第3話 他プレイヤー
「神・・」
私の口からは絞り出したかのような言葉しか出てこなかった。
通常であれば、どこのアニメの世界だ、とか、ふざけてないでちゃんと答えろ、という返答になるだろう。
ただ、このあり得ない空間で、人ではない何かではないかと、薄々考えていたために、その回答はなぜかすんなり納得してしまった。
とはいえ、最近のラノベ、アニメあるあるで神にもいろんな種類がある、例えば・・
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・人間に友好的か非友好的か
・異世界の神か、この世界の神か
・位は高いか低いか ※どの程度の力を持つか
・目的は、転生、転移か、それともそれ以外か
etc・・・
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相手の目的如何によって、今の私の立場はかなり危うい。
相手が神と仮定するなら、最近の転生物のように、まさか私は命を落としたのだろうか?
「もしかして、私は死んだのでしょうか。」
勝手に質問するのは軽率だったかと思ったが、こみ上げる不安には勝てず、正体不明の存在に質問を投げかけてしまう。
その質問に対して、神は小馬鹿にするように返答してきた。
「いや、生きてるよ。さっき、「連れてきた」って言ったでしょw」
確かに、連れてきたと言っていたな。
それに、勝手に話したことはお咎めはないらしく、内心ほっとする。
「それは、失礼しました。貴方が神だとして、なぜ私をここにつれてきたのでしょうか。何か目的があると思うのですが。」
気を取り直して、目的を再度尋ねる。
ここまで、話した様子だと即危害を加えられる感じはなさそうなので、少しフランクな話し方に変えてみた。
「目的ねー。まあ、それを話すのは後にするよ。まずは、君を今回の会場に案内しないと。」
今回の会場?
一体、何のことかはわからないが、従う以外の選択肢はなさそうだ。
「会場にはここから、どの程度で到着するのでしょうか?実はあまり、水、食料を持っていないので、もし遠いのでしたら、一度自宅に戻って準備したいのですが。」
「大丈夫、すぐ着くよ。一瞬だね。」
あわゆくば、自宅に一度帰れないかと言ってはみたが、やはり駄目らしい。
「わかりました。それでは案内をお願いします。」
そう言った途端、またしても視界が暗転した。
そして、暗転している最中に奴の声が聞こえる。
「君は面白そうだからね。とっておきを用意しとくよ。」
とても不気味で絶対に碌なことではないと、なぜか確信できる声でささやかれる。
その気味悪さに身震いしていると、どこかに移動したかのようであった。
「うおっ。眩しい。」
久しぶり?の光を感じ、目を開けてみる。
そこは、ホールのような場所であり、かなりの広さを誇っているようだった。
周りを見渡すと、私以外にも人がたくさんいるようで、日本人も見かけるが、どちらかというと世界各国の人間を集めたようなそんな印象を受ける。
「あなたも、ここに連れてこられた方ですか?」
声をかけられて、振り返るとそこには二十代半ばくらいの男性が立っていた。
思わず、立ち尽くしていると、彼は再度質問してくる。
「あなたも、自分の意志ではなく、いきなり黒い空間に連れてこられ、その後、ここに来た。そんな感じだったりしますか?」
黙っている場合ではないので、急いで言葉を返す。
「そうですね。私も黒い空間に飛ばされて、その後、神と名乗る何かにここに連れてこられ・・・」
そう途中まで言うと、彼は驚いたように言葉を重ねてきた。
「ちょ、ちょっと待ってください。あなたは神と名乗る何かにあって会話したんですか?私の時には、何もなくここに来ています。私が話を聞いたほかの方もそうです。本当にその何かは神を名乗って、もしかしてこの件の黒幕だったりしますか?」
彼の剣幕に少し面食らってしまうが、事実ではあるので、冷静に返答する。
「黒幕・・かどうかは、わかりませんが、確かに神を名乗り、ここに連れてきたの
は自分だと言っていましたね。」
そういうと、彼はとても興奮しているようだった。
もしかすると、神に会った人間は少ないのだろうか。
彼は、一方的に話を続ける。
「「ここに連れてきたのは自分」、確かにそういったんですね。やはり、この件は何者かの意図があったんですね。じゃあ、その目的か何かを達成すれば、元の場所に帰れるんでしょうか?」
話しているうちに彼は、どんどん近づいてきており、私は若干後ずさりしてしまう。
「目的については、こちらにきてから話すということで、私も聞いていないんですよ。恐らく、そう時間を経てずに何かしらアクションがあると思っています。」
私の回答に彼は落ち着きを取り戻したようであり、興奮していたことを謝罪してくれた。
どうやら、根は悪い人ではないらしい。
「興奮してしまい、すいませんでした。今まで、何も手掛かりがなく、ずっとこのままなのかと思ってしまい。」
確かに、情報が何もないのは不安が募るばかりだろう。私は気にしないといいつつ、すっ飛ばしていた、自己紹介を始める。
「私は、加賀見といいます。良ければお名前と、現状の情報共有をしませんか。」
そう言うと、彼も忘れていたことを思い出し、照れ笑いをしながら、自己紹介を始める。
「そういえば、自己紹介もまだでしたね。すいません、俺は、「田崎」って言います。」
こうして、お互いの紹介を済ませると、私たちは情報共有を実施し、以下のことが判明した。
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■連れてこられた人
・人種は問わない
※田崎さんが調べた形だと、アメリカ系、ヨーロッパ系、アジア系など様々
・人数は不明
※多すぎてわからない ただ日本人は見かけたのは数名らしい
・目的は不明
※私の情報で神と名乗るものがいることは分かったが、目的はいまだ不明
■連れてこられた場所
・黒い空間の詳細は不明
・人によって黒い空間の滞在時間は違うが、出てきた時間の差は数分なので時間にずれがある模様 ※6時間以上いた人は見かけてないようだ・・(寝てた話をしたら、爆笑された)
・現在の場所も詳細不明
※食料と水は、中央や壁際にあるらしく、一応安全らしい
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「これでは、不明なことは分かったとしか言えませんね。申し訳ない。」
何も分かっていない現状に、思わずため息をついてしまう。
「いえいえ、加賀見さんのおかげで、意図的な何かと、もうすぐ進展があることが分かったので大進歩ですよ!ありがとうございます。」
田崎さんはというと、あまり悲観はしていないようで、この程度の情報でも助かると言ってくれる。
「そう言ってもらえると、助かります。ひとまずは、次のアクションがあるまで休憩ですかね。」
私が、一息つこうと思った時、田崎さんは、壁際を指さして提案する。
その指先には、たくさんのビュッフェ形式の食べ物、飲み物が陳列されているではないか。
「でしたら、腹ごしらえといきませんか?日本食もあってなかなかおいしかったですよ」
ほう、なかなかおいしいと。
そういえば、ゼリー飲料も結局残していたので、何も食べていなかった。
そのため、お腹は大分空いており、不安よりも食欲が勝ってしまい、そろそろと陳列されるご飯へと足を進める。
そうして、腹が減っては戦は出来ぬ、そう言い聞かせて、ご飯を食べることにしたのだった。
※感想:よくあるビュッフェスタイルだったが、提供されている野菜はみずみずしく、ハンバーグや寿司、イタリアン、中華料理など種類も豊富で結構楽しめた。
そうして、腹ごしらえを済ませたころ、会場に奴の声が響いた。
「やあ、みんな。僕は「神」だよ」
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