第5話 スキルとは

 声をかけたのは、日本人の男性で見た目から高校生ぐらいに見える。


 「なんだい?質問していいよ~。」


 奴は、意外にも質問をゆるしたようだ


 「このスキルっていうのは、いつもらえるのでしょうか?スキルは個人で選べるスタイルですか?後、個人報酬に難易度(ランダム)があるのですが、これはいつ決まるのでしょうか?」


 高校生は、かなり興奮しているようで、早口で質問をしている。

 

 「スキルは、今から与えるというか、すでに与えているね。あの黒い空間は、君たちにスキルを与えるための場所でもあったんだよね。だから、これから教えるのはスキルの確認方法ってことかな。難易度は、お楽しみだからクリアしたときにわかるようになってるよww」

 「ありがとうございます。では、ポイントとは何でしょうか? 国と個人があるみたいですが。後、自分の国とはどこでわかるのですか?」


 高校生は、質問が止まらないようだ。

 ただ、正直聞きたい事なので、ほかの人も静止せずにそのままにさせている。

 私も本来であれば、大人として止めるべきだが、彼が早口なこと以外は的確に確認しているようなので、任せてしまっている。


 「ポイントは、このゲームをクリアした後に使用するものだから、その時に教えるよ。国の所属はこれから確認方法をいうから、少し待ってくれる?」


 奴も、早口に面食らったのか、もう少し説明をする気になったらしい。


 「とりあえず、確認方法を伝えるよ。まあ、日本人はこの手のネタに慣れてるから知ってるだろうけど、心の中で「ステータス」って念じてみて。」


 「(ステータス)うおっ。何か、目の前に出てきたぞ。」


 ステータスと念じると、視界の30cmほど先に半透明のスクリーン上の画面が出現した。

 思わず、驚きで声が出てしまったので少し恥ずかしい思いをしていると、田崎さんから声をかけられた。


 「加賀見さん。ステータス出てきました?」

 「はい。こんな感じで出てきましたよ。田崎さんはこれからですか?」


 私がステータス画面を指さしながら答えると、


 「いえ、私も出しているのですが、ほかの人には見えないようになっているみたいですね。」


 なるほど、確かに田崎さんの指す先には何も見えない。

 どうやら、個人情報は意外と守られる仕様のようだ。

 田崎さんが、話を続ける。


 「本当にゲームのような画面ですね。ステータスが数値化されていますよ。スキルは、「格闘」?なんですかね、これ。まさか、素手で戦えっていうんじゃ・・」


 田崎さんが不安そうにスキルをつぶやき、詳細を確認しようとあれこれ画面をいじっているようだ。

 私も、自分のステータスを確認するため、再度画面に目を向けた。


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■ステータス

プレイヤー名:加賀見 景

所属:日本

称号:なし


〇パラメータ

・HP:50

・MP:10

・ATK:5

・DEF:5

・AGI:4

・DEX:6

・INT:8

・RUK:8


〇スキル

・力学

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「スキルは「力学」か。これだけだと何がなんだがわからないぞ。」


 私は、ステータス画面をみて途方にくれる。

 しかし、このパラメータはどうなんだ。

 全体的に身体能力は低い気がするし、高めなのはINTとRUKのみだ。

 奴の言うことには、「魔法」があるらしいが、それはMPやINTに関係する値だろうか。

 私がステータスの考察をしていると、例の高校生が騒いでいるのが聞こえてきた。


 「チートきた。これから、俺のサクセスストーリが始まるんだ。やってやるぜ。」


 高校生のスキルはアタリだったのだろうか。

 なにやら、興奮冷めやらぬ様子である。

 とはいえ、まずは自分のスキルを把握しなくてはいけない。

 私が、画面と睨めっこしていると、先ほどから画面をタッチするような動きをしている田崎さんが「あっ。」と声をあげた。

 

 「加賀見さん。スキルの名前とか、タッチすると詳細が出てくるみたいです。私の「格闘」は長柄の武器以外を使用時に補正(大)って書いてありますね。長柄って、剣はダメだけど、ナイフとか許されるんですかね?」

 「田崎さん、情報ありがとうございます。私にも、その辺りはわかりませんね。どこかで、試せる場所があるとよいのですが。」


 田崎さんからの情報をもとに、私もスキルをタッチしてみる。


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〇スキル

・力学

消費MP:1

能力

15cm四方の板状の力場を形成する。

力場に向かってくる力の向きを別の方向に向けることが可能。

向ける方向は、180度がデフォルトであるが、熟練度が上がることにより、調整できる。

操作できる力や種類は、熟練度によって変わる。

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 「これは、何とも言えないスキルだな。」


 単純に使用できるタイプのスキルではなさそうだ。

 どちらかというと防御技のようにも見える。

 これからのゲームが戦闘である以上、何かしら攻撃的なスキルが欲しかったが、仕方がない。


 「加賀見さんのスキルはなんでした?強そうなやつです?」


 田崎さんから、聞かれたのでスキルが「力学」であること、攻撃的には使用できなさそうであることを伝えた。


 「「力学」ですか。でも、反射とかはアニメでは強キャラだったりしますからね。相手の攻撃をそのままやり返して撃破とか、上手く使えば、強そうですね。」


 田崎さんには、若干気を使われつつ、2人でステータスの考察とこれからの想像を話していると、また奴から声がかかった。


 「はーい。君たちステータスを確認できたかな。それじゃあ、いよいよゲームを開始していきます!その前に、二つだけ言い忘れていたんだよね。」


 二つって何だ、普通はあっても一つだろ。

 内心、呆れていると、奴が忘れていたことはとんでもないことだった。


 「一つ目は、このゲームは全世界に配信されています。やっぱり配信は重要だよね。世界の皆にも関係あるし。」


 配信?

 つまり、ゲームの内容が世界中に見られるのか、そもそもどうやって実行するんだ。

 いや、そんな事より、「世界の皆にも関係ある」ってどういうことだ?


 「配信は、ネットもそうだし、テレビもこの時間はジャックしちゃいますので、基本的に全ての回線がこのゲーム一色だよ。」

 「二つ目は、国単位でプレイヤーが敗北したときのペナルティになるよ。もし、誰一人として、国単位でクリアできなかった場合は、その国の人口を二割削減しちゃいま~す。」


 私は奴の言葉をはじめ理解できなかった。

 人口を二割削減だと、何を言っているんだこいつは?

 奴はこちらの混乱も知らずに、話を続ける。


 「さらに、この二割に選ばれてしまう可哀そうな人たちは、今回のゲーム参加者の身近な人から選ばれていきます。でも、クリア無ってことは、プレイヤーは生きていないんだし、むしろ、身近な人と一緒にいけるから優しいんじゃない。ということで、ゲームを始めていこうか。」


 待て待て、負けたら自分の命はないということを再認識したこともそうだが、国単位での敗北はそのまま家族、友人の命まで危ないだと。

 私は、改めてこのゲームが理不尽の塊であると認識したのだった。

 

 

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