第28話 やばい情報
「これは、なんというか。やばいですね。」
総理が、総理らしからぬ発言をしている。
そうして、私が現実逃避して宙を見上げ、総理が「やばい、やばい」とつぶやいている謎の空間が誕生した。
表示された情報は以下である。
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■国コンソール
ポイント:9000
〇情報取得
・国コンソールについて(取得済み)
国報酬でもらえるポイントを何かと交換するための装置。
装置自体は、かなりの耐衝撃性をもち、耐火、耐水等あらゆる耐性を持っているため、滅多なことでは壊れない。
デフォルト時は、誰でも使用できるが、この情報を取得することで、セキュリティ機能がアンロックされる。
セキュリティ機能を用いて、使用者制限、移動制限をかけることが可能になる。
・情報取得について(取得済み)
情報取得の項目を選択し、ポイントを支払うことで開示することが可能。
情報取得に必要なポイントは、どこかの国が取得する度に上昇する
上昇幅は、情報の種類による。
この情報を取得することで、機能のアンロックされた情報取得時は、その機能をアンロックする。
・ステータスについて(取得済み)
詳細は省略
ステータスの上昇率は個人やレベルの高さによって変動する。
この情報を取得することで、全国民が、自身のステータスを閲覧することが可能になる。
開示可能になるタイミングは、国コンソールから指定できる。
また、国コンソールに触れることで、個人単位でステータスを獲得することができる。
・レベルについて(取得済み)
モンスターを倒すことで、経験値を得られる。
経験値は一定値獲得すると、レベルアップとなる。
レベルアップは、数値が上がるほど、必要経験値が上昇する。
なお、レベルアップには以下の副次効果がある。
1.レベルアップに伴う、全盛期の肉体への昇華、維持
2.レベルアップに伴う、寿命の延長
※効果はレベルが上がるほどに高くなる
・スキルの習得方法について(取得済み)
スキルには、ゲームの報酬によって与えられるものと、何かのきっかけで取得できるスキルに大別される。
また、スキルには通常、系統、概念と呼ばれるスキルが存在する。
通常<系統<概念の順に希少度は高いが、強力というわけでは必ずしもない。
1.通常:一つの動きや技を実施するスキル 例:ファイアボール、スラッシュ等
2.系統:系統が近い複数の動きや技を実施するスキル 例:短剣術、魔法(属性)等
3.概念:系統が異なる複数の動きや技を実施するスキル 例:力学、強度変化等
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色々とツッコミどころがあるが、比較的衝撃が少ないものから行くと、国コンソールになるだろう。
壊れにくいということと、セキュリティ機能がかけられることになり、盗難などに対策できたと言える。
次に、情報取得、スキルの習得方法についてだろうか。
これらも、情報は早く手に入れた方が得や、スキルの詳細及び自力で習得できる可能性があることが判明したので、有益だった。
まずいのはここからである。
ステータスについては、凡そ予想通りであるが、全国民が開示可能になるは影響が大きすぎる。
開示時期はコンソールが指定できることが、幸いだったが、”いつ”という時期には、総理や周辺が頭を悩ませるに違いない。
極めつけの爆弾は「レベルアップ」である。
まさかの、人類の永遠の願望「不老」、これに近い効果がレベルアップの副次効果であるらしい。
こんなこと、迂闊に公表したら大変なことになる。
今は、ダンジョンが恐怖の象徴であり、1年後に出現するようになっても、積極的に入ろうとする人はいないと想定される。
だが、もしもこのレベルアップの情報が世に出てしまったら・・
私の脳内に、列をなしてダンジョンに突っ込み、そして帰ってこない人々のビジョンが浮かび、思わず身震いする。
思いもよらない事態に、私が絶句していると、総理が復活したようだ。
部屋に入る前より、数年老いたようにさえ感じる表情に申し訳なさを感じながらも、私は今後のことを質問する。
「総理、この情報はどう扱われますか?私は、きたるべきまで伏せておくべきかと思うのですが。」
総理は頷く。
「そうですね。この情報がこれだけ早く取得できたことは幸いでしたが、開示するには劇毒にすらなりかねない情報です。とはいえ、日本が公表しなくても他の国から流出する可能性は十分にありますので、いつかは公表せぜるをえないでしょうけど。」
総理は、「ふう」と息を吐くと、少し口角をあげて聞いてきた。
「ところで、加賀見さんはレベルはいくつですか?例の効果は実感されてますか。」
いまさっき、伏せとこうって言ったばかりなのに、この総理は結構やんちゃなのか?
とはいえ、正直実感としてはあまり感じていない。
多少動きは良くなったが、レベルアップによるAGI等の上昇のせいだと思っていた。
もしかすると、少しは効果があるのかもしれないが、6程度の上昇ではわからないのだろう。
「いえ、正直あまり実感はありませんね。感じるとしても、かなりレベルをあげないといけないのかもしれません。」
その答えに総理は残念そうに肩を落とす。
総理もお年だし、その辺気にするのだろうか。
「最近妻の小皺が増えたとこぼしてしまい、ものすごく怒られてしまいまして。これが突破口になるかと思ったのに。」
全然違った。
夫婦喧嘩の仲直りの手土産じゃないんだから。
思わずツッコミそうになったが、相手は総理、私はぐっとこらえた。
総理はそこで我に返ったのか、取り繕った様子で話しを戻した。
「こほん。ひとまず、この件を公表するかは政府にて検討いたします。加賀見さんは申し訳ないのですが、ここでの情報は自分の胸の内にだけでお願いします。」
私は当然と頷き、了承した。
これで情報取得の項目は、ある程度確認できた。
時間があまりないため、アイテム交換は、またの機会に確認させてもらえることになった。
総理が、一度話を区切る。
「ありがとうございます。一つ目の議題から、大変でしたが、まだお話したいことがありまして、お時間は大丈夫でしょうか。」
時間を確認すると、12時を過ぎていた、かなりの時間を情報取得の時間に使っていたらしい。
今日の予定は特になかったので、問題ないことを回答する。
「はい、私は大丈夫です。総理こそお忙しいのでは?」
「いえいえ、この件より重大な事項はありませんよ。それでは、次の話は昼休憩をとってから再開しましょうか。行きつけの和食料理店に、仕出し弁当を注文してますので、良ければ一緒に召し上がりませんか?」
総理と昼食は少し気後れしたが、「和食料理店の仕出し弁当」というパワーワードに屈した私は、総理と山田さんら共に昼食をとった。
ちなみに弁当の中身は、鰻や天麩羅、寿司といった、弁当とはと思うような豪華かつ素晴らしい味でとても満足したことを記す。
こうして、夢心地の昼を終え、少し休憩を取った後、議題を再開した。
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