第9話 不眠
お断りする理由もなかったので、俺はいつものごとく、
兵衛尉様は半月ほど前まで、兵を
鎮圧が成功し、兵衛尉様は無事にお戻りになったものの、反乱の
その後始末も片付き、ようやく心置きなく、また二人で時を過ごせるのだ――それを実感し、俺の心はいつも以上に浮き立っていた。
そしていつものごとく、枕を
まぐわいも
それどころか、眠ろうとすればするほど、手が
胸が
医者の仕事と、兵衛尉様との
明日も人を
やがて、兵衛尉様の隣にいること自体が、
ここには、いたくない。いられない。どこか、もっと別の場所に――。
「……どうした? 眠れぬのか?」
目を覚まされた兵衛尉様にそう問われて、はっとした。
じっとしていられず、もぞもぞと動いたから、そのせいで起こしてしまったようだ。
俺は
「申し訳ありません。疲れているのか、どうも気分がすぐれず……。少し風に当たってきてもよろしいですか?」
「
「かたじけのう存じます」
俺はそっと
夜空を見上げると、月が
胸が締め付けられるような感覚もない。俺にのしかかっていたものが、すっかり消え
兵衛尉様そのものが、
では、先ほどまで俺に襲いかかっていたものは何か。
答えは一つしか思いつかない――兵衛尉様の気配だ。
いや。正確に言うなら、人の気配だろう。そばにいるのが兵衛尉様でなくても、あの状況なら――。
俺は縁側に
あと数日で満月、という月は、ただ静かに空に浮かんでいる。その
満ち足りたものだったはずの、兵衛尉様との
肩が軽く
「おい。大丈夫か?」
と呼びかけられている――ぼんやりとした頭でそれを感じ取り、俺はゆっくりと目を覚ました。
俺のすぐ前にいて、呼びかけていたのは――兵衛尉様だった。
「よかった。具合が悪いわけではなさそうだな」
兵衛尉様はそうおっしゃって、ほっとしておられる。
俺は周囲を見回し、自分が縁側で寝ていたことを
「申し訳ございません! このような
俺の詫びに、兵衛尉様は
「疲れておったのだろう。そなたらしくもない
と
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