第三章 「変えられた日常」

第65話 プロローグ


 「あ~。良く寝た。」


 あのサバイバルの次の日、私は三日ぶりのベッドを堪能し、気持ちよく目覚める。

 

 昨日睡眠に入ってから修練場に向かい、師匠に戦いの結果を報告に行った。

 師匠は、いたく喜んでくれ、「流石、我が弟子!」とお褒めの言葉を授かることができている。

 しかも、従者となった雫やダグも修練場に入ることができ、今後ますます修練に幅ができそうであることがわかった。


 「さて、今日は総理との打ち合わせがあるな。待たせないように、手早く準備しよう。」


 朝食をとり、スーツを着ていると、インターホンが鳴る。

 インターホンの画像を確認すると、やはり山田さんだった。


 「おっと、もう時間か。荷物の準備は・・大丈夫そうだな。」


 忘れ物が無いことを確認し、山田さんを出迎える。


 「山田さん。おはようございます。今朝も迎えに来てもらって、申し訳ない。」


 「加賀見さん、おはようございます。もとはこちらがお招きしているのですから、気にしないでください。」


 山田さんは、いつもの落ち着いた感じで挨拶を返してくれた。

 そして、お馴染みの車で官邸へと向かう。

 官邸に着くと、これまた、いつもの会議室に首相と畑中さん達が集まっていた。


 私が各自に挨拶をしながら、席に着くと早速打ち合わせが始まり、総理が話始める。


 「皆さん、お集りいただきありがとうございます。本日の議題は、今後のダンジョンについてと、国ポイントで取得した情報の共有となります。」


 そう言うと、秘書の方が資料を投影する。

 手元にもタブレットが支給されており、同じ画面が共有されているようだ。

 資料には、情報取得により判明したこととして、いくつか項目が記載されている。


 ここからは、担当の役人が説明するようで、総理は席に座った。

 役人は、鈴木さんというそうだ。

 

 「皆さんの活躍により、国ポイントが新たに10,000ポイント付与されました。これにより、ある程度ポイントの余裕が確保できましたので、ここで情報にポイントを交換しておこうとなり、いくつかの情報を取得しております。」


 「なるほど。取得したのは、「資材ダンジョンについて」、「ドロップについて」、「魔石について」、「魔石の利用法について」の四つでしょうか?」


 私が聞くと、鈴木さんは首を横に振る。


 「いえ、こちら以外にも国家運営に関連する条項を取得しています。ここで、表示しているのは、これから皆さんに関わってくるであろうことを抜粋させてもらっております。」


 抜粋、ね。

 聞こえはいいが、ある程度情報統制がされているのだろう。

 まあ、一般人になんでもかんでも、開示されるとこちらの身も持たないので、国のことは国に任せよう。


 「わかりました。それで、これらの情報は、私達、いやにかかわってくるのでしょうか?」


 私が、プレイヤーという言葉をあえて使ったのが分かったのか、鈴木さんは少し驚いた表情である。


 「という言葉を使ったということは、加賀見さんはある程度、趣旨がお分かりになっているようですね。そう、本日共有したい情報は、自衛隊、警察、消防といった安全保障分野全体のプレイヤー化、そして最終的には民間へのプレイヤー化を見据えたものになります。」


 自衛隊、警察、消防は分かるが、民間へも広げていくことをこの時点で明かすのか。

 確かに、避けられない状況ではあるが、政権としてもかなりリスキーな判断になりそうだが・・。


 そう思いチラリと総理の方をみると、こちらをニヤリとしてみているので、この辺も織り込み済みらしい。


 鈴木さんの話に戻ると、各種情報を一覧化したので、資料を確認してほしいというので、手元のタブレットを確認する。


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・資材ダンジョンについて

通常ダンジョンの派生となり、クリアしなくてもスタンピードは発生しない。

資材ダンジョンには、主に以下の二種類がある。

・食材ダンジョン:各種食材が取得できる 

・鉱物ダンジョン:各種鉱物が取得できる 

※取得できるものにはダンジョンごとに特色がある


内部には、モンスターのほかに各種資材が手に入るスポットが存在する。

また、モンスターのドロップ品も資材が中心になり、階層が深くなるほど、貴重な資材を入手することができる。


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・ドロップについて

ダンジョンから発生したモンスターを倒すことで、確率で得られる報酬。

モンスターごとにドロップが異なるが、共通項目として魔石はどのモンスターからもドロップする。

ドロップのレア度は、モンスターの強さによって変化する。


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・魔石について

モンスターからドロップする石。

内部にエネルギーを内包しており、適切な利用法をすれば、エネルギーを取り出して使用することが可能。

エネルギーの内包量は、モンスターが強いほど高くなる傾向がある。


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・魔石の利用法について

魔石は、魔石変換機を用いることで、エネルギーとして利用できる。

魔石変換機によって、エネルギーの取り出し方はいくつかある。

魔石交換機は国ポイントのアイテム交換によって取得することが可能


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 「これは、中々な内容ですね。特に日本にとって新たなエネルギー源の発見は大きい。」


 「はい。この記載が本当であれば、世界のエネルギー事情がひっくり返ることになります。残念ながら魔石の現物がないため、まだ絵空事の可能性もありますが、これまでの非現実的な事象を鑑みると、真実性が高いと政府は見ています。」


 「この魔石変換機というものは、手に入りそうなんですか?」


 「現状のポイント保有状態であれば、取得可能です。ただ、すべてを使用するわけにはいきません。そこで、最も安価な熱に変換できる機器を取得し、研究に充てているところです。」


 なるほど、動きが早い。

 世界情勢が不安定なため、国内でできるだけ賄う必要が出てくる現状なことは皆薄々わかっている。

 最も問題となるエネルギーに多少明るい話題が見つかったことは素直に良かった。


 となると、後は・・


 「ここで、話題に上げるとすると、資材ダンジョンを設置するかということでしょうか?」


 「その通りです。スタンピードの恐れがないとはいえ、モンスターが発生する危険なエリアを設置することになります。ただ、政府の管轄下らは外したくないため、候補地はここで検討されています。」


 タブレットに示されたポイントは全部で三つ。

 千葉県千葉市の東京湾沿い、海浜公園がある場所。

 神奈川県横浜市の東京湾沿い、こちらも公園がある場所。

 大阪府大阪市の大阪湾沿いの公園。

 

 「この三か所から、選ぶ感じでしょうか?」


 「いえ、この三か所が全て設置場所となります。今回、皆さんの活躍により、資材ダンジョンは三つ設置することができるらしいのです。種別は、食材一、鉱物が二になります。関東には食材と鉱物。関西には鉱物を設置予定です。」


 なるほど、三か所か。

 横浜の方は、自宅から近いし、ある程度気軽にはいけそう程度の感想しかないな。 

 私には場所に文句を言う権利も、他に案もないため、案に同意することにした。

 

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