if本能寺
@sanada6354
(仮)if本能寺
作 大原 刃
天正10年6月2日(1589年6月12日)深夜、月も星も見えない闇夜を1万3千の兵を率いて、織田信長の命を受けた、明智光秀は、羽柴秀吉の援軍の為、備中高松城に向けて行軍していた。
すると、後方から早馬が、光秀の下へ…。
密偵「殿、一大事にございます。何者が本能寺を、包囲しております。」
光秀「何っ…。」
今、畿内にいる軍勢は、我軍のだけのはずだが…?
光秀「いったい何者が、本能寺を包囲していると言うのだ。」
密偵「はい。それが…。明智軍の旗印、水色桔梗の軍にございます。」
光秀「何っ?それは真か?」
光秀は、何者かが、自分に、謀反の罪を着せようとしているのを、感じた。
密偵「はい。確かに、この目で…。」
光秀「…。何故、我軍の旗印の軍勢が…。」
秀満「殿、何者が、そのような真似を…。」
(明智秀満、明智光秀家臣、光秀の娘婿)
光秀「おそらく、秀吉の仕業か…?こうしては居れん、本能寺に向うぞ!」
秀満「はっ!御意。」
光秀は、手綱を引き馬を反転させると、
光秀「これより、我が軍は、信長様を、お救いすべく、本能寺へ向かう。敵は、本能寺にあり!!」
家臣「おおっ!!」
真っ暗な夜空に、明智軍の歓声が、響いた。
明智軍が、反転し本能寺へと方向を変え、行軍し始めると、早馬が、急報を告げた。
密偵「先ほど、本能寺で謎の軍勢と、織田の軍勢の戦闘が始まりました。本能寺を包囲した謎の軍勢、およそ5千、織田の精鋭部隊約150、信長様が、討取られるのも、時間の問題かと…。」
光秀「まずいな。秀満、急ぐぞ。」
秀満「はっ。」
一刻ほど前、松明の灯りが、本能寺を取り囲む、謎の軍勢を照らしていた。
ほどなくして、真っ暗な闇夜の静けさを切り裂き、陣太鼓が鳴り響き、本能寺を包囲していた謎の軍勢が、織田信長の親衛隊めがけ襲いかかった。
信長は、本能寺で、寝ていたが、外の騒がしさに気づくと、小姓に声をかけた。
信長「何事か、騒がしいな…?蘭丸、蘭丸は居らぬか?」
(森蘭丸、織田信長小姓、森可成の長男)
蘭丸「はっ。」
信長「蘭丸、これは何の騒ぎじゃ?」
蘭丸「夜襲にございます。」
信長「何っ…。それは確かか…。誰が夜襲を…?」
蘭丸「明智光秀かと…?、水色桔梗の旗印でございました。」
信長「何っ…。光秀じゃと?」
蘭丸「はっ。しかと、この目で…。」
信長「光秀の分際で。儂に、謀反とは…。片腹痛いわ!蘭丸、弓を持て応戦するぞ!!」
蘭丸「殿、ここは一旦逃げてください。裏門は手薄な様子でございます…。」
信長「無駄じゃ。光秀のことだ、裏門から逃げた儂を、生け捕りにする手筈はついておろう。それより、軍の後ろで怯えている光秀に、矢の一本でもお見舞いしてくれるわ‼」
戦闘開始から、一刻善戦していた信長親衛隊も半数ほどになり、信長も深手を負い、蘭丸に導かれ、本能寺の奥の間へ逃げてくると、信長は、覚悟を決めた。
信長「蘭丸。火をかけよ、本能寺にあるもの、全て焼き尽くすのだ。光秀などにくれてやることはないぞ。」
蘭丸「はっ!承知いたしました。」
蘭丸達は、本能寺に火を放ち始めた。ほどなく、本能寺は炎に包まれた。
その頃、信長救出に向かっていた光秀に、真っ暗な夜空に、真っ赤に燃える本能寺が、目に飛び込んで来た。
光秀「…。間に合わなかったか。これで、儂は君主殺しの汚名を着せられることになったか…。」
秀満「殿まだ諦めますな。信長様なら、この窮地乗り切っておられるかもしれませぬ。」
光秀は、一縷の望みを賭けて、本能寺に向けて、馬を走らせた。半刻ほどすると、本能寺前門に、明智軍が到着した。
そこには、燃え盛る本能寺と、水色桔梗の旗が散乱していた。その光景を見て光秀は、何か、吹っ切れた様に、笑った、
光秀「ハハハッ…。これでは。まさに儂が謀反を起こしたようだな…。」
秀満「殿、笑い事ではございませぬ。このままでは、本当に、信長様に弓引いた謀反人として、後世に語り継がれてしまいますぞ。」
光秀「しかし、ここまで見事にやられては、笑うしかあるまい…。利三は居るか?」
利三「はっ!」
(斎藤利三、明智光秀家臣、娘は三代将軍家光の乳母、春日局)
光秀「状況を報告せよ。」
