第28話 勇者対策会議増強計画

第21周回 2月某日 総司令部執務室 勇者対策会議


「前々回の護衛隊が全員参戦できた結果と、前回の護衛隊3名だけが戦った結果を考えると、護衛隊全員が上手く閣下と連携できさえすれば、もう少しの間は最終決戦で閣下が勝利できそうな気もしますな。ただし、それだけではジリ貧ですので、今まで後回しにしてきた勇者が何度でも蘇ってくるという根源への解決方法にもメスを入れなければならないでしょう。」

と凛々しい姿で会議を進めていく忠犬ハキム。いや、犬人族であって犬では無いが、茶色い美しい毛並みがもふもふでいい。撫でたい。


「と、そこでその解決方法へのアプローチを得るためにこの勇者対策会議室のメンバーを増員する事を私は提案します。」

と諜報部隊長エルデネト。こっちも狐人族で、茶色い毛並みがもっともふもふして素晴らしい。撫でたい。絶対に嫌がられるけど。


「この面々において、閣下こそ魔法もかなり使えますが、魔法の専門家というべきが人物がおりません。勇者の召喚…まず召喚魔法の類かもというのが第一に思い浮かびますので、そちらの面からアプローチできる人員をこのメンバーに加えたいと思います。」


「もしかしてあの小うるさいババアか?」

何かを思いついたのか少し嫌な表情を浮かべる護衛隊長ボルガン。熊人族であるボルガンももふもふだが、こっちは別に撫でなくていいや。あ、個人的な好みの問題でね。


「まぁそうなる。」

とその相手が小うるさい事もババアである事を否定しないエルデネト。


「あら、グダンネッラ様の事をそう悪く言うものではないわ。」


「タリアトは昔から娘のように可愛がられていたからなぁ。」

とハキム。ハキムもあんまり関わり合いになりたくなさそうな雰囲気だ。とはいえまるで他人事のように私も言っているが、知らない相手ではないのだが。グダンネッラという魔王国では魔法の大家として有名であり、魔道具作成の第一人者としても高名な人物だ。尤も癖が強い…偏屈な人物としても有名だ。


「確かに魔法に関して言えば、彼女の右に出る者はいないだろう。しかしまぁ…皆のその反応を見る限り、タリアトに当たってもらうのがいいかな。タリアト、頼めるか?」


「はい、閣下。」


「それと、今回の争いは人族と魔族…人族以外全てとの戦いです。精霊や妖精族といった普段はコンタクトすら難しい種族に助力を頼むことも、視野に入れてもいいかもしれません。」

とハキム。


「でも、あいつらっていつどこにいるかが全く分からないし、っていうかその前に話が通じるのか?」

とボルガン。


「我ら諜報部でもどこにいけば必ず出会えるという情報は持っていないですね。ただ、もし魔法以外の手段で勇者が何度も蘇っているとするのならば、その不可思議な現象に精霊や妖精族が関わっていたとしても全く不思議ではないので、もし機会があるのならば積極的に接触していった方がいいと思います。」

とエルデネト。


「諜報部の方で情報を持っていないのであれば、現時点ではいろいろと難しそうではあるが…グダンネッラ老の方で何か知っていたりしないかね。」


「博識な方ですから可能性はありますわ。元々グダンネッラ様を訪ねる予定でしたので、その時に聞いてみますね。」


タリアトにそれも頼むと伝えると快く了承してくれた。

その後、護衛隊強化計画や魔王軍強化計画などの現在進行中の各種計画の報告及び進捗の確認が行われ、この日は解散となった。




―――数日後


「閣下。お話が…お願いがあります。」


と、タリアトが総司令部――執務室に入ってくるなりそう話しかけてきた。


「なんだ?」


「グダンネッラ様の事です。」


「おう、会えたか?どうだった?」


「お会いする事は出来たのですが…。ご助力いただきたい件や、精霊妖精族の件をお話したのですが、最初は割と良い反応だったように見えたのですが、次第に閣下を連れてこいの一点張りになってしまいまして…お忙しいとはわかっているのですが、ご同行願えませんでしょうか。」


「ふむ…なら仕方ないな。お願いするのだし、こちらから一度出向いて挨拶しておくのもまた筋であるともいえる。いつなら良いのだ?」


「今週中は今日も含め、午後ならいつでもいいそうです。」


ふむ…なら、善は急げ。今日行くか。


「タリアト、本日の午後一番で行こう。案内を頼めるか?」


「はい、閣下。ご案内させていただきます。午後一番となると…お昼ご飯はどうされます?」


「…ん?お昼か。予定外の行動で時間が押すから、抜くかな。タリアトは食べておくのだぞ。」


「閣下、それはいけません。健全な精神は健全な身体にこそ宿ると言います。いい仕事をするためには、きちんとご飯を取らねばなりません。そういえば、グダンネッラ様の工房近くに美味しいランチを出す店を知っております。予約してあ…予約しておきますので、是非行きましょう。いや、私が食べたいので是非連れて行ってください。」


「え?まぁ、それなら別にそれでも構わないが…」


と了承する旨を伝えたところ、なぜか小さくガッツポーズしてる。なんで?


「グダンネッラ様への先触れも手配しておきますね。」

となぜか嬉しそうに出て行った。…まぁ、ダルそうに同意されるよりは全然良いのだが。

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