第10話 画策
幼児期を
「私ももう、子供ではありませんから。重病ならまだしも、これしきで親に時間を
「そうまで言うなら、そうしましょう。ちゃんと休んで、何かあったら、すぐに人を呼ぶのですよ」
と言い置いて、寝所から去っていった。
母親の気配が消えると、俺はほっと息をついた。
つい先ほどまで、手が
眠っている時に、寝所のほうへ人がやって来て、それで目が覚めたこともある。
人が来たと言っても、寝所の中まで入ってきたわけではなく、部屋の前を通りかかっただけだし、足音も立てていなかった。以前なら、あれぐらい離れていたら、そのまま寝ていたはずだ。
人の気配がある所では、眠れない――そう確信せざるを得なかった。
起きている時は、何の問題もないのだ。どれほど人がいようと、
それは俺が元々、常に周囲の人の様子に注意を払う
だが、休もう、眠ろうとする、無防備な時――気配に対する感覚が、急激に
原因など、一つしか思い当たらない。
兵衛尉様に「泊っていけ」と求められても、お断りするようになった。父親が俺の行動を
誰もいない寝所で、俺は
つい先ほどまでは、眠りたがっている自分の心身と、母親の気配とが反発しあって、休むどころか、何かに
眠る時に一人になれさえすれば、何の問題もないのだ。人がいる状況を
俺は、
その数日後。
すっかり風邪の治った俺は、父親と母親が部屋で話し込んでいるのを
父親が、やや重々しい口調で、
「そろそろ、
と切り出したのに対して、母親は、
「確かに、鷹一郎ももう十七になりましたが……それでも、さすがにまだ早いのでは?」
と疑問を
「いやいや。生まれた子が一年とたたずに
「まあ、私も、少しでも早く孫の顔が見られたほうが安心ですが。
「そうだろう? それに、選んだ嫁が実際に七見家で暮らしてみたら、どうにも合わない、などということがあっても、若いうちならいくらでもやり直しがきく。少しでも相性のいい嫁を見つけるためにも、早めに手を打ったほうがいい」
「言われてみれば、その通りですね。
俺はそっと、その場を離れた。
自分が妻を
まったく、ぴんと来ないのは――自分はまだ若いからとか、そんな理由ではない。
もっと根本的に、それは無理だと、直感が告げている。
どうするか――俺は深く、深く、息をついた。
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