第33話 飛行部隊の創設

第21周回 4月某日 魔王軍総司令部


グダンネッラが出て行って一人少なくなった勇者対策会議室。開け放たれたままのドアをみなで見つめていたが、我に返ったハキムが会議を続行する。


「さて、次の議題に移ります。これは…私が提案したい内容です。以前より魔物課より興味深い計画書が予算を添えて提出されていた事を思い出しました。戦力増強になることはほぼ確実ですが、費用対効果があまりにも悪過ぎると今までは一顧だにしてきませんでしたが、もしかしたら今後の役に立つかもしれないと思い直し、計画書をもってきました。この是非をここのメンバーで検討したいと思いまして…」


とハキムは計画書と予算案の写しをメンバーに渡していく。


ふむふむ、なるほど。飛竜ワイバーン部隊創設計画ね。伝令や偵察等で一部運用している飛竜ワイバーンを部隊化して戦力にしようという事か。航空戦力とか心躍る内容だな。

各部隊や軍団に散った飛竜ワイバーンの集結及び他軍団の場合はその補填及び補償。飛竜の数を集めればその厩舎建設から飼育や調教、飛竜ワイバーンの集団運用やその訓練。飛竜ワイバーンを乗騎とするための装備や騎乗者の選抜やその訓練や各地における飛竜ワイバーン部隊用の補給所などなど必要項目は多岐に渡る。


計画書のあらましをそこまで読んでちらっと視界に入った予算書を見る…うは、これは酷い。ハキムがこれまで一顧だにしなかったのも分かる気がする。


「という事で飛竜ワイバーン部隊の創設計画案という事になります。単なる戦争の道具としては金がかかりすぎて今までは考慮する価値も無かったですが、今後帝国領に潜入や強襲などという事もあるかもしれません。いや、むしろ勇者復活の秘密を暴くとしたら、その機会は確実にあると言えるでしょう。その際にワイバーン部隊が必要になる可能性もあるかと思いました。」


そうか、確かにな。最終目標であるループする勇者の根源を絶つための何かがもしあるとした場合、それは高確率で帝国内にあるであろう。

そんな時にそこへの高速な移動手段があると無しでは何かが変わってくるかもしれない。


「これまではそれに必要な莫大な予算を考えるととても実行に移せませんでしたが、研究費用に関して言えば、かかった費用はどうせ巻き戻って無かった事になるのだから別にいいか…的な意味合いが大きいです。」

とぶっちゃけたハキム。


そういえば、そうだな。研究成果をちゃんと私が理解して時を戻ってフィードバックできるかどうかという問題もあるが、どちらにしろ莫大な研究費用をかけてもどうせ巻き戻るという考え方もあるな。で、もし巻き戻り前にその研究成果なりデータを持って行けるなら装備や施設に関しては残らないが、研究費用に関してはタダ取りみたいなものか。上手い事考えたものだ。


「という事で、今まで個々で細々と運用していたワイバーンを集団運用する事に関して見たところ異議なしと見て、これを実行に移します。」


そうだな…適正を見ながら飛竜ワイバーン部隊の部隊長も決めないといけないな。まぁ、それも上手く行かなかったら次の周回で他の部隊長にしてもいいわけだから、幅広く適正を探っていこう。


「アドラブル閣下は、飛竜ワイバーンを使った帝国潜入があればそこに参加する訳ですから、飛竜ワイバーンの騎乗訓練していただくのは全く無駄になりませんんな。飛竜が集まり次第、閣下と相性の良い個体を探しつつ、騎乗訓練をよろしくお願いいたします。」


そうだな。効率の良い訓練計画等は巻き戻る時にもっていけるが、他の者が訓練した結果は持って帰れぬ中、私だけは持って帰れるのだし、その訓練内容を率先して私が実行できれば訓練効率もより上がるだろうからな。


「ふむ…そうだな。今後飛竜ワイバーン部隊の隊長を選抜しないといけないと思っていたのだが、適材がいたらその者も勇者対策会議のメンバーにしても良いかもしれないな。」


「そうですな。私の方でも部隊長になれそうな候補者をリストアップしておきましょう。その後、飛竜ワイバーン自体への適正や指揮官としての適性を考慮して閣下に決めていただきましょう。」




飛竜ワイバーン部隊の創設が公布され、隊員を広く募集する事になった。

ドラゴンライダーといえば、男の夢でもある。

各部隊で偵察などに使われていた飛竜ワイバーンが第一軍がいる魔王都へ続々と集結するとともに、魔王軍の中でも精鋭ともいえる戦士達の中で飛竜部隊への参加を希望する者たちもまた魔王都へ集まってきていた。そして、飛竜ワイバーンへの相性や適性、魔王軍への忠誠度(これ大事)を判断され、選抜されていく。


集められた飛竜は30余。それに対して隊員はほぼ倍の60名程度。

面白いのは、先日精霊と契約できたものは全て含まれた事だ。そこら辺なにか共通するものがあるのかもしれない。


次回の周回ではこの60名は、全員精霊確保ツアーに連れて行こうと思った。

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