未来が見える代わりに記憶の一部が消える男の想いの話

暗黒神ゼブラ

未来が見える代わりに記憶の一部が消える男の想いの話

俺の名前は未瀬川永久(みせがわとわ)

今は自分の名前を覚えているがいつ忘れるかという恐怖心が消えることはない

俺は自分の未来が見える……そして見た未来は必ず訪れる。

これだけ聞けばチートかもしれない……まあ俺も最初の頃はこれで未来の心配なねえとか考えていたらしい。

そうメモに書いてある

しかし未来が見える能力の代償は俺にとっては大きすぎた。

それは記憶の一部消えるというものだ。

まあ一部って言っても……今は今日の朝のことも覚えてないがな。

だから一部じゃなく全部に近いかもしれない

だから俺はメモに書いてあることしか知らない

そもそもこの能力を手に入れた経緯はというと、交通事故にあった俺は走馬灯で前世や前前世など昔の記憶を見た結果この能力を手に入れた。

ラノベみたいなものかもしれない

でも俺は記憶が消えるぐらいだったらこんな能力欲しくなかった。

せっかくの楽しい思い出も忘れるんだぞ。

嫌な記憶も忘れるけど……思い出したいのに何も思い出せず苦しむよりは……何倍もいい

だって嫌な記憶だって後から自分次第で笑い話に変えたりだって出来るだろ。

しかし唯一良かったと思ったのが身体が覚えていることは出来ることだ。

だからなんとか今も仕事も出来ている。

永久って名前なのに今のことさえ覚えられないのは、なんか皮肉っぽいけど。

なんで俺ばかりこんな思いをしないといけないだって思うこともある。

でも俺だって知っている……こんな思いをしているのは俺だけじゃないことぐらい

メモを取ってる自分にも感謝しなきゃな……家族にも心配かけてるしな……早く昔みたいに色々と覚えていたい。この想いもいつ消えるかど…………

「あれここはどこなんだ。あれなんで俺はこんなところに、どうやって……分からないなんで……そもそも俺は誰なんだ…………なんだ何か落ちたな……『未瀬川永久、十九歳これを読んでるってことはお前はまた記憶が消えたんだろこんな感じのメモは今着ているジャンパーの胸ポケットに入っているからそこを見てくれ。

そうすれば大体ことは書いてある。見えた未来のことも記憶のこともな。何か新しい未来が見えたらまたメモってくれ、頼む。未来の俺のためにも』ってなんなんだよ、それ」

俺は恐る恐るメモの通りにした。

そして理解した

…………あぁ、そういうことか。

その瞬間俺は未来が見えた

なら今俺が見た未来をメモっておくな

『未瀬川永久は三十九歳で地震の際に自宅に潰されて死ぬ。これが今見た未来だ。これを見た俺驚くかもしれないが……それまでに色々準備しといてくれ。俺にはそれしか言えない、ごめんな』とこれでよし。

そして二十年後の俺が三十九歳になった時俺は消防団の一員として働いていた。

今日も出動することになった。

その時大きな地震が起きた。

俺の目の前には預かっている子供がいた……その子をとっさに助けた時、俺は家の下敷きになってしまった。

「恵大丈夫か?」

「お、おじちゃんこそ……でも、どうしよう。僕のせいでおじちゃんが…………」

「違う恵のせいじゃない……俺は恵に生きてほしかったし……笑顔でいてほしい。まあこれで笑顔は無理だよな。でもこれだけは覚えておいてくれ、おじちゃんはいつまでも恵の味方だからな。それで泣きたいときは泣いたっていいし逃げたっていい。逃げることは悪いことじゃないからな……これ俺の今までのメモだ。これを俺だと思ってくれ……出来たら俺のことを覚えていてほしい。恵が覚えていてくれる間は俺は恵の心の中で生きていけるから……な」

俺は自分のメモを恵に渡した。

俺もよくこんな状況でこれだけ話せると思ったし身体が動けるなと思ったけど……

渡す時に見えた自分の昔のメモ、俺が地震で自宅で潰されるの意味がわかった。

これのおかげで大切な人を助けられた。

本当に感謝……だな。

そして最後の力を振り絞って恵を助けてくれそうな知り合いに電話をかけた。

黙ったままになるかもしれないが、それで俺に何かあったと感じてくれれば恵を助けてくれるかもしれない。

プルルルル

「永久大丈夫なの!?……今ニュースで永久の住んでる場所で地震があったって……永久? 返事してよ永久!!……もしかして……嘘よね!!…………子供の声が……もしかして恵くんがいるの?……待ってて今行くから……今行ったって危険だって分かってるけど永久と恵くんが助かるなら」

良かった気づいてくれたか……あとは来るのを待つ……だけ……だな

そして俺は死んだ。

その後恵は助かった。

なぜ知ってるかってそれは……見てたからな。

幽霊として。

恵が幸せになれますようにと俺は願うしか出来ないのがもどかしいがな。


おしまい

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