第14話 決着、そして最終戦へ

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■ゲーム リザルト

8回戦:田崎 VS オーガ

勝者:オーガ


神の評論

 「すごい、見ごたえのある戦いだったよ。まさか、勝敗を分けたのがオーガの牽制でしかなかった石とはね、僕もびっくり。やはり、最後は純粋なパワーがものをいったって感じかもね。」

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#ここから、元の視点になります

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 第8回戦の結果が発表されて、私は最早、涙すら出なかった。

 田崎さんの最後の一撃は、確かにオーガにあたっており、致命傷となっていた。

 だが、倒れた後にもオーガは絶命までに至らず、その間に田崎さんの傷が彼の命を奪った。

 字面にすれば、こういうことだろう。

 頭では理解していても、心は納得を拒否していた。


 なんで、どうして、内容的には勝っていたじゃないか。

 それが、生物としての格で負けたっていうのか、そんなのはあんまりだ、理不尽だ。

 そんなことを、叫び散らしたい。


 だが、今はそれをやっている場合ではないし、これからのことを考えなくてはならない。

 このままでは、川上さんや田崎さんの守りたかった人たちすら巻き添えにして、ゲームが終わる。

 それだけは避けなくてはならない、絶対にだ。


 早く、早く、自分の戦いに集中しなくてはならない。

 そう思い私は、誰かと相談しようと顔をあげたが、そこにはもう誰もいなかった。

 そのことを自覚してしまい、下に視線を向けてしまったところで、誰かが話しかけてきた。


 「加賀見さん、なんて顔してるんですか。ほら、約束しましたよね。私の伝言とどけてくれるんじゃないんですか。」

 「加賀見さん。落ち込むのはわかりますけど、俺の分も頼みますよ。所謂、「後は、まかせた」ってやつですね。」


 驚いて顔をあげても、そこには誰もいない。

 それでも確かに、彼らの声が聞こえた気がした。


 「そうだな。「生きるために仕事」がモットーな私が、必要なことから逃げてしまうのは、信条に反するよな。川上さん、田崎さん、貴方がたの大事な人たちには、私が必ず伝えます。」


 気持ちを奮い立たせていると、9回戦の終了の鐘がなった。

 最後は、40代の女性だったようだが、相手はまさかのオーガであり、戦意喪失してそのままリタイアになってしまった。

 

 こうして、日本は勝ち星なく、最終の私まで順番が来てしまった。

 そして、最後の戦いの鐘が鳴る。



#ここから、第3者視点になります。

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#矢上(ゲーム外)


 「加賀見先輩、どこに行っちゃったんですか。電話も通じないし。」


 出張先のビルで、待てど暮らせど到着しない先輩を見かねて、電話をしてみたが出ないため、会社に連絡しようとしていたところ、いきなり該当のスクリーンやテレビの画面が変わった。


 「はーい。皆さんこんにちは、僕は君たち風でいうになります。これから、世界を面白くしようと思うので、よろしくね。」


 その神と名乗る人物は、いきなりダンジョンやら、ゲームは進行中であることやら、好き勝手しゃべっている。

 ネットの掲示板やSNSでは、この話題が瞬く間に広がり、その情報を追っていくと日本だけではなく、全世界的にこの画像は広がっていることが分かる。

 

