第31話 ステータス、スキルの確認

 ”ピンポーン”


 金曜日の朝、仕事が休みのため、久しぶりにだらだら過ごしていた部屋に、インターホンの音が響く。

 今日は約束なんてしていないよな、と不思議に思いながら、カメラ付きのインターホンの画面を見て、来訪者を確認する。


 「スーツ姿の人が三人か。あれ、二人は榊原さんと上木さんのような気がする。」


 ドアの前には、二名の男性と、一名の女性がおり、その内、二名は昨日知り合ったばかりの人のようだった。


 私はインターホンのスイッチを押し、会話を試みた。


 「どちらさまでしょうか?後ろの二人は榊原さんと上木さんですかね。昨日の今日でどのようなご用件でしょうか?」


 ”昨日の今日で”そう言うと、後ろの二人は気まずそうに視線を下げる。

 代わりに、手前にいた男性が話をするようである。


 「おはようございます。私は陸上自衛隊の黒木と申します。昨日は、本官の部下が、大変失礼なことを加賀見殿にしたことが確認できましたので、ご迷惑かと思いましたが、まずは謝罪のため、訪問させていただいた次第です。」


 昨日のことは、素振りの間にある程度心の整理はついたし、今はそこまで怒りは沸いていない。

 ただ謝罪というなら本人がいないなと、疑問を口にする。


 「謝罪ですか。私と模擬戦をしたことをおっしゃっているなら、当事者がいないようですが。」


 黒木さんは、恐縮したように頭を下げて弁解する。


 「当事者である、佐藤は現在謹慎処分を受けておりまして、こちらに伺うことができません。そのため、貴殿と面識のある榊原と上木を同行させて、伺わせていただきました。」

 

 なるほど、二人はとばっちりという訳か、可哀そうに。

 悪い印象を持っていない二人が、申し訳なさそうに恐縮している姿は、私に強烈な罪悪感を与える。

 これも作戦の内なのだろう。

 そう思いながらも、実際、自衛隊との関係を修正する良い機会と思い、許すことにした。


 玄関の扉を開け、彼らを部屋に招き入れると、私から話を切り出す。


 「わかりました。ひとまず、昨日の件は水に流します。それで、本日こられたのは謝罪だけでしょうか?」


 黒木さん達はほっとした様子だったが、すぐに表情を引き締め、ここに来た二つ目の目的を述べた。


 「謝罪を受け入れていただきありがとうございます。お察しの通り、本日伺ったのは、謝罪と再度の相談のためになります。どうか、半年後の事態解決に向けて、今一度、話し合う機会をいただけないでしょうか?」


 想定していた通り、半年後のゲームに向けての再相談の打診だった。

 これは、私も必要と考えていたので、一も二もなく同意した。


 「わかりました。私も自衛隊の皆さんの力を是非借りたいのです。力を結集させないと日本いや、人類さえ危険になる。モンスターはそれほど脅威だと考えています。」


 こうして、打ち合わせに互いに合意したため、日程を検討した結果、1週間後の土曜日に決定した。

 帰り際に、ほとんど会話のなかった二人から話しかけられた。

 

 上木さんからは、私に対してやはり侮りがあったことを告白され、謝罪をもらった。


 「加賀見さん。昨日は本当に申し訳ございませんでした。少なからず私もあなたを守るべき対象として、侮っていました。」


 「いえ、上木さんは悪くありませんよ。そもそも、弱き者を守る、それが自衛官なのでしょう?私がちょっと、規格外だっただけで貴方の態度に思うところはありません。」


 私が気にしていないというと、彼は笑顔を見せてくれた。

 一方、榊原さんからは佐藤の暴走を止められなかったことを謝られた。


 「加賀見さん。佐藤の暴走を止めることができずに申し訳ございません。自衛官が振るう力は、簡単に他者を害する暴力になる。そのことを分かっていながら、貴方の力が見たいと思ってしまいました。」


 「それこそ、榊原さんが謝る必要は全くないでしょう。そもそも、私が挑発してことも要因の一つですし。他者を害する暴力ですか、私も気を付けなくてはいけません。ありがとうございます。」