斎藤利三は、半刻ほど前に先陣として本能寺に到着していた。
利三「我が軍が到着した時にはすでに、本能寺からは火の手が上がっていて、信長様の親衛隊と謎の軍勢が戦闘していましたが、我らに気付くと謎の軍は蜘蛛の子を散らすように去って行きました。ただ今、信長様を探すように命じて居りますが、火の回りが早く、本能寺に近付けません…。」
光秀「そうか。では、信長様の安否はまだ判らぬのだな…。」
利三「はっ。残念ながら…。」
光秀「して、謎の軍は誰の軍か判ったのか?」
利三「それが、判りませぬ。今、京にいる信忠様の軍勢ぐらい、全く検討も付きませぬ。」
光秀「信忠様は、大阪に居るのでは無いのか?なぜ京に居る?…。」
利三「信長様の事が心配と、大阪行きを止めて、京に残り、妙覚寺に居ります。」
光秀「秀満、兵5千を連れて、信忠様のいる妙覚寺に迎え!!」
秀満「はっ!取り急ぎ向かいます。」
間もなく、妙覚寺方向から火の手が上がるのが見えた。
秀満「急がねば…!」
妙覚寺から火の手が上がる半刻ほど前、妙覚寺に宿泊していた信忠のもとに、急報が届いた。
家臣「信忠様、一大事でございます。本能寺の方角から火の手が…」
信忠「何があった。父上は無事か?」
家臣「それが、よく解りませぬせぬ。物見の情報では、本能寺が、明智軍に包囲されているとの事。」
信忠「明智が…?謀反を起こしたと言うのか…?すぐに兵をまとめよ。父上を救いに行くぞ。」
家臣「信忠様、お待ち下さい。もうすでに手遅れかと…。」
信忠「何を言っておる。今すぐ、本能寺に迎い、明智軍を蹴散らして、父上をお救いするのだ。」
家臣「それは駄目です。物見によると明智軍の兵は約5千、我が軍は約千、もし、信長様に、何かあった時は信忠様が、織田家中纏めなければなりませぬ。今は、二条御所で体勢を立て直し援軍を要請するのが、上策かと…。本能寺に迎い、信忠様に万が一の事があれば、明智の思うつぼでございます。」
信忠は、覚悟を決めた。
信忠「くっ…、わかった、二条御所で、明智軍を迎え討つ、支度せい。」
家臣「はっ。」
半刻後、謎の軍勢が、二条御所を包囲した。陣太鼓が、打ち鳴らされ、謎の軍勢と信忠軍勢の戦闘が開始された。信忠軍も奮戦するも、5倍の戦力の前に徐々に押し込まれていた。
信忠「もはや、ここまでか…。皆のもの、よくやってくれた。儂は、ここで自害する、お前たちは、御所に火を放ち落ち延びよ!」
家臣「我ら最後まで信忠様に、お供いたします。」
信忠「それはならぬ。儂の首を、明智に渡してはならん。明智の手の届かない隠せ。よいな、決して、明智に渡すでないぞ。」
家臣「はっ。信忠様の御印、明智には、決して渡しませぬ。」
信忠「では、解釈を頼む。」
家臣「はっ。信忠様、御免。」
信忠は、火を放った二条御所で、切腹し果てた。
夜も白々と明ける頃、秀満が、燃え盛る二条御所に到着した。
秀満「やはり、ここにも、水色桔梗の旗が…。何者が、殿を陥れようとしているのだ…。」
家臣「秀満様、物見によると、信忠様、御自害されたとのこと。」
秀満「くっ!」
これでは、殿が、謀反を起した事になってしまうではないか…。ならば、是が非でも、信忠様の御印、見付けなければなるまい。
秀満「皆のもの、信忠様の御印を何としても探し出せ!」
家臣「はっ!」
その頃、本能寺でも明智軍による、織田信長、捜索が夜を徹して続いていた。
光秀「まだ、信長様は、見つからぬか。」
利三「はい。まだ見付かりませね。これだけ、見事に焼き尽くされてしまうと、もう…。それに、そろそろ、夜が明けます。その前に、一旦、坂本城で体制を整えましょう。」
光秀「そうだな…。そういえば、徳川も、京にいたようだが、いかにする?」
利三「追手を差し向けて、徳川様も、亡き者にしておいた方が、よろしいかと…。」
光秀「では、利三、追手を差し向けておけ。」
利三「御意!!」
光秀「これ以上の長居は無用だな。では、全軍これより、坂本城に向かう。」
光秀は、秀満にも、早馬を走らせ坂本城にて、合流する旨を伝えた。
昼頃、光秀達が坂本城に、合流すると、密偵から謎の軍勢についえの、報告があった。
密偵「謎の軍勢は、小谷城に入って行きました。軍勢は、率いていたのは、蜂須賀正勝。」
