閑話 ゲーム中のあれこれ

第59話 その頃のA国 1

#ここから、第三者視点かつA国の戦いの話になります。

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#A国 ウィリアム


 「全員、いるか!?」


 私は、視界が戻ってすぐ今回のメンバーの安否を確認する。


 「ウィリアム!こっちは全員いるぞ。ライラも無事だ。」


 ざっと周囲を見渡すと、ここは海岸のようだ。

 少し向こうには広大な海が見え、バカンスだったら最高だったなと思う。


 「OK!まずは、周囲の状況を確認してくれ。危険がありそうなら、すぐにこの場所を移動する!」


 今回のゲームは、一班単位の小人数しか参加できないため、各方面のスペシャリストが集められている。

 各メンバーが、迅速に行動を開始したことを確認し、流石は精鋭中の精鋭だと安心する。


 それぞれの行動を確認した後、私は唯一軍人からの参加ではないライラのもとに向かう。

 彼女は、私と同じ前回の1on1ゲームのクリア者であり、 本人の希望と戦闘の適性が認められ、今回のゲームに参加していた。


 「やあ、ライラ。気分はどうだい?」


 「Hi、ウィリアム。気分は悪くないわ。これからの戦いを思うとワクワクするほどよ。」


 この状況にあっても元気な様子で、むしろ戦いに積極的なようだ。

 彼女は、某有名大学の三年生であり、実家が陸軍の将官、海軍の兄を持つという、軍家系であった。

 また、将来は軍人を目指しているらしく、日ごろから訓練をしていたため、スリムで引き締まった肉体をしている。


 前回の戦いでも、与えられたスキルとそれを使いこなす類まれな戦闘センスを見せて、リザードマンに勝利したのは、驚きであった。


 今回、参加するにあたっては父親の将官に、「よろしく頼むよ」と念を押されているのは内緒である。


 そうこうしているうちに、周囲を偵察していたメンバーが帰ってきた。

 レンジャー部隊の精鋭からの参加である、アッシュから報告される。


 「ウィリアム。付近に敵影無し。差し迫った危険はなさそうだ。少し離れたところにキャンプに適した平地と川もあったぞ。」


 「ありがとう、アッシュ。この短時間にそこまで把握できるとは流石だな。あらためて、私がリーダーで良いのか自信がなくなりそうだ。」


 そう、今回階級的には最高位が複数いるが、実績として私がリーダーになることはないはずだった。

 だが、未知の作戦でイレギュラーが予想されることから、モンスターと戦った経験のある私がリーダーとなっていた。


 「ひとまず、アッシュが見つけた広場に移動して、簡易キャンプを設営する。全員隊列を組んで移動!」


 広場に着いた後、手早くキャンプを設営し、見張りを立てつつ、一旦休息とした。


 「なあ、ウィリアム。この後どうするよ?」


 話しかけてきたのは、海軍から来た、クリードである。

 彼は、射撃の名手であり、空間把握能力が極めて高い。


 「クリード。今回の目的は、三日間の生存だからな。あまり派手に動く必要はないと考えている。」


 私の考えを話すと、横から陸軍出身のディーンが少し不満そうに話しに割って入ってくる。


 「いやいや、ウィリアムさんよ。モンスターとかを倒せば、LVが上がるんだろ?そうすれば、スーパーマンになれるらしいじゃないか。あんたらみたいにさ!」


 ディーンはそう言って、私とライラを指さす。

 確かに私たちのステータスの検証をした結果、超人的な能力を得ていることが分かっている。

 それも、モンスターを倒すという、文字だけみれば簡単なやり方でだ。


 ディーンは、優秀ではあるが、力への渇望が隠せておらず正直暴走しないか心配なため、見張っておく必要があるなと心にメモする。


 「ディーン。どんな脅威、モンスターがいるかも不明な状況は想定より危険なんだ。無暗に探しに行くようなリスクは冒せない。」


 そう告げると、ディーンは明らかに不満そうに周囲の見張りに戻っていった。

 思わず、私が溜息をつきそうになると、メンバー六人目で女性のメイベルが気遣うように声をかけてきてくれた。


 「ウィリアム。ディーンのことは、あまり気にする必要はないと思いますよ。彼も緊張しているのでしょうし。」


 メイベルは衛生兵であるが、軍医の資格もあるという、医療のスペシャリストである。

 基本、衛生兵は非武装であるが、今回は特例できちんと武装もしていた。


 「メイベル。ありがとう。ディーンのことは気にしていない。それよりも、これからのことが重要だ。特にどんなモンスターが、どの程度の脅威度なのかを早急に把握する必要がある。」


 「ふふっ。大丈夫なら良かったわ。周囲の偵察もアッシュが実施しているし、じきに判明すると思います。」


 彼女は柔らかく微笑むと、テントに戻っていった。


 アッシュの偵察が完了し、付近にもモンスターの影はないことから、一日目は川の水の状態や、環境適応のため待機して過ごして終了した。




 二日目は、我が国で未確認異常現象(UAP)のTypeKと呼称されることになった奴からの説明により、いくつかの追加情報を得て始まった。

 ちなみにKの理由は、最初の宣言がGodではなくKamiとなぜか直訳されて伝わったかららしい。


 「今回の主目的はサバイバルだが、副題としてモンスターのサンプルを回収する任務も課せられている。積極的に動き回る必要はないが、探索は実施する。」


 私は気が進まないが、二日目の行動指針を説明する、

 軍人は上の命令には逆らえない。


 「まずは、水飲み場となるであろう川付近を調査する。だが、あくまで川を観察する位置でとどめ、川には近づかないこと。いいな!」


 若干一名以外の了解の返事を受け、探索に出発する。

 何事もなければよいが。


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