第3話 商業ギルド
魔物の森で採った胡椒の木の実を持って商業ギルドに来た。商業ギルドは丘の1段下のそれでも海よりは40m高台に有った。何でも100年前に大津波に襲われたことが有って海抜20メートルより下には人家は作るなと言う教訓が今でも生きているらしい。
「おお、これは伝説の胡椒の木の実ではないですか。これって君が採って来たの?あんな危険な森で?」
「ええ、村長さんの許可証も有りますよ」
さっき貰ったばかりの魔の森で暮らす許可証を見せると
「おお、確かに。疑って悪かった。何しろあそこはAクラス冒険者でも1人では苦労する危険な場所だからなあ。そう言えば先程冒険者ギルドから肉が入手出来たと連絡が有ったがそれも君が?」
「はい、月に1度持って来てくれと言われました」
「そうだったのかそれは有り難い。この胡椒の木の実も持って来てくれないかな?」
「いつでも採れるかどうか分からないので確約は出来ませんがもし採れたら持ってきます」
「宜しく頼むよ。今回は200万デルで買い取るよ、いいかな?」
「はい、相場が判らないのでそれでお願いします」
「それじゃあ200万デルだよ。領収書書いてね。」
1デルは1円と同等らしい。紙幣と硬貨が混在する。ほぼ日本円と同じ組み合わせ。
「はい、あとこれを粉にしたのも有るんですがこれも売れますか?」
「どれどれほほう、これは又細かい。これなら粒よりも1.5倍高く買い取るけど瓶に入ってるともっといいな」
「その瓶はどこで売ってるんでしょうか?ポーションも作るんでそれ用も欲しいです」
「ここの隣の雑貨屋で売ってるよ。瓶で持ってくるときは1瓶あたり20gで同じ量を入れるんだよ」
「判りました教えて下さってありがとうございます」
「なんのなんの、しかし君綺麗な字を書くねえ、どう、商業ギルドで働く気はない?」
「ごめんなさい、森で開拓しないといけませんので」
「そうだよね、肉と胡椒も持って来てもらわないといけないしね」
その後雑貨屋によって瓶と鍋釜食器類を買って森に戻ることにした。毛布も着替えの服も買っておいた。
川沿いを登って拠点に最適な場所を探しながら進む。川にはヤマメなのか岩魚なのか渓流魚の姿が見える。いい所だなあ。
落ち着いたら釣りにこよう。山菜の有る所も記憶に残して登って行くと平らな場所に出た。うん、この辺りがいいかな。
川の水質を鑑定すると【軟水、飲料水として最適】と出た。
近くに竹林も有るし、上流から竹の樋で引き込めばかけ流しの水道に出来る。家を建てる場所と畑の場所を決めて要らない木や岩石をマジックボックスに収納していく。木は根ごと収納したのでボコボコ穴が開いている。畑や家の敷地周りは魔物、鹿、猪らが入らない様に深さ10m幅10mの堀を掘って、その土を敷地の穴が開いてる所に播いて魔法で平らに均していく。そろそろ暗くなるので家を作って今日はここまでにしよう。
堀はまだ空堀にしておくひょっとしたらウサギなんかが落ちるかも知れないからだ。罠代わりだ。念の為堀の内側には結界を張って置いた。空飛ぶ魔物は防げないがその時はその時だ。もっとレベルが上がったら空にも結界を張れるかもしれない。
今夜は仮の宿だからマジックボックスに入れて置いた木々の枝と根を取り除いて錬金空間で乾燥させる。木の枝皮根は細かく刻んで堆肥の原料にする。
錬金術と大工職人のスキルを組み合わせて木材加工する。角材や板に加工して1LDKの板床の小さな家を作る。トイレは今回は簡易水洗にした。用をたした後に直ぐにクリーン魔法を掛けよう。風呂も後回しだ。こっちもクリーン魔法で済まそう。但しベッドと食卓キッチン台とシンクだけは作る。明日の朝の調理に使えるようにしておきたい。
ベッドの台部分は出来たがマットレスはどうしよう?毛布は雑貨屋で買ってきたけれど。ベッドは出来合いの物をセットで買ってきたほうが良かったかな。
いや待てよ、まだ解体していないワイルドベアが残っている。これを解体して錬金空間で皮をなめして乾燥消臭防腐して使えばいいか。今夜はこれで我慢して、明日、布団綿代わりになる物を探して手に入れてこよう。
俺は町で買ってきたパンと串焼きで夕食を済ませて眠りについた。
新しい身体はベッドの硬さも気にならず熟睡できた。
朝、鶏の鳴き声で目を覚ました。えっと思って外に出てみると雄の鶏が鳴いていた。周囲では5羽のめんどりが昨日土をいじった後に出て来たらしいミミズをつっついている。周囲を歩いて見ると生みたての卵が落ちていた。有難く頂戴することにした。よく見ると北側の堀の前に草叢が残っていてそこが鶏たちの住処だったようだ。
鶏達はそのまま放し飼いにすることにした。これって超幸運のおかげかな?
というわけで朝は目玉焼きとパンと野菜スープのご馳走だった。でもちょっと塩胡椒だけの味付けだと物足りない。シイタケみたいな出汁の出るキノコが欲しい。干した昆布は昨日買って来てある。かつお節も探しに行きたいな。コンソメスープの素なんかも有るといいけどな。良し次に町にいったら探してこよう。
木の枝と、木の根を加工して錬金術でトイレットペーパーとテイッシュペーパーらしき紙製品を作ってある。まだ厚くてごわごわしていて肌触りも良くないがその内に良いものが出来ることに期待しよう。
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