 逆に私からお礼をもらった彼女は目を丸くしていたが、その後、ひとしきり笑った後、すっきりした様子だった。


 「では、また。来週の土曜日に。」


 そう言い、黒木さん達は帰っていった。


 また、一人になった私は、これからの予定を考える。

 ただ、特にやることがなかったので、後回しにしていた、この前のクリア報酬の確認をすることにした。


 「え~と。まずはステータスからにするか。LV7、結構上がった、のか?よくわからないが、ステータスはそれなりに上がっているように見えるな。昨日の模擬戦も思ったより、力や反応速度は上がっていたから、これで貧弱ボディともお別れか。」


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■ステータス

プレイヤー名:加賀見 景

所属:日本

称号:なし

LV:1 ⇒ 7


〇パラメータ

・HP:50 ⇒ 140

・MP:10 ⇒ 40(60)

・ATK:5 ⇒ 17

・DEF:5 ⇒ 17

・AGI:4 ⇒ 12

・DEX:6 ⇒ 18

・INT:8 ⇒ 20

・RUK:8 ⇒ 16

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 あらかた、ステータスを確認し終えたので、次はスキルの確認をすることにした。

 すでにお世話になっている「亜空庫」、「見切り」、「修練場(槍)」は理解しているが、それ以外の説明はきちんと見ていなかったので、この機会にじっくりと確認する。


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・MP容量増加(大)

消費MP:なし(パッシブ)

能力

自身のMPを五割増加させる

ステータスの()の数字がスキル適用後の数値

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 「「MP容量増加(大)」はステータスの単純な補強といったところか、単純なだけに効果は目に見えてわかるな。5割は正直凄い、戦術の幅が広がるな。」


 次に、武器生成(槍)の効果を確認する。


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・武器生成(槍)

消費MP:5

能力

自身のイメージした槍を魔力によって生成する

持続時間ではなく、MP5を使用(ロック)状態にすることで維持される

解除、もしくは槍の維持ができなくなった段階で、魔力のロックは解除される

イメージできる強度や性能は、熟練度によって変化する

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 「イメージした槍を形成するって。どうやるんだ?とりあえず、試してみるか、「武器生成(槍)」」

 

 すると、見覚えのある槍が出てきた、昨日も夢の中で素振りしていた槍である。


 「イメージね。一番印象が強いのは、確かにこれだ。強度も申し分なさそうだし、武器の心配が要らないのはかなり助かるぞ。魔力のロックは少し厄介だが、「MP容量増加(大)」のお陰でそこまで負担にはならなそうだ。」


 武器の心配が要らないことは、次のゲームでもアドバンテージが大きそうである。

 よさげなスキルの数々に満足し、ついに大本命ともいえる次の項目に視線を向けた。

 

 「魔法(雷)。これで遂に、私も魔法使いか。30の魔法使い、何かあまりよくない響きだが、まあいいか。事実とは異なるし。」


彼女はいたことはあるし、その先も当然経験はある。

今はおらず、独身ではあるが。

聞かれてもいない言い訳をしながら、気を取り直してスキルの説明を読んだ。


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・魔法(雷)

消費MP:任意

能力

雷系統の魔法が使用可能

使用できる魔法は、使用者のイメージによって形成される

イメージの強度は、消費するMP量と熟練度によって変化する

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 「サンダーボールのような、魔法ではないんだな。これは、国コンソールでみた「系統」スキルになるだろうか。早く使ってみたいが、現実的に使える場所などないぞ。」


 そう、肩を落とすが、ふと思いつく。


 「修練場では、「見切り」スキルが使用できたよな。魔法ももしかして、使えるんじゃないか!?」


 そう思った私は、早速昼寝と洒落込んだ。

 問題はない、なぜなら今日は有休なのだから。


 言い訳しつつ到着した修練場では、予想通り魔法が使用できた。

 興奮して使い続けて、はしゃいでいたら、師匠に呆れた様子で見られてたことに気づき、無性に恥ずかしかった。


 その後の修練は、いつもより厳しかった気がした。


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