第33話 日常の乖離と参加メンバー
「久しぶりの仕事だ。」
四日ぶりの仕事に向かうと、多少事情を知っているのか、社員の皆は心配そうに声をかけてくれた。
上司には改めて、謝罪と御礼をして、業務に戻った。
業務を引き継いでくれた同僚に御礼をいい、仕事をしていると、あちらこちらからあのゲームの話題が聞こえてきた。
内容的には、不安が多かったが、中には好奇心からか、多少肯定的な意見もあることには驚いた。
だが、事情を正確に知らない人から見たら、ファンタジーのような能力は確かに魅力的に思えるのかもと、あまり気にしないことにした。
仕事をこなしていると、あっという間に週末になった。
明日は、自衛隊の黒木さん達と打ち合わせの日なので、早めに上がろうと片づけをしていると、一人の知らない男性社員が声をかけてきた。
「あの、貴方が加賀見さんですか?」
「はい、私が加賀見ですが。何か用ですか?」
よく見たら、あのゲームを肯定的に話していた社員だった。
男性社員は少し興奮したように、質問してきた。
「あの!貴方があのゲームに参加していたって本当ですか?あの能力みたいなものは今も使えるんですか!?」
私が、ゲームに参加していたか、ね。
そもそも、政府からも、みだりに話さないようにお願いされているため、話すことはできない。
また、配信の映像はそこまで画質が良くなく、また、遠方から引きでとられていたため、その人の特徴をよく知らないと誰かの特定はかなり難しい。
なので、恐らく確信はないだろうと思った私は、誤魔化すことにした。
「いえ、何か誤解しているようですね。私は、参加などしていませんよ。先週の休暇は、突然体調を崩してしまったので、お休みをいただいたんです。」
上司とも口裏を合わせている言い訳をいうと、男性社員は画像を見せながら食い下がってきた。
「でも、この画像のリュック。貴方のリュックと非常に似ていると思いません?」
確かに、画像のリュックは私のものだから、似ているのは当然だ。
しかし、そんなに珍しいリュックでもないため、ただ似ているだけだと回答した。
それでも、男性社員は自分の主張を曲げず、段々とこちらを責めるような口調になっていった。
「どうして、本当のことを言わないんですか。自分だけが特別だとおもってるんですかね。あんな能力を手に入れて、ヒーロー気取りのつもりですか?俺が日本国民を救ったってw他のプレイヤーは、見捨てたくせに。」
その瞬間、私は一切の興味を男性社員に持たなくなった。
うるさいと思う感情すら無くなり、男性社員を無表情で見つめる。
その明らかに変わった様子に、男性社員は気味が悪くなったのか、捨て台詞を吐いて、戻っていった。
周りの同僚や矢上が、声をかけてくるが、私は大丈夫ですとだけ返す。
特に矢上は最も事情を知っているので、相手の社員に掴みかかりそうになっていたらしく、周りが止めていなければ大変なことになっていたらしい。
私は矢上に心配してくれてありがとうな、と言い帰宅した。
「あんな知らない奴の言葉でも、結構ダメージになるんだな。」
部屋に戻った私は、男性社員の言葉を思い出す。
「他のプレイヤーは、見捨てたくせに。」
見捨てた訳ではないし、誰であっても、どうしようもできなかった。
それは事実であるし、私に責任があった訳ではない。
頭では理解できているが、心の奥底に少しだけ蟠りがあることを感じていた。
それを刺激され、私はやはり気にしていたことを実感した。
「まあ、過去には戻れないからな。これからのことを考えた方が建設的か。」
次の戦いでは、チーム戦と奴は言っていた。
手の届く範囲は必ず守って見せる。
新たな決意を胸に、まずは明日の打ち合わせで決まるであろう、共に戦うプレイヤーに思いを馳せた。
次の日、迎えに来た上木さん、榊原さんに連れられ、自衛隊の基地に再びやってきた。
懐かしの会議室に入ると、黒木さんや前とは違う隊員が全員立ち上がりこちらをじっと見ていた。
驚きのあまり、立ち尽くしていると、「加賀見殿に、敬礼!!」の掛け声に合わせ全員が敬礼していた。
私も、つられて敬礼してしまい、上木さんから「見事な敬礼です」と言われ、赤面しながら席についた。
こうして、思わぬ歓迎?を受けて打ち合わせが開始された。
まずは、黒木さんが、私の参加について改めて尋ねる。
「加賀見さん。ここにいるメンバーが、六か月後に貴方と共に参加する予定です。改めて聞きますが、加賀見さんは本当に戦いに参加いただけるのでしょうか?」
私が頷くと、黒木さんがメンバー紹介をしていく。
彼らはすでにステータス閲覧をコンソールで解除しているとのことで、ステータスも開示してくれた。
メンバーは以下の五人になるようだ。
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■ステータス
プレイヤー名:上木 智也
所属:日本
称号:なし
LV:1
〇パラメータ
・HP:70
・MP:10
・ATK:12
・DEF:10
・AGI:6
・DEX:10
・INT:6
・RUK:6
------------------------------------------------------------
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■ステータス
プレイヤー名:榊原 楓
所属:日本
称号:なし
LV:1
〇パラメータ
・HP:60
・MP:15
・ATK:10
・DEF:8
・AGI:12
・DEX:10
・INT:8
・RUK:8
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上木さんと、榊原さんも参加するのか、二人とも優秀なステータスなことがわかるので、心強い。
後の三人は、この前の模擬戦時にはおらず、新顔だった。
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■ステータス
プレイヤー名:真壁 純也
所属:日本
称号:なし
LV:1
〇パラメータ
・HP:80
・MP:15
・ATK:9
・DEF:14
・AGI:8
・DEX:10
・INT:10
・RUK:10
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------------------------------------------------------------
■ステータス
プレイヤー名:畑中 康太
所属:日本
称号:なし
LV:1
〇パラメータ
・HP:60
・MP:15
・ATK:10
・DEF:10
・AGI:10
・DEX:10
・INT:10
・RUK:10
------------------------------------------------------------
------------------------------------------------------------
■ステータス
プレイヤー名:田代 葵
所属:日本
称号:なし
LV:1
〇パラメータ
・HP:60
・MP:20
・ATK:7
・DEF:6
・AGI:7
・DEX:6
・INT:14
・RUK:10
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新たな三人もそれぞれ優秀である。
LV1の時の、自分のステータスを思い出し、人知れずショックを受けていると、自己紹介が終わった。
そして、黒木さんが、今後のスケジュールを話し始めた。
「これから、この五人と加賀見さんを合わせて六人でチームを作ります。加賀見さんにはお手数ですが、週に数回、訓練に参加をお願いしたい。」
数回の訓練か。
理屈は分かる、今度のゲームが複数人で挑む以上、チームワークは必須だろう。
だが、私も仕事があるため、時間が限定されることを伝える。
黒木さんは「うーむ」と唸りながらも、妥協案を提示する。
「加賀見さんにも生活がありますからな。それでは、月、水、金曜の業務終わりと、土曜日の午前中などいかかでしょうか?」
それなら、何とかなるかと考えた私は、了承の意を示す。
こうして、半年後の奴のゲームに向けて、訓練が始まった。
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