第5話 蘇生魔法を使ってみる

 慎重に蛇の腹を切って行くと息も絶え絶えの若者が出て来た。

 蛇の胃液が鼻をつく。肌が溶かされている。俺は若者にクリーン魔法掛けて綺麗にした。急いで治癒魔法を掛けるが蛇の胃液を飲んでしまっているようでなかなか治らない。その時だった。

 『レベルが15になったので蘇生魔法を取得しました』の声が聞こえた。これまたタイミングがいいことだ。【超幸運】のおかげだろうか。

 とにかく今は彼を助けなければ!

「リバイブ!」

「ゲホゲホゲホ」生き返った!肺の中の胃液を除去するクリーン魔法を掛けてもう一度治癒魔法を掛けると彼は何事も無かったように起き上がった。

「あれ、みんなどうしたの?あ、そうだ!大蛇だ!大蛇が出たんだ!」

「安心しろ。大蛇は彼が倒してくれた。皆も無事だ」

「お前、大蛇に飲み込まれていたんだよ。覚えてないか?」

「そうだ。急に真っ暗な酸っぱい匂いのする液体に落ちたんだった」

「お前あやうく大蛇に消化されてうん〇にされかけていたところを彼に助けて貰ったんだ。礼を言っとけよ」

「は、はい。君どうも有難う。えっと名前は?あ、俺はジロベンスだよ」

「トオルって言います。モスタの森で開拓しはじめたばかりの新参者です。今後宜しくお願いします」

 皆に驚かれたがあの強さならあの森でも生きていけるだろうと納得されて大蛇の件を村役場に報告しなければと言うことで、俺のマジックボックスで運ぶことになった。


 一足先に樵仲間の人が村役場に駆けつけて冒険者ギルドの人も呼んでモンスターブルーサーペントに襲われて俺に助けられた事を報告していた。

 俺たちが村役場に着くと皆が出迎えてくれた。


 蛇に飲み込まれたジロベンスさんのお母さんと大木の下敷きになったゴビータさんの奥さんが心配して駆けつけていた。2人の無事を知って抱き合って喜んでいた。


「お前さん、治癒魔法も使えるのかい、お願いが有るんだが、月に2度村の診療所で働いてもらえないかな?」

 そう言ったのは診療所長のドクタンさんだった。高齢なのでそろそろ引退を考えているらしく、隣のアキレス領主様に代わりの治癒師さんを派遣してくれるように依頼しているらしいのだがなかなか良い返事を貰えていない様だ。

「約束は出来ませんがポーションを作れますのでそれを納入するってことではどうでしょうか?

「おお、お前さん薬師でもあるのか大したもんだ。お前さんをこの村に追放してくれた国王様に感謝だな」

「そのことですが追放された時はそのスキルは持っていなかったので、役立たずと認定されたのです。下手に知られると強制的に身柄拘束されかねません。魔物を狩れることも、治癒魔法を使えることも内緒にして頂けると有難いです」

「へえ、大都会で暮らせるのにいいのかい?」

 若いジロベンスさんは王都暮らしに憧れているようだ。

「皆の衆、聞いた通りだ。トオル君の能力については他に漏らさないでくれんか。この村にとってトオル君は大事な住人だ。彼の想いを大切にしたい。いずれそのうちに国王様に知られるかも知れないがそれまで極力内緒にして欲しい」

 村長さんは俺の味方をしてくれた。嬉しい!

「有難う御座います。今日はこの後市場に行ってきますのでその後で良ければ診療所に行きたいと思いますがどうでしょうか?」

「それは有り難い。それまで患者を集めて置こう。皆、手を貸してくれ!」とドクタンさん。

「おおー任せとけ寝たきり婆さんも荷馬車で連れて行くよ」

 それはどうなんだろう?下手に動かしちゃまずいんじゃないの?

「のう、トオル君今ポーションは持っていないかな?

 外傷用のポーションが5本、病気用のポーションが10本持ってますけれど試作品なので本当に効くかどうかは判っていませんが」

「どれみせてくれ、儂も治癒師の端くれ、ポーションの鑑定くらいは出来るつもりだ」

「ではこれを」

「どれどれ、……おお、凄い。凄いぞ。お前さん薬師としても超一流のようだのう。中級から上級の効き目のポーションばかりだ。おい、あんた、寝たきり婆さんにこのポーションを飲ませて来い。飲んだ結果を知らせに来てくれ」


「トオル君モンスターブルーサーペントの死体を置いてってくれよ」

 冒険者ギルドのギルマスに声かけられた。忘れるところだった。大蛇の死体を納入した後

 俺は急いで市場に買い出しに走った。


 市場の野菜売り場には日本でお馴染みの野菜が並んでいた。種の名前を記憶していたので大体把握できた。欲しい野菜を買い込んでスープの素を探しに回った。

 嬉しいことにかつお節が見つかった。味噌とか醬油は見つからなかった。残念だ。お米も無かった。


 悔しい思いで診療所に向った。

 100人を超える人達が集まっていた。

 早速範囲治癒で軽傷の人たちを治す。

 次に、風邪や頭痛、肩凝り、腰痛、膝痛を一気に治し、便秘などの個人の悩みを解決していく。村には老人が多くて頻尿、夜尿などの患者さんが多かった。乾燥肌とか水虫、白内障などの患者も多く、次作るポーションの計画を立てていった。

 やっと患者さんが途切れた時に寝たきりだったお婆さんが歩いてきてお陰様で治りましたとお礼に来てくれた。

 今回の治療代は一律1000デルだそうで、それだけじゃ申し訳ないと野菜や魚介類を持ってきてくれる人達がいて俺的にはありがたかった。

 俺が森の自宅に帰る時には沢山のお爺さんお婆さんが集まって俺の事を拝んでいた。


 俺神様じゃないから拝まないで欲しい。

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