第27話 情報取得の使い方

 ”ピンポーン”

 

 玄関のインターホンが鳴る、時間を見ると9時を少し過ぎたところなので、恐らく山田さんだろう。

 そう思い玄関を開けると、案の定、昨日見た面子がドアの前に立っていた。


 「おはようございます。加賀見さん。準備がよろしければ、早速向かいたいのですが、よろしいでしょうか。」

 

 開口一番、山田さんが官邸に向かいたいとお願いしてきた。

 相当焦っているのか、と思いながら準備は済ませていたので、了承する。


 「山田さん、おはようございます。私の準備は済んでいますので、大丈夫ですよ。」


 こうして、私は山田さんの用意してくれた車に乗り込み官邸へと向かった。

 車の中では、山田さんが積極的に話しかけてきて、正直少しうるさかったが、偉い人が待つであろう場所に向かう緊張感が薄れたので、もしかすると気を使ってくれたのかもしれない。

 奴のゲームのことや、それ以外の雑談をするうちに、目的地に到着していた。


 「それでは、加賀見さん。私の後についてきてもらえますか?」


 そう言って前を歩き始める山田さんの後を、急いで追いかける。

 この先に待つであろう人を思えば、少し足が重くなるが、ここまで来て引き返すことはできないなと思い直し、後をついていく。


 建物の中に入り、しばらく歩くと、ある扉の前で山田さんが立ちどまる。

 扉の前の警官らしき人と何か話をしており、その後、扉を開けて私を中に招き入れた。

 部屋に入ると、そこは会議室のような広めの部屋で、十数人が慌ただしく作業や電話をしていた。

 彼らは私たちに気づくと一斉に静かになり、「あれが、」とか「意外と、」とかこそこそ会話をしている。


 見世物になっているようで少し気分を害したので、山田さんに尋ねる。


 「ここで、会いたい人という方はいらっしゃるんですかね?注目されるだけでしたら、別の機会に出直そうかと思うのですが。」


 私の気持ちを察したのだろう、山田さんは慌てた様子で、私を部屋の奥に案内しながら、謝ってきた。


 「申し訳ありません。彼らも悪気はないのです。貴方の10回戦の勝利を皆知っていまして。あの戦いで大多数があなたの、その・・ファンのようなものになってしまい。」


 ファン?

 そう言われると、注目はされていたが、嫌悪感のようなものはほとんど感じず、確かに少し目の奥がきらきらしていたような気も。

 

 「ファンですか。私はそんなに大したものではありませんよ。たまたま運が良かっただけ、それだけです。」


 「いえいえ、貴方の勇敢な姿勢。諦めない心。それらが、あの勝利を引き寄せたのです。例え運だったとしてもね。」


 山田さんに強めに言われ、私はただ頷くことしか出来なかった。

 そして、更に別の扉の前につくと、山田さんはノックして、中に声をかけた。


 「失礼します。山田です。総理、加賀見さんをお連れしましたので、入ってもよろしいでしょうか。」

 

 すると、中から「入ってくれ」と男性の声が聞こえた。

 いよいよか。私が少し身構えると、


 「総理は、厳しいこともおっしゃりますが、とても国民思いの人です。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。」


 山田さんが少し笑いながら言った。

 部屋の中に入ると、正面のソファーに中村総理が座っており、こちらを見ると立ち上がり握手を求めてきた。

 テレビで見る人だ。と少し惚けながら握手をすると、「お座りになってください」と言われたので、ソファーに座った。

 私は何を話せばよいかわからず固まっていたので、山田さんが総理に対して、簡単な説明をしてくれた。

 その話を聞いた総理は、こちらに話しかけてきた。


 「加賀見さん。まずは、御礼を言わせてください。この度は、国の危機を救ってくれて、ありがとうございました。」

 