(蜂須賀小六正勝、羽柴秀吉家臣、秀吉軍一番の古参)
光秀「蜂須賀?何故、蜂須賀なのだ?」
利三「やはり、秀吉の仕業!!」
光秀「いや、儂なら、このような大事、黒田官兵衛に、任せるが…。」
(黒田官兵衛、羽柴秀吉軍師、両兵衛の1人)
利三「小谷城の軍勢どういたしますか?」
光秀「ん~。小谷城に、5千の兵で籠城されては、なかなか、厄介だな。簡単に手出しはできぬな。安土城に行き、様子を見るか…。これより、全軍、安土城を占拠する。夕刻には、出発する。準備しておけ。」
同じ頃、小谷城の蜂須賀隊は、籠城の準備に忙しかった。
正勝「これより、光秀の攻撃に備え準備せよ。」
家臣「光秀はこちらに攻めてきましょうや?」
正勝「明智の目を、こちらに、向けよと、官兵衛の指示じゃ。」
家臣「しかし、何故、官兵衛様は、お館様を亡き者に…?」
正勝「官兵衛ではない、亡き半兵衛殿のご意思らしい。詳しい事は、解らんが、すべて、秀吉の為だと言っておった。信長様のやり方では、天下統一は、難しい…。血が流れ過ぎると…。官兵衛は、半兵衛殿の言葉が、よく解らなかったらしいが…。謀反を起こした荒木村重の説得のため、官兵衛は、有岡城におもむいたが、逆に捕まり幽閉されてしまった。その時、信長様に、荒木村重に、寝返ったと疑われ、さらに、長男、長政を殺されそうになった。と言う、話を聞いた時に、信長様を亡き者にする事を、決意したのかも知れぬ…。」
(竹中半兵衛、羽柴秀吉軍師、両兵衛の1人、本能寺の変約3年前に死去)
(荒木村重、織田信長家臣、黒田官兵衛の友人)
家臣「官兵衛様は、はじめから、光秀に、罪を被せるつもりだったのでしょうか?」
正勝「いや、罪を被せるのは、誰でも良かったのであろう。またまた、今、畿内いたのが、光秀だったと、言うこと。」
本能寺の変の翌日、秀吉軍は、毛利の密偵を捕まえ、明智の謀反の事実を知る。
秀吉は、光秀の謀反の知らせを聞きくと、激しく狼狽した。
秀吉「お館様が、光秀の謀反にあっただと…。お館様は無事なのかも?」
官兵衛「お館様の無事は解りませぬ。」
秀吉「お館様…。お館様…。」
官兵衛「秀吉様、しっかりしてください。これより毛利と和睦を、取り付けますゆえ、取り急ぎ京に迎い、謀反人、明智光秀を討ちなされ。そして、秀吉が、日の本を収めるのです。これが、半兵衛様のご遺言にございます。」
秀吉「半兵衛…?」
官兵衛「半兵衛様は、信長様では、日の本を一つに纏める事は難しいと…。血が流れ過ぎると…。いずれ、信長様を、亡き者にして、秀吉様に、天下を治めて頂くのが、半兵衛様の夢でした。今がその時かと…。」
秀吉「ちょっと待て。信長様を、亡き者に…?光秀が謀反を起こしたのでは無いのか…?」
官兵衛「明智には、信長殺しの罪を被って頂きました。のちのち、邪魔になりますゆえ。」
秀吉「では、誰がお館様を…。」
官兵衛「拙者が指示をして、蜂須賀に殺らせました。この水攻めも、関と堤さえ作ってしまえば、後は雨を待つだけのこと、多少、兵を動かしたり、時を稼ぐには、最適な戦法。目立たぬように小谷城に、1ヶ月かけ、5千の兵を動かし、信長様が、隙を見せるのを待って居りましたが。まさか、ここまで、計画通りに討ち取れるとは思って居ませんでしたが…。」
秀吉「官兵衛…。お主、お館様を…。お館様を、殺したのか…?儂は、お主らのこと決して許さぬぞ。」
官兵衛「初めから許されようとは思っておりませぬ。それより、まずは秀吉様、天下をお取り下さい。もう、京まで、引き返す準備は出来ております。何も持たず、一刻も早く、京に向かって走りなされ。鎧、武具、兵糧は、海路にて、運ぶ手筈は整って居ります。」
そして、秀吉は、本能寺の変から11日後、中国大返しを成功させ、山崎の戦いにて、羽柴秀吉軍は、明智光秀軍を破り、天下統一を果たす。一方、明智光秀は、坂本城へ敗走中に、農民に、竹槍で突かれ死亡。
秀吉は、その後、側近だった。黒田官兵衛を、豊前(福岡)12万石、蜂須賀正勝を、阿波(徳島)18万石と、2人を遠避け、冷遇している。
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