ナイトメア•クライシスアクター

萎びた家猫

目覚める

目が覚める。


俺の手には斧が握られている。そして目の前には直立した丸太が置かれている。


横を見ると俺と同じ格好をした男がこちらを見ている。そして俺の意識が戻ったことに気がついた男は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべると斧を振り上げ丸太を叩いた。


俺は状況を理解し目の前の丸太めがけて...ではなく男の頭目掛けて斧を振り下ろした。


目が覚める。


俺の手には赤いグローブがはめられており、上半身は裸だ。周囲はライトに照らされロープで囲まれたステージ。前には俺と同じ格好をしている屈強な男が、キュッキュッと音を立てながらステップを踏んでいる。


『カーンッ!!』リングが鳴る。


目の前の男はステップを踏みながら近づき、パンチを繰り出してくる。俺はそれを避け男の腹めがけてタックルをした。


男はなにか喚き散らしながら焦ったように背中を叩いてくる。しかし俺はそんな男を容赦なく後ろに押し倒すと、頭を思いっきり強打させた。


目が覚める。


俺の目の前にボードゲームが置かれテーブルがあった。テーブルを挟んだ先にいる老人は、ティーカップ片手に駒を動かす。


俺はテーブルをひっくり返すと、老人をボードで殴りつけた。老人は身を守る様に俺の身体を押すが、力足りず俺にマウントを取らる。


俺はボードの角で頭を叩き割る。


目が覚める。


俺の足元にボールが転がっている。目の前には数人の子供が目を輝かせながら、俺が次にどう動くのかを心待ちにしている。


俺はボールを掴むと、近くにいた子供の顔面に目掛けてボールを投げた。


顔面にボールを投げられた子供は、まるで殴り飛ばされたかのように後方へ弾かれ地面の上を転がった。


目が覚める。


俺の腰にリボルバー式拳銃が入ったホルスターがついている。


目の前にはカウボーイ姿のナイスガイが、映画のガンマン風の姿で後ろ向きに構えている。


俺はため息を吐きながら銃を抜き取り弾数を確認すると、後ろを向いて歩数を数えているカウボーイをブチ抜いた。


目が覚める。


俺は目覚めない。


目が覚める。


俺はまだ目覚めない。


皆目覚めていく。


でも俺は目覚められない。


皆死んで目覚めていく。


俺は殺すから目覚められない。


悪夢は死ねば目覚める。


俺は悪夢で殺し続ける。


皆を悪夢から覚ますために俺は殺し続ける。


だがそんな俺の悪夢は一体、いつになったら覚めるんだ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ナイトメア•クライシスアクター 萎びた家猫 @syousetuyou100

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