第29話 グダンネッラ

タリアトとのランチデート回の話を書こうと思っていたんですが、どうしても筆が進まなくて一旦省略して後日談にすることにしました。(多分それまでには書き上がっているはず)

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第21周回 2月某日 魔王都工房区グダンネッラ魔導工房


タリアトと楽しくも刺激的なランチデートを過ごしたアドラブルは、非常に満足気なタリアトに導かれて魔王国で最も優れた魔法使いの一人であるグダンネッラの魔導工房を訪れていた。


「グダンネッラ様、閣下をお連れしましたよー。」


「婆さん、久し振りだな。」


「アドミラル坊や、忙しいところ済まないねぇ。」


「…流石に坊やは止めてくれないかな。」


「なら、あんたも婆さんと呼ぶのを止めるんだね。」


ひゃっひゃっひゃっという笑い声で答えるグダンネッラ。真っ黒なとんがり帽子に真っ黒なローブ。よくいる魔法使いの恰好だ。勇者一行にいる帝国の魔法使いとも似ている装いともいえる。

もっともこっちは小人族ホビットでずんぐりむっくりとした体形だが。


「で、単刀直入に聞くが、どうなんだ?大まかには聞いているんだろう?」


「勇者対策会議への参加ね。いいよ、アドラブル。あんたの事も知らない仲ではないし、魔王軍が負けても別に良いが、帝国が勝つとなると話は別だ。あの酷い人類至上主義の帝国が勝つとここも随分と住み難くなるだろう。流石にそれは嫌だからね。」


「そうか、助かる。で、俺にここに来ないと話を進めないってのはどうしてなんだ?」


グダンネッラはチラッとご機嫌なタリアトを見ると。

「ふむ…まぁ、それに関してはもう良いよ。あんたがここにわざわざ足を運んでくれたことで満足した。」


「そうか、ならば良かった。で、どうだ?心当たりはあるか?」


「勇者が時を戻して何度も蘇って来る事かい?流石に見た事も聞いた事もないねぇ。ただ、その突拍子も無いものが確実に存在しているという前提であれば、その方法が全く検討も付かない…という訳ではない。」


「ほぅ?期待して良いか?」


「いや、流石にまだそこで頷ける段階ではないね。調査や研究を重ねてやっとその仮説が朧気になんとかというところだよ。勿論、1年間で終わるわけもないだろうから、周回を重ねて研究するためにもアドラブルが毎回一年前の私にその研究成果を伝える必要がある。…あんたが文書でも持ち越せれば良いんだけどねぇ。」


「全くだ。毎周回グダンネッラの新しく構築する理論や考察をきちんと理解して、次回のグダンネッラのタイムロスにならないようにフィードバックしないといけないとか難易度が高過ぎる。」


「ひゃっひゃっ。頑張るんだね。ところでもう一つの話である精霊族についてだが、アドラブル。あんたはもしかすると加護が得られるかもしれないね。」


「…加護?精霊のか?そんな話は初めて聞いたが。」


「キホケムラ、出ておいで!」


とグダンネッラが声をかけると、グダンネッラの肩のあたりに小さな炎が現れた。


「こいつは火の精霊でね。私のことを気に入ってくれていつも一緒にいてくれるんだ。気まぐれに火に属する珍しい素材をくれたり、火の神秘に関する知識を教えてくれるんだ。しかも、それだけじゃないよ?私の魔法力を…そうだね、軽く見積もっても一段階は高めてくれているね。」


「それは…控えめに見積もってもすごいな。」


「そうさ、だから多少のいたずらにも目を瞑るさ。」

とグダンネッラは言う。

確かにな、いたずら好きと知られる精霊の多少のおイタにも目を瞑らざるを得ないな。


「このキホケムラのように精霊族は、気に入った相手に加護を授ける事があるんだよ。…まぁ加護を授けるといっても気まぐれな精霊が、ただ気に入った相手についていって何となく良い事が起きているだけで、それを私らは加護と呼んでいるんだがね。しかし加護と言ったが、良いことの方が多いが良いことばかりではないよ。所詮、気まぐれな精霊達だし、イタズラ好きでもあるからね。たまに私の非常に大事な薬草や文書を燃やしたりするのさ。」


「…大丈夫なのか、それ。」


「さぁね。ただ、基本的に加護をくれている相手を気に入ってくれているのは間違いないから、戦闘中に致命的ないたずらをして加護者に致命的に不利な結果を与えたりはしないだろうさ。それにもしかしたら勇者が時を戻る時に何かを感じてくれるかもしれない。もっとも感じても気まぐれだから教えてくれないかもしれないがね。ひゃっひゃっひゃっ。」


意味あんのかそれと思ったが、口には出さなかった。でも、顔に出ていたようだ。


「まぁ、そんな顔しなさんな。そっち方面で期待できなくても、加護といった直接的な助力をもらえる方は確実に期待できる。私のような魔法力じゃなくて、力や敏捷なんて可能性もある。それらが一段階でもパワーアップしたら、とても心強いだろう?」


「それはそうだな。」

なんでもいいから身体能力が一段階レベルアップするのならば、勇者と戦う際にとても大きな力となるだろう。


「そうだろう、そうだろう。あんたが勇者一行と戦う時にきっと…多分?たまに?力になってくれるだろうよ。」


きまぐれだからね。と片目をつぶって見せたグダンネッラ。はぁ…思わずため息が出る。


「で、精霊族なんだが、この近くだとグランザール大樹海の奥地が良いかねぇ。そこでならアドラブルの事を気にいる精霊がいるような気がするよ。来週にでもいくとしよう。アドラブル、予定を空けておくんだね。それと…あとタリアト。あんたも可能性があるから、あんたも行くんだよ。わかったね。」


はーい。とタリアトはにっこにこで返事をしていた。なんかにこにこになる要素あったか?

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