきた異国風の服装の商人さんがいた。

「これはこれは御領主ダリス様の所の料理長さんではありませんか今日は食材の買い出しですかな?」

「あ、パテント領の商人さん。確かミラネルさんでしたか」

はい、ミラネルです。今日は何をお求めでしたかな?」

「ええとミラネルさんはお米という穀物をご存知ですか?」

「オコーメというのは存じませんが何に使うのか判らない穀物なら何種類か所持しております。私どものお店に寄って行ってみませんか?」

「面白そうねトオル君行ってみましょう」

「ええ、興味深いですね。行きましょう」


「スザーナさんこちらの少年は?」

「とんでもなく強い冒険者で、彼の故郷の料理のお師匠さんです。味噌と醬油が見つかったので今夜の領主館の夕食を彼の指導の下作る予定になっています。お米を探しているのは実は彼トオル君なんですよ」

「はあ、とんでもなく強い冒険者さんですか」

信じていない様だ。

「普通のワイバーンの群れ15匹とレッドワイバーン1匹なら瞬殺でしたよ」

スザーナさんちょっと不機嫌そうに言った。

後で冒険者ギルドに行く予定なので一緒に行ってみませんか?


「レッドワイバーンですと今どこに保管中でしょうか?」

レッドワイバーンに食いついて来た。

「スザーナさん、レッドワイバーンは御領主様の夕食に使う予定ですよ」

と、俺は釘をさす。

「そうだったわねミラネルさん聞かなかったことにして」

「それは無理です。ダリス様に交渉させていただくようにこちらからお願いしておきますのでギルドには売らないで下さいね。ダリス様からは【ジャガバタ―醬油】と言う食べ物について商談したいとお話が来ていますのでその席でレッドワイバーンについての商談を進めたいと思いますので」

御領主様は本格的にじゃがバター醬油】を領の特産品にするための行動を起こしていたのだった。


ミラネルさんのお店を見ると茶色い穀物が有った。

「有った玄米だ!ミラネルさんこれ売って下さい。取り敢えずここに有る分全部」3000デルで50㎏手に入れた。俺は錬金術で精米してピカピカになった真っ白に変身した日本米そっくりなお米を眺めてニヤニヤが止まらない。早く炊いてみたい。

この米はブラウングレインと言ってずっと南のヤピン王国原産で取り寄せることが出来ると言う。

味が良ければ大量に買っておきたい。

ミラネルさんも御領主邸に招待してお米料理を食べて貰い、「この領地の売り物に出来たらいいな。


お館に着いて、味噌、醬油を入手出来た事を報告して夕食をお楽しみにして下さいとキッチンに潜った。領主様はその間に商人さんのミラネルさんと商談を進めておくそうだ。


さあ、腕にりをかけるとするか。

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