第16話 過去は鬼の子 [過去編 第一章完]


俺の心臓は酷く暴れた。

ああ、これが感情なんだ


土砂降りの雨が降る日18番は不器用な彼女と出会った。亀裂は壊れて溢れ出す感情を知った。




少女は「行かなきゃいけない場所がある」と言っていた。

18番は一緒に行きたいと言いたかった。もっと一緒にいたかった。

この感情をもっと感じていたかった。

でも伝えなかった、今はその時ではないと思ったのと同時に覚悟を決めた。


少女と別れた後

追手の前に自分から行き捕獲された。施設に戻されて日常が戻った。

名前も呼ばれず血反吐を吐いても…毎日毎日毎日訓練訓練訓練…

今までより薬の投与は増えて眠りが深くなった。

体の拘束具は増えて警備も増えたが

夢の中で少女はいつでも会いに来てくれた。話をしてくれて知識をくれた。薬のせいで頭がおかしくなって夢を見ているとは思えなかった。

夢に乗って彼女は会いに来てくれた。

ある日は痛みを教えてくれた。

ある日は愛を教えてくれた。

毎日毎日続く日常に変化が加わり…彼女は18番にとって光だった。


―18番は鬼の子の中でも特別視され

いつの間にか鬼の子は人間になれず鬼に成り果てていた―


14歳になった頃18番だけが施設から連れ出された。

体を綺麗にされて着物を着付けられ初めて十鬼朱家の屋敷の一室へ案内された。


仏頂面でソファーに座っている男性は50歳手前くらいに見える。

18番が部屋に入ると目が合った、彼の顔を見るとある事に気づいた。

脱走した日に見た

黒い髪と特に青い目が鬼のような…悪魔を連想させる恐ろしいナニカ。扉を触るまでナニカが何なのか気が付かなかった自分を映すドアの鏡。

なにより雰囲気が異様…似ている。

父親の概念がない18番は自分とそっくりな見た目の彼を見て「これが鬼か」と思った。


18番はその日[十鬼朱ときあけ 京乃きょうの]になった。

少女と再び出会うまであと5年―



ーーー




第一章完

ここまでお付き合いしてくださり

ありがとうございました。


次回からは第二章になります

引き続き宜しくお願い致します。


ivy

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最凶鬼は嘘で君を愛したい。 ivy @flower03flower

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