第13話 図書館
翌日、烏有は再び繁華街に出かけた。
駅から一番近い店に入り、携帯電話を探す。店員に、最新の機種について聞き、近くにあったパンフレットを写真に撮ってもらう。満足できる写真だった。
波多野に連絡するべきか迷ったが、とりあえず図書館に行くことにした。
密室を作る方法なら、わかった。
が、実際の事件と矛盾しないか、新聞記事を調べておく必要がある。
繁華街から地下鉄に乗り、図書館のある駅で降りる。ホームは暖かかったが、改札を出ると急に寒くなった。風が階段を駆け下りてくるせいだった。
冬の風を押し返すようにして階段を上り、地上に出る。
図書館の入り口は、少し歩いたところにあった。うつむきながら風をやり過ごすと、烏有は図書館の中に駆け込んだ。
図書館の中は暖房が効いていた。人は意外に多い。図書館が年末の休みに入ってしまう前に、本を借りておこうというのだろう。
と、目の前を、推理小説ばかり抱えた中年女性が通り過ぎた。以前と同じ違和感を覚え、婦人の背中を見送る。婦人が貸し出しカウンターの列に並んだところで、脳裏に光が走った。
――この事件は、何かに似ている。
同時に、全く似ていない、とも思う。
烏有は頭の中で、これまで読んだ本を思い出す。外からしか鍵のかからない場所、舞台の上の死体、あってはいけないはずのところにある鍵。
だが、思い当たることはない。
いや、そうだろうか。
〝次の同窓会で殺人をいたします。こぞってお越しください〟
同じ文章ではないが、そんな予告を何かで見たような気がする。
予告だ。殺人の。
烏有は深く息を吸い込んだ。
確かに、そんな話があった。殺人が予告される話が。
しかし、それは単なる偶然ではないだろうか。こうも度々気になることだとは思えない。
怪訝に思いながらも階段を上り、新聞の置かれたコーナーに行く。
そこには、各社の新聞が、ここ一か月分ほど置かれていた。そのうち、事件の翌日の物を数紙選び、空いている机に広げる。
まず、全国的によく知られた新聞を見る。
記事は暗いものが多かった。不況、ボーナスの減額、あらゆる事件。
しかし、その中には名古屋で起きた殺人事件については載っていない。
また別の新聞を開く。こちらも、全国的に知られた新聞だった。
やはり、不況の話が出ている。多くの事件も、先ほどの新聞と同じように出ていた。
が、名古屋の事件はない。
烏有はその二紙を棚に戻すと、地元でよく読まれている新聞を手に取った。
一面は他の二紙に出ていたような記事だった。比較的地方のニュースが多い、テレビ欄の裏に当たる面も見てみる。こちらも、他の二紙と変わりがない。
不審に思いつつ、他の面を見てみる。だが、名古屋での殺人事件は出ていない。
もう一度、小さな記事も確かめながら読んでいく。
市民版まで来た時、烏有の手が止まった。
そこには、檻に入れられたアライグマの写真が載っていた。
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