第38話 Day1 合流

 「田代さんの情報だと、多分この辺のはず。」


 私は、聞いた通りの木々の中に広場のようになっている場所に来ていた。

 

 「加賀見さん、こっちでーす。良かった、合流できました。正直ちょっと心細かったんですよ。」


 「田代さん。無事で良かったです。モンスターとかはいましたか?」


 田代さんは、私の質問に首を横に振る。


 「いえ、それが見ていないんです。うじゃうじゃいるんだと思っていましたが、意外と大丈夫そうですね。このまま、何もなく終わるかも・・なんて!」


 田代さん、それはフラグになるのでは、そう思ったが、訂正する間もなく回収されてしまったようだ。


 ”ガウ”


 オオカミのような、四足歩行のモンスターが広場に現れた。

 なぜか、怪我を負っているようだが、体は大型犬以上であり、立派なモンスターである。


 「加賀見さん、あれが・・」


 「はい。あれが、モンスターです。まずは、私が戦いますので、田代さんは周囲の警戒お願いします。」

 

 私は、武器生成(槍)でいつもの槍を形成し構える。

 モンスターはこちらを敵と認識したようで、勢いよく飛び掛かってくる。


 ”シッ”


 モンスターの動きは直線的だったので、難なく槍で迎撃できた。

 地面に倒れ、痙攣しているモンスターを槍で抑え込み、田代さんを呼ぶ。

 田代さんはなぜ呼ばれているか分かっていないようだが、こういう時の対応も事前に話し合いが行われていた。


 「田代さん。事前に決めてあったでしょう。安全にモンスターを倒せるときには、レベルが低いものを優先するって。」


 「あ~。確かにそうだったね。いや、すっかり忘れたよ。ごめんごめん。」


 平謝りしながら、モンスターに近づいた田代さんは、一瞬ためらったように見えたが、それでもモンスターに止めを刺した。


 「大丈夫ですか?」


 「大丈夫だよ。心配してくれて、ありがとう。命を奪うのは、流石に経験が乏しいからね。」


 そう言って、田代さんは笑みを見せてくれたので、何とか大丈夫そうだ。

 止めを刺したモンスターは、血の匂いを防ぐため、「亜空庫」に放り込み、気を取り直して、レベルのことを確認する。


 「田代さん、レベルは上がりましたか?」


 「どれどれ~。おっ!?LV2になってるよ。それに、スキル「魔刃」?ってのを取得したみたい。」


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■ステータス

プレイヤー名:田代 葵

所属:日本

称号:なし

LV:1 ⇒ 2


〇パラメータ

・HP:60 ⇒ 80

・MP:20 ⇒ 30

・ATK:7 ⇒ 8

・DEF:6 ⇒ 7

・AGI:7 ⇒ 8

・DEX:6 ⇒ 8

・INT:14 ⇒ 17

・RUK:10 ⇒ 11


〇スキル

・魔刃


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・魔刃

消費MP:2

能力

魔力による刃を形成し、前方に投射することができる。

一度に形成できる刃の数、質は熟練度によって変わる。

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 ステータスも教えてもらうと、値の伸び的に田代さんは完全に魔法型だなと思う。

 スキル「魔刃」は、一度試してもらうと、確かに刃のようなものが、それなりの速度で飛んでいき、木の幹に数cm程度の傷をつけた。


 うまく当てればモンスターにも牽制以上の効果が見込まれそうだし、熟練度があがれば強力な武器になりそうだった。


 思いがけず、戦力アップとなったことを確認し、トランシーバで簡易な報告(モンスターはウルフと呼称)をした後、他のメンバーと合流するために次の目印の方向に動き出した。


 後から思えば、この時もう少し考えるべきだったのだと思う。

 なぜ、ウルフが負傷してあの広場に現れたのか。

 まるでちょうどいいのようではなかったか、と。


 


 次に近いのは、真壁さんだった。

 目印に着くと、何と真壁さんは一人で、イノシシのようなモンスター(ボアと呼称)を倒していた。

 どうやら、身を隠す場所を探す際に、運悪くボアと鉢合わせしてしまったようである。


 ボアは、突進のみの攻撃だったようで、木にわざとぶつけさせた後、持ち前の体格で抑え込み、ナイフで脳天を貫いたの事。

 無事にLV2になったいたようで、スキル「シールド」を取得したと教えてくれた。


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■ステータス

プレイヤー名:真壁 純也 

所属:日本

称号:なし

LV:1 ⇒ 2


〇パラメータ

・HP:80 ⇒ 100

・MP:15 ⇒ 20

・ATK:9 ⇒ 11

・DEF:14 ⇒ 17

・AGI:8 ⇒ 9

・DEX:10 ⇒ 12

・INT:10 ⇒ 11

・RUK:10 ⇒ 10


〇スキル

・シールド


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・シールド

消費MP:2

能力

魔力による盾を形成し自分の周囲に投影することができる。

一度に形成できる盾の数、質は熟練度によって変わる。

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 田代さんとは、打って変わってゴリゴリの物理型、それもDEF特化といったステータスである。