 「全世界同時ジャックとか、こいつはかなりヤバい奴だ。」


 ヤバい奴だということはわかったが、更に衝撃的なことが判明した。


 「えっ。この人、加賀見先輩じゃん。何でそんなところに。」


 そう、探し人が画面の向こうにいるではないか。

 すぐに会社に連絡したところ、出張を取りやめて今すぐ帰宅してよいことになった。

 どうも、全世界的な混乱が予想されるとのことで、政府も緊急事態宣言を発令することになるとのことである。


 すぐに自宅に帰り、テレビをつけると、どの局もこの報道一色だ。

 特にF放送は、放送局ごとジャックされているらしく、配信そのままの映像が流れており、空前の視聴率になっているらしい。

 俺も、そんなF放送をつけて内容を確認していると、これが悪戯とかではないことを目の当たりにした。


 「人が死んでいる。それに、なんだこの化け物は。」


 とても、フィクションには見えない、だがこんなファンタジーなことはあり得ない。

 今も、第2回戦の様子が映し出されており、30代くらいのおっさんが、火の玉で豚を焼いている。

 ただ、吹き飛ばされ後に、ピクリとも動かない様子を見て、これは現実なのではと思う気持ちと、あり得ないと思う気持ちの狭間で揺れていた。

 何より、加賀見先輩が映っているという時点で、少なくとも異常事態であるので、映像を見続ける。


 こうして、大学生くらいの女の子がリタイアするところを見ては、涙を流し、格闘で最後まで勇敢に戦った男性が負けた時には、思わずテレビをたたいて「なんでだよ!」と叫んでいた。

 そして、9回戦の終了のタイミングで、映像が切り替わり、奴が出てきた。


 「こほん。みんな、楽しんでいるかな?この映像で映っているのは現実であり、そして、プレイヤーの最後もまた、現実だからね。」

 「ここで、ぼくが出てきたのは、悲しいお知らせがあるからなんだ。なんと、一部の国の決着がついてしまったんです~。最初に僕の話を聞かずにリタイアしたプレイヤーが何人かいたので、最終10回戦を待たずに終わりの国もあるってことだね。それでは、決着がついた国を紹介しようかな。はい、ドン!」


 国単位でずらっと一覧が出てきており、その中には、すべての戦いで「lose」がついている国がほとんどで、数か国のみが「win」がついている。


 「これは、一体なんだってんだ。全敗とかだと何かあるんだっけ。」


 俺は、ネットで検索するとルールをまとめているサイトを発見した。


 「えーと、全敗だと「参加者に近しい人間から数えて、国の2割の人間を削減」。いやいやそんなこと無理でしょう。これは、やっぱりいたずらだわ。」


 そうして、呆れていると、奴が話しを続けていたので、面白半分で聞いてみることにした。この不可能をどう辻褄を合わせるのか。

 

 「うんうん。みんな結果は見れたかな。それでは、親しい人とのお別れも済んだと思うので、ペナルティを実行しま~す。あ~ら、ほいっと。」


 そんな気の抜けた掛け声とともに、何かをしたかのような動作をした。


 「いや、そんなことで人が消えるんだったら。俺もできるよ。あ~ら、ほいっと。いや、これはダメだわ。他の局見よう。」


 そして、他の局を見たときに、俺は愕然とした。

 ニュースでは、各国の人間が突然消えたと大騒ぎになっている。

 現在確認されているのは、国となり、行方不明者の数が多すぎて把握できないとも報道されているようだ。


 「マジか。つまり、この神本物で、ペナルティも本物ってこと。いや待て、日本って確か。」


 慌てて、日本の戦績を見る。

 そこには、すべての戦いで「lose」の文字があり、残りは10回戦しかないことがわかる。


 「いや、やばいよ。プレイヤーに近い人が二割って基本知り合いレベルでも全滅じゃね。」


 一般的に、 一生を80年として出会える人として、「同じ学校・職場や近所の人レベルで、3,000人程度」と言われており、今回の日本の人口2割(約2400万人)の範囲では確実に入ってしまうことは想定できる。

 つまり、参加者の知り合いレベルは全滅することは必至となる。

 「終わったわ。これ終わったわ。そもそも、「win」がついている国って全体の1割もいないじゃん。しかも、1回しか勝ててない。あのA国ですら、2人しか勝利していないなんて、無理ゲーかよ」


 ギャーと騒いでいるうちに、奴が話を締めくくっていた。


 「それじゃ、ペナルティも終わったし、最後の一戦お見逃しなく!」


 ”カラン、カラン”

 どこからともなく、鐘の音が聞こえた気がした。

 

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