第58話 エピローグ

 何事かと思ったら、三日前にここで別れた基地の人々だった。


 会議室になだれ込むように入ってきた誰もが、私達の無事と勝利を祝ってくれた。

 あれがすごかった。ボスモンスターはどうだった。等、ひっきりなしに話しかけられたため、皆が落ち着くころには疲れがどっと増した気さえする。


 それでも、自分の頑張りが一つ報われた。

 そんな気分になれたので、悪い気分ではないと感じる。


 喧噪が収まり、人数のせいか若干狭く感じる会議室にて、各々が席に着くと、テレビ会議システムが起動する。

 画面の向こうには総理がおり、総理からも労いの言葉をもらう。


 「加賀見さん、畑中さん、真壁さん、田代さん、榊原さん、上木さん。皆さんのおかげで、今回のゲームも無事にクリアすることができました。本当にありがとうございました。そして、誰一人欠けず戻ってきてくれたことに、深く安堵しました。」


 総理は心底ほっとしたような感じだったので、本当に心配してくれていたのが伝わってくる。


 「皆さんには、ゆっくり休んでいただきたいのですが、今少し時間を頂戴したい。世界の現状について、共有させてもらい、何か意見があればお願いしたいのです。」


 世界の現状?

 どういうことだ。

 畑中さんもそう思ったのか、総理に問いかける。


 「総理、発言を許可ください。世界の現状とはどういうことなのでしょうか?何か問題がおきているのでしょうか。」


 総理は、難しい表情で説明してくれた。


 「今回、ゲームをクリアできなかった国は全部で十か国。」


 十!?

 三日目の開始時点では、二か国しかリタイアしていなかった筈なのに。


 「三日目に、ギリギリ保っていた国が続々とリタイアしてしまいました。それらの国は、モンスターを倒すことを諦め、隠れていたのですが、三日目に耐えきれなくなってメンバー自棄になったり、モンスターに発見されてしまい・・」


 そう・・なのか・・・。

 確かに、普通の人間がモンスターを倒すことは難しい。

 ましてや、銃にATKの恩恵が無いことからモンスターに対して有効ではないため、余計に現代の装備では、太刀打ちできなかったのだろう。


 「貴方たちが返ってくる少し前に、神と名乗る、いや我が国ではと呼称することにした存在が現れて、今回の結果を報告していきました。そして、現在世界にはダンジョンが現れています。更に我が国にも、資源ダンジョンと呼ばれるダンジョンを設置するかどうかの選択が求められています。」


 ペナルティとして、十の国に三つずつ、計三十のダンジョンが発生してしまったことになる。

 それに、クリア報酬ではあるが、資源ダンジョンも設置することができるはずなので、そちらの検討も必要になるだろう。


 その際に役に立つかもと、私は奴から得た、銃器についての情報と経験値の貢献度の話をしておく。

 

 「総理、ステータスが解放されている生物に対しての銃器の効果はほぼないと思ってよさそうです。これは、畑中さん達が実際に試して判明していますし、神、いえアンノウンからも確認できています。」


 「加賀見さん。情報ありがとうございます。そうですか、やはり銃器は効かないと・・。やはり、プレイヤーの増強は急務ということですね。」


 「はい、また経験値は戦闘における貢献度によって増減するようです。今後のプレイヤーの増強の際には考慮いただいた方が良いかもしれません。」


 総理は、それぞれの情報に対して、しかるべき箇所で検討させると答えた。

 そうして、他にもいくつか意見交換をして、ひとまず、明日改めて話し合いの場を設けることになった。


 「これから、世界はダンジョンという未知の脅威に向き合っていかなければならない。その時には、皆さんの協力をお願いすることになると思います。決して強制はしないと約束しますので、また要請に応じていただけると有難いと思っています。」


 総理がそう言って、解散となった。

 畑中さん達と別れて、送迎の車で自分のマンションに帰る。


 部屋に着くと、ベットに倒れこみ、すぐに瞼が重くなってくる。

 流石に疲れすぎて、限界だ。


 今回、ダンジョンが実際に現れたことにより、脅威が目に見える形で世界に示された。

 これからの世界は、益々変わっていくのだろう。


 私は変わりゆく日常を感じながらも、まずは休息のため、眠気に身を委ねるのだった。


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第二章 完



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作者コメント

この後、いくつか閑話や他の国のゲームの様子を挟みつつ、次の章にうつります。

まだまだ表現に苦しんでいますが、少しでも楽しんでもらえたら幸いです。


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