 シールドは、半透明の板状の盾を形成するスキルのようだ。

 試しに私の槍で突くと、硬いものを突いたような反動が返ってきた。

 田代さんの魔刃も防げたため、物理も魔力もある程度の防御力はあることが確認できた。

 

 トランシーバで報告すると、畑中さんと榊原さんが合流できたと連絡があった。

 二人はその場で待機してもらい、私たちは上木さんと合流するため、移動を開始した。


 移動する様子を、何かが遠くからじっと見ていたことには気付かなかった。




 「上木さんは、この辺かな。」


 「あっ、加賀見さん。来てくれたんですね。助かりました。」


 こうして、無事に上木さんと合流でき、一人で逸れているメンバーはいなくなった。

 胸をなでおろしていると、”ガサガサ”と音が聞こえた。


 「全員、警戒。上木を中心に陣形を組め!」


 素早く、真壁さんが号令を出す。

 指揮権の優先度も事前に決めてあり、誰がペアであっても混乱しないようにしているので、指示に従い陣形を組む。


 出てきたのは、ウルフだった。


 「あれが、モンスターですか。初めて見ると、やはり恐ろしいですね。」


 上木さんが、ぽつりと言う。

 大型犬以上の体格であり、牙むき出しの動物などモンスターでなくとも怖い、ましてや、自分の命を狙っていると肌で感じる敵意があるので猶更だろう。

 

 「真壁さん。ウルフが我々の世界と同じ生態か分かりませんが、もし同じなら単体でない可能性も大いにあります。」


 私と田代さんの時は、結局一匹だったが、もしウルフが群れを作るタイプだったら、目の前の一匹は囮かもしれない。

 その意図で伝えると、真壁さんは頷き、上木さんに周囲を警戒するように指示する。


 ”ガァ!”


 目の前の一匹が飛び掛かってきた。

 それと同時にウルフと反対方向から別のウルフが二匹こちらに向かってきている。


 「後ろの二匹は私がやります。真壁さん、田代さんは正面をお願いします!」


 私は、返事を待たず後方のウルフに向き合う。

 ウルフは、私一人であることを確認し、左右から挟み込むように襲ってきた。


 「その程度じゃ、脅威にはならないな。」


 私は、左から来たウルフを槍の石突ではじき返した後、すぐさま反転し、右のウルフが飛び掛かってきたところを、その喉を貫く。

 一匹を手早く仕留め、及び腰になった二匹目にはこちらから近づき脳震盪を起こさせて倒した。


 「加賀見さん。さすがですね。どうやら、真壁さん達も終わったようです。」


 上木さんが声をかけてきた。

 真壁さん達をみると、確かにウルフを倒していた。

 真壁さんが持ち込んだ装備の盾で、ウルフを抑え込み田代さんが、ナイフで倒したとのこと。

 ステータスの向上も実感できたと、喜んでおり、頼もしい。


 「それじゃ、上木さんも、やりますか。」


 昏倒させたウルフを上木さんが倒したことでLV2になり、ステータスはこんな感じである。


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■ステータス

プレイヤー名:上木 智也 

所属:日本

称号:なし

LV:1 ⇒ 2


〇パラメータ

・HP:70 ⇒ 90

・MP:10 ⇒ 15

・ATK:12 ⇒ 14

・DEF:10 ⇒ 12

・AGI:6 ⇒ 8

・DEX:10 ⇒ 12

・INT:6 ⇒ 8

・RUK:6 ⇒ 8 


〇スキル

・光刃

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・光刃

消費MP:3

能力

魔力による光の刃を、手元に形成する。

持続時間は、3分。

刃の長さ、持続時間、ATKは熟練度によって変わる。

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 ステータスは物理型だが、スキルが魔法と物理の中間に思える。

 素のATKが優秀なので威力はありそうだが、消費MPも高いので、当分はここぞというときの切り札的な扱いになりそう。


 こうして、ステータスの確認を終えた私たちは、最後の榊原さん達のいる目印に向かって進むのであった。



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