第12話 運命の開戦

 「ついに、真打登場ですね。配信されてるらしいし、隠れファンとかできちゃうかも。」


 田崎さんが軽口を言うと、私も返す。


 「いや、道化にならないでくださいよ。ちゃんと真打ならかっこつけてくれないと。しかも、隠れてはダメでしょうファンは。」


 こうして、冗談めいたことも言い合う中になるとは思わなかった。

 まだ出会って数時間程度なのに、長年の親友のような気さえする。


 ”カラン、カラン”という音が鳴った。

 消えていく彼はこちらを見ていった。


 「別に倒してしまっても構わんのだろう?」


 ここで、なぜそれが出るんだ。

 というか、君の年齢だとちょっと古くないか。

 そもそも、今の場面じゃないだろう。

 私は戦う前にかける言葉がこれかと思いながらも、勝ち筋のあるセリフを言った。


 「とりあえず、相手が来たら言ってやりなよ。「武器の貯蔵は充分か?」ってさ。」


 そしたら、田崎さんは驚いたような、嬉しいような顔をして、グッと親指を立てる仕草をして消えていった。

 全く、なんでもっと早く言わないんだ、色々話ができたのに。

 少し、往年のオタク魂が出てしまったが、ひとまず彼の有志をみるべく、私は大分少なくなったホールを見渡し、席についた。

 願わくば、田崎さんに勝利を。

 決して約束されることはないが、ただそれだけを祈った。



#ここから、第3者視点になります。

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#田崎


 「いや~。まさか加賀見さんは運命を嗜んでましたか。最後についテンション変になって、言っちゃったけど。結果オーライ。」


 先ほどまで一緒にいた、先輩のような、兄貴のような、親友のような人が、自分と同じ趣味があると知り、喜んでしまう。

 

 「さてと、まずはギミックがあるか探さないとな。わかりやすいと良いんだけどね」


 最初に到着したのは、武器庫である。

 ここでは、特に迷うことはせずに防具と、籠手、ナイフを選んだ。

 ナイフ以外にも、短めの剣など振ってみたが、スキル「格闘」の補正が入るのは、刃渡り6cm程度までのものになるようなので、数本をベルトに括り付けるようにした。

 その後、武器庫を調べたが、ギミックのようなものはなく、あきらめるしかなかった。


 「ここではないとすると、本当に直前か、クリアした人のみの何かがあるのかな。クリアした人もホールには帰ってこないみたいだから、情報がわからないんだよな。」


 こうして、準備が整ったため、待っていると視界が暗転し、どこかの部屋に移動していた。

 そう、川上さんも見た、あのスイッチと取説の部屋である。


 「これは、当たりっぽい。加賀見さんギミック見つけましたよ。」


 うきうきと、取説を読むと、思わずその紙を握りつぶしそうになった。


 「なんて酷い。あいつは神なんかじゃない、もっと別の悪魔か何かだ。」


 そうして、取説を一通り読んだのちに、俺は何もせずに部屋を出た。


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#ここから、元の視点になります。

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 田崎さんが会場に現れた。

 装備は想定していたものを揃えられたようだ。


 若干、顔が険しい気がするけど、緊張のせいだろうか。

 その時、彼の右腕が上がった。

  

 「じゃあ、私が8回戦で見つけたら、合図しますね!見つけたら、会場入り後に右手をあげますよ」


 田崎さんの言葉が蘇る。

 ギミックを見つけたのだ。

 であれば、勝利に近づけたかもしれないので、私はこぶしを握った。


 「であれば、今回の相手は、オークになるかな。簡単な相手ではないけど田崎さんなら問題はないだろう。」


 私は、ようやく訪れた希望に胸をなでおろす。

 そして、対戦相手のモンスターを見たときに、まやかしの希望であったことと、田崎さんの顔が強張っていた理由を理解した。


 「なんだあいつは、初めてみるぞ。鬼、いや、オーガなのか。」


 どうして、そうなるんだ。

 田崎さんは確かにギミックを見つけたと合図を出した。

 なのに、出てきたのは過去最強とも思えるオーガ。

 想定と現実が違いすぎて、吐き気までしてきた。

 

 「まさか、ギミックは戻せないのか・・」


 例えば、ギミックが何らかの制限があり、現状維持か、悪化させることしかできないような形であれば、ひとまず現状維持した上で、ランダム要素により、悪い目を引いてしまったということがあり得る。

 そうなった場合でも、かなり不運ではあるが、ひとまず自分を納得させなければ、他に思考を回せない。

 

 「たとえ、そうだとしても。田崎さんならなんとかできるはずだ。なんたってあのステータスなんだし。」


 そう、彼のステータスはかなり優秀だった。

 自分含め3人のステータスと比較しただけであるが、それでも彼の優秀さは際立っている。

 名前も主人公っぽいし、きっと大丈夫。

 そう自分に言い聞かせ、見守っていると、遂に戦いが動き始めた。


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■ステータス

プレイヤー名:田崎 勇樹

所属:日本

称号:なし


〇パラメータ

・HP:60

・MP:10

・ATK:12

・DEF:10

・AGI:8

・DEX:8

・INT:4

・RUK:4


〇スキル

・格闘

消費MP:なし(パッシブ)

能力

対象の格闘戦闘時に補正(大)。

格闘は長柄の武器を使用していないときに有効。


格闘戦闘時は、「格闘動作補正(大)」、「ATK補正(大)」、「DEF補正(大)」、「AGI補正(大)」を取得

また、MPを消費し、「気功弾」を放つことが可能


・気功弾

消費MP:任意

能力

「格闘」中の戦闘時のみ発動可能。

 消費するMPによって「ATK補正」、「範囲補正」が変更になる。

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作者コメント

すいません。パロディなので、許してください。 

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