第63話 その頃のA国 ゲーム外

#第三者視点が続きます ※サバイバルゲーム三日目の時間軸になります

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#A国 大統領


 「それで、わかったことを報告したまえ。」


 今回の事態で設立された、未確認異常現象対策室、通称UAP(Unidentified Aerial Phenomena)室の室長に進捗を尋ねる。


 「はい、大統領。現在、わかっていることで特に脅威なことは、ステータスを持つ生物にはATKの効果が無い武器はほぼ効果が無いことです。」


 「ほぼとは、どの程度だね?」


 「通常のハンドガンでは、貫通どころか傷を与えることができません。アサルトライフルや対戦車ライフルとの個人携帯できる最大火力をもってしても、恐らく一定以上のステータスをもつ存在には無力と化すでしょう・・」


 「それほどか・・。それでは、既存の火器はほぼ使い物にならないということだな。」


 「もちろん、ミサイルクラスであれば、一定の効果は見込めると想定されます。ただ、コストに対して効率が悪すぎて現実的ではありません。」


 ただの一個体に対して、ミサイルをばかすか打ち込むバカげた光景を想像してしまうが、確かにあり得ない。


 「となると、やはり、ステータス保持者。プレイヤーの増強は必要か。」


 「そうですね。コスト的な面でも、そしてこれから出現するであろうダンジョンへのリソース確保という意味でも、軍だけでなく民間の協力は不可欠と考えます。」


 民間の協力か、簡単に言うが、法律やルールの整備。

 そして、力を持ってしまう民間人の管理と、頭が痛い問題が山積みだ。


 「だが、やるしかないか。我が国にダンジョンが発生するまでの六か月間で、ダンジョン省を設立し、そのトップに君を据える。やってくれるね?」


 そういうと、室長は恐縮したように拝命すると答えた。

 そして、室長は別の話題にうつる。


 「それでは、大統領。例の国コンソールの解析結果をご報告します。」


 国コンソールか、確かに我が国ではまだ特にポイントを交換していなかった。

 個人ポイントは、ゲームクリア者に帰属する決まりにしたため、個人で使用しているようだったが、国ポイントは入手方法も不明なため慎重な扱いをしていた。


 「国コンソールの素材は一切不明。解析不可能という結果になります。誠に申し訳ございません。」


 「そうか。まあ、予想はされていたことだ。それで、報告はそれだけではないのだろう?」


 「はい。今回、報告と相談したいことは、国ポイントを使用しての情報取得の許可をいただきたいのです。実は、交換ポイントが当初の比率よりも増加している項目がいくつかあります。ポイント入手が限られる以上、早急に手を打つ必要があると考えています。」


 ほお、ポイントが上がっているのか。

 確かに、それであれば必要な情報は先に取得しておくべきだろう。


 「わかった。大統領権限として、ポイントの使用を所持ポイントの二割まで許可する。早急に取り掛かれ。」


 そして、許可をだしたその日の内に室長がすべての予定を無視して、緊急アポイントを取ってきたので、急遽会議を行う。

 室長たっての願いにより、側近中の側近のみの限られた会議となった。


 「それで、室長。どうしたのだ。」

 

 「大統領。時間を作っていただき、ありがとうございます。国コンソールの情報取得の結果、とんでもないことが分かりました。」


 そして、全国民のステータス付与、寿命延長等の爆弾情報を抱えることになった。(奇しくも日本と同様の項目を取得していた)


 「これは・・。とんでもない情報だな。まさか、不老に近い効果をLVがもたらすとは・・。世界秩序が崩壊する程の爆弾だ。これは、どの程度の国が保持してそうだ?」


 「恐らくは、我が国の前に取得していたのは、一か国のみです。ポイントは毎日記録をとっていましたが、初期から増加したのは一度きりだったと記録されていますので。」


 「そうか、一か国のみか。どこがとったと思う?」

 

 室長はしばらく考えた結果、こう推測した。


 「現在、国ポイントを使用することができるのは、最初のゲームをクリアできた僅か十数か国のみと想定されます。その中で、これだけ早く情報を取得する決断ができるのは、日本のMr.中村ではないかと・・。」


 日本か・・。

 確かに現在の総理であるMr.中村は、非常に頭が切れるし、度胸もある。

 最初のゲームが終わり、世界中の人口が一割強減ってしまうという大災害が発生することになった。

 自国の被害が無かったとはいえ、いち早く支援を送り、事態の鎮静化の先頭にたっていたことは、尊敬に値する行為だった。


 「確かに、日本ならあり得るな。そして、この情報を迂闊には外に出せないと判断し秘匿しているのだろうな。日本とは同盟関係もあるし、別途秘密裏にコンタクトを取ってくれ。」

 

 私は私設秘書に、日本とのコンタクトを命じ、これからの世界の趨勢を想像する。


 「まずは、今回のゲームに無事に勝利してからだな。我が国が、敗れることがあれば、今度こそ世界中のバランスが崩壊する。」

 

 この激動の時代の大統領になってしまったことに、多少のやるせなさを感じるが、ここで降りるつもりはない。

 

 自国の利益も当然だが、人類としての利益も考え続けてきたし、これからも考えていける自負がある。


 「乗り越えてみせるぞ。我が国は世界のリーダーとしての役割を放棄するつもりは毛頭ない。」


 だが、大量の難題が積みあがった机を目の当たりにし、少しだけ休憩しようと秘書にコーヒーを持ってきてくれと頼むのだった。

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