のあの箱舟

クロックス(Qroxx_)

小説的な小説を求めて

 彼女と別れて一週間が過ぎた。私は変わらない毎日を過ごしていた。悲しさとか、そういう気持ちは見当たらない。

 ――目的を果たすのに、感情は不要だ。


 昼間に起きて、冷凍の唐揚げを食べた。途中で白ご飯が欲しくなったから、冷蔵庫にある昨日の残りを取ってきてレンチンした。そうこうしている内に唐揚げが冷めてしまって、もう一度温め直した。

 ――それからは特に何もなかった。


 今日はコンビニでミルフィーユを購入した。私は昔からミルフィーユが好きで、同時に嫌な気持ちにもなる。生地とクリームで何重にも層ができる、あの構造が不愉快だった。

 ――それでも食べたら美味しいのだ。


 暫く経って、また彼女ができた。今度こそ私は埋もれた感情を掘り起こすと、決意を固めた。それから毎日愛した。宝物のように扱った。慈しんだ。

 ――彼女は脅えていた。


「何を考えているのか分からない」


 ――私だって、分からないさ。


「他に好きな人がいるんでしょ?」


 ――私はアナタしか見ていない。


「自分のことが好きなんでしょ?」

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のあの箱舟 クロックス(Qroxx_) @gacheau_tocolat

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