第7話 ワニトカゲの唐揚げ試食会

村役場、冒険者ギルド、漁業者ギルド、商業ギルドに卸す物を卸した後に唐揚げを置いて診療所に行ってポーションを置いて、治療の手助けをして休憩している所に各ギルドの人達が押し寄せて来た。

「トオル君、あの唐揚げという料理は何なんだね!!?」

商業ギルドのギルマスが鬼気迫る表情で俺の方を掴んで揺さぶって来た。

(まさか食中毒でも出てしまったのか)と心配になったが、あんな美味い料理初めて食べた。是非とも作り方を教えて欲しいとのことだった。


「あれは、ワニトカゲの肉の唐揚げですよ」と言うと、


「信じられんあんな不味いワニトカゲが、あんな美味い料理に化けるなんて!」

下味には醬油も味醂も手に入らないので塩コショウだけの味付けなのだが良く揉んで馴染ませたのが良かったのかも知れない、食感は魔物油で低温でギトギトに揚げたものと違って植物油で2度揚げしてサクサク感を出したのが一層美味しく感じられるのだろう。

「村の料理人を集めるので目の前で料理して見せてくれないかな?勿論レシピ代は払う。この村の名物料理にしたいんだ」

熱心な商業ギルドギルマスの説得についうんと言ってしまった。

肉自体は安くても塩コショウと植物油は高価だし一般家庭には普及しにくいだろう。

まあ、村の発展の手助けになるならばと翌日に村唯一の旅館兼食堂の調理場を借りて講習会を行うことになった。

この際情報を得るために集った人達に醤油や味噌を見たことが無いか訊いてみることにした。


一通り俺が作って見せると

「なぜ1度揚げたのをまた揚げなおすんだ?」

との質問を皆に言われた。


「こうすることによって外はサクッと中がジューシーに仕上がるんですよ。油の温度にも注意してください」


俺は菜箸を使って泡の出方の違いに気を付ける様に丁寧に説明した。この世界の人達は揚げ油の温度に無頓着なんだよね。

だから油ギトギトの揚げ物が出てきたりする。


参加者全員に自分でやってみる様に促して出来の違いを判って貰った。

「トオル君、君本当に凄いよ。この国の料理の世界に大きな足跡を残す料理法をもたらしてくれた!」

食堂の料理長さんが、大袈裟なくらいに褒め称えてくれた。


「ところで最初にショーユ―とかミッソとかコーメとかが欲しいと言っていたが、それってどんなものなのかな?」

と、商業ギルドのギルマスが言って下さった。敢えて沢山の人達が居る所で訊けば、誰かが知っているかも知れないし、ヒントが得られるかも知れないもしれない。

「醬油も味噌も僕の生まれ故郷の調味料で毎日の食卓に欠かせなかったものです。これが有れば皆さんの食べたことの無い美味しい料理が出来るはずです」

「おおー、この唐揚げだけでもこんなに美味しいのに更に未体験の美味しい料理が出来るのか!」


「ん、黒い液体で、舐めるとしょっぱいってカンセコ領のワ村と言う村の森に育つ役立たずと言われている木の実に似ているなあ」

と冒険者の1人がぼそっと言った。

「エ、本当ですか?その村って何処に有るんでしょうか?」

「おいおい凄く食いついて来るなあ。そんなに欲しい物なのか?」

「エエ、是が非でも手に入れたい物です」

じゃあこの地図をやるよ。この村のずっと西にある「カンセコ領のこの辺に有るワ村に行ってみるといいぞ」

「有難う御座います。行ってみます」

「なあに、いいってことよ。但し条件が有る。今度この村に立ち寄った時にその調味料を使った料理を食わせてくれ。俺の名はドワースイングって言うんだ覚えておいてくれよ」

「了解ですドワースイングさん。必ず食べさせることを約束します」


次の俺の目標が出来た。その日からワ村に行く準備を始めた。


ドワースイングさんの話ではそこへ行くまでにドラゴンとか凶暴な魔物に遭遇する恐れがあると言ったのだ。

「まあお前の強さならドラゴンなんぞ敵じゃないだろうがな」

と笑い飛ばしていたが、まだ戦ったことの無い相手だ空を飛ぶだろうし、巨大な体躯をしているだろうし、火を吐くだろうし……と言うことで自分の持っているスキルを見直して戦うための自信と技量を磨くことにした。


これまで自分が使って無かったスキル【投擲】と【指弾しだん】を訓練することにした。

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