 総理が、頭を下げてきたので、驚いた私は慌てて言う。


 「総理、頭をあげてください。私は、必死だっただけで、自分と身近な人のことししか正直考えられていませんでした。何もできずに見送るしかなかった人だって大勢います。」


 総理は、それでも続ける。


 「例え、自分のためだったのだとしても、貴方の成したことは、日本の大勢の人の安全を守ってくれました。救えなかった人がいるのが事実だとしたら、貴方が守った人もまた事実だと、私は思います。」


 「そう、かもしれませんね。私が守れたものも確かにありました。それで、総理はなぜ私をよんだのでしょうか。」 


 総理に労われ、少し恥ずかしくなった私は、強引に話を本筋に戻した。

 総理も強引な展開であることは、わかっているだろうが、特に何も言わずに話を再開してくれた。


 「加賀見さん。今日ここに貴方をお呼びしたのは、他でもない。神と名乗る謎の人物のこと、そしてこれからの日本、いや世界のことについて、話がしたかったからです。」


 そう言うと、近くにいた職員(後で秘書だと分かった)から、昨日ここに突然現れた使徒のこと、国コンソールという装置のことを説明された。

 私は、そんなことが起きてたのかと驚きながらつぶやく。


 「フテラ、そして国コンソールですか。国コンソールとは、何ができるのでしょうか?」

 「それが、まだよく分からないのです。今も隣の部屋で、職員が解析中ですが、フテラの説明以上のことはほとんど分かっていません。」


 総理は疲れているのだろうか、目元を抑えながら、残念そうに話す。

 私は、少しでも何か力になれないかと思い、国コンソールを見せてもらえないかお願いすることにした。


 「総理。不躾なお願いですが、国コンソールを私にもみせていただけないでしょうか?奴のゲームでは、ステータスという個人の能力をデータ化したものも扱いましたので、もしかしたら何か別の気づきがあるかもしれません。」


 総理は少し考えた後、申し出を了承し、私の目の前に水晶のようなものが置かれた。


 「これが、国コンソール?たしか「オープン」。このスクリーンといい、タッチする方式といい、ステータスの画面に似ている。」


 触ってもよいかの確認をとり、私は色々試してみることにした。


 「項目は、情報取得、アイテム交換、ダンジョン操作か。ダンジョン操作は対象無みたいだし、見るべきは情報取得が先か?」


 情報取得をタッチすると、違う画面に遷移したようだ。


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■国コンソール

〇情報取得

・ポイントを消費し、知りたいことを表示する

・選択可能な項目

 ・資材ダンジョンについて(200P)

 ~

 ・スキルの習得方法について(200P)

 ~

 ・魔石について(200P)

etc


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 「これは、一体なんだ。資材ダンジョンは今度のゲームの報酬のやつか?後、魔石なんて知らないぞ。」


 表示された項目の多くは、一番奴と話したであろう私でもわからないことだらけであった。

 それでも、いくつか気になる項目があり、それらをピックアップすると以下になった。


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ピックアップした項目

・国コンソールについて(200P)

・情報取得について(200P)

・ステータスについて(200P)

・レベルについて(200P)

・スキルの習得方法について(200P)

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 基本的なことで、おおよそ検討がついているものであるが、明確にしておいた方がよいと考えているものを選んだ。

 後は、これを使用させてもらえるのかと頭を悩ませつつ、聞いてみるとあっさりと許可が下りた。

 驚く私に総理は、既に決まっていたことだと話した。


 「初めから、加賀見さんが選んだものを取得すると決めていたんですよ。そもそも、貴方の健闘によって、得られたポイントです。全てと言われると困りますが、この程度であれば、問題ありませんし、選択された項目に我々も異論はありません。」


 私は御礼を言い、取得しようとすると、周りにカメラが配備された。

 なんだと思ったが、記録のためですと言われ、仕方なくそのままで、情報取得を実施した。


 取得した情報はスクリーンに表示された。

 表示された内容を見た私は、「これはやばい」と急いで総理に見せることになった。

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