犬逃げる 🐶

上月くるを

犬逃げる 🐶



秋暁や黄色いビルのネットカフェ

初鴨や朝カフェつるんゆでたまご


秋澄むや洗はれぎらひの犬逃げる

某犬に見向きもされぬ猫じやらし


露草はいつもの猫を待ち詫びる

ひと雨に少し痩せたるほたる草


十年の家の古びず実南天

大切を託せる人や実南天


ゆるゆると解けるこころ白桔梗

面影のいつもやさしき梅もどき


ひと群の歓喜としての花カンナ

古書店のあかりのほのか鶏頭花


みづうみの藍深まりて花梨の実

洞窟にひよいと消えゆく草の絮


草の穂の助走なしで飛び立ちぬ

穂絮とぶ虚空の果のどこまでも


木洩日に微かな憂ひ空の秋

秋夕べ豆腐金物八百屋あり


空間と時間の粒子天の川

再開の銭湯の灯や星月夜




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