第三部
第25話 21周回目の魔王軍
第3部書き終わってないですけど、ぼちぼち投稿していこうと思います。
途中から今までのペースでは投稿出来ないと思いますけど、よろしくお願いいたします。
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第21周回 1月6日午前 魔王軍総司令部 アドラブル
新魔王就任式及びその祝いの宴は、毎度の如く
その翌日、これまで通り側近筆頭のハキムには魔王軍の武器の手配を任せ、他の側近達には策を授け世界各地で侵攻中の軍団長の元に派遣した。それと当時に勇者対策会議室に参加してもらう予定の面々に対しては、ハキムが戻ってくる予定の1月6日の午後に総司令部に来るように伝えてある。
この5日間、前周回の反省を何度もした。
今回は本当に負けたと思った。いや、実際に負けていた。最後はもう本当に何も出来ず、ただ敗北を受け入れるしかなかった。
あの最後の瞬間は何が起きたのかよく分からなかった。タリアトが私の弾き飛ばされた破軍刀を持って背後から勇者を突き刺し倒したのだと理解した時は、嬉しさよりも困惑が
え、なんでここにタリアト?って。
いや、本陣付きのメイドだから確かにいてもおかしくはないのだけど…。
そして勇者を打倒したタリアトは、左腕を失って残った右腕も聖剣に刺し貫かれて両手が全く使えない状態の私のところに来ると…
…
…
…
コホンコホン。まぁ、その事はいい。
その後タリアトと勇者が何かを話していたようにも見えたが、間もなくいつものように時の巻き戻りが始まった。
最終決戦の勇者一行との対決の場面において、反省や改善点があるのではないかと色々と思い返していたのだが、基本的にはあの場面で私に盤面を左右する事の出来る何かはあまり無かったように思える。だから最終決戦までのアプローチ、こちらを大きく改善しなければならなかったと思うとともにその余地は大きくあったと思えた場面が多数思い浮かんだ。
まず第一に前周回は前々周回ほど最終決戦において、勇者対策会議室が機能しなかった。これに尽きると思う。
前々回(第19周回)、勇者対策会議室の作戦がバッチリ嵌って、前前々回(第18周回)の苦戦が噓のような楽勝に終わった。それは勇者対策会議室の面々が作戦を考えてくれた成果であったので、私はその喜び・感謝をそのまま勇者対策会議室のメンバーに伝えた。いや、伝えてしまった。その結果、当然それまでの経緯を知らないメンバーには勇者との最終決戦が、苦戦必至の一大事とはとらえてもらえず、勇者対策会議室は一年を通して前々回のような熱気が無かった。何度も勇者一行の強さを伝えたのだが、やはり最初のインパクトという奴は大事だったのだろう。私と彼らとの間にあった温度差はついぞ解消される事は無かった。ただそれでも前々回とほぼ同じ対策はしているので、私もまぁ大丈夫かと安易に判断してしまった。しかしそのツケは大きく、以前とのその熱の差が結果にダイレクトに現れてしまい、最終的には薄氷どころか紙一重の差にまでなってしまった。
次に護衛隊について考察した。
前々回は護衛隊総勢6名を3人組×2組で編成。まず敵魔法使いの攻撃を最初の3人が力を合わせて受けた。結果的には受けきれずに戦線離脱する事になったが、もう一組が被弾している間に一組目は回復して戦線復帰し、また攻撃を受けては回復…という形で結果的に最後まで敵魔法使いの攻撃の大半を護衛隊が請け負ってくれていた。
しかし、今回護衛隊6人のうち3人は挑発にのってしまい各個撃破された。挑発に乗らなかった3人は、作戦通り魔法使いの攻撃を引き受けてくれていたものの、3人では敵魔法使いからの強力な魔法攻撃の前に回復が全く追い付かず、結果的に10分もたずに全滅する事となった。
次は勇者一行自体の今回の強さ――前回からの上積みについて考察した。
勇者一行が前々回と比べて大きく変わっていたのが、重戦士タスクが巨大な白銀に輝くの盾―聖騎士の大盾―を持っていた事。それとレベルが前回対戦時より更に下がって52になっていた事。
しかし、そのレベルの低下を差し引いてもこのタスクが装備していた聖騎士の大盾は優秀だった。タスクの防御性能は元々高く非常に厄介ではあったが、それでも無理をすればその防御の上から私の攻撃を通すことは可能だった。そのようにして瞬間的にタスクを近接戦闘範囲から弾き飛ばし、短時間ながらも勇者を私と1対1の状況に持ち込む事もやろうと思えば出来ていた。だが、この聖騎士の大盾をタスクが装備するようになってからは、そういう無理をしてもあまり効果が出なくなっていたのだ。
今まで勇者と重戦士だけの1対2であれば、基本的には互角以上には戦えていた。ただ、そこに魔法使いが加わるとかなり苦しくなっていた。更に聖女が前衛二人を回復するような展開であれば、それはもう防戦一方だ。時間切れ――決死隊の全滅による勇者一行を完全包囲しての勝利――を狙うしかなくなる。
だから今回護衛隊が10分足らずで全滅し、魔法使いが私への攻撃に全力を注げるようになってきた後は本当に厳しかった。魔力を空にするほど魔法を行使して更に左腕を犠牲にしてまで、重戦士と聖女を倒したがその代償は大きく、その後の勇者との戦いが続かなかった。
あのまま1対4をするよりはマシだったとは思うのだが、結果的には当初の目論見――聖女さえ排除すればなんとか時間切れまで粘れるのではないか――は外れた。ハキムたち精鋭部隊の後詰が来るまで私がもたなかったのだから。
そこでのタリアトの意識外からの参戦は非常に嬉しい誤算で、あれが無ければ前回で負けて終わっていたのは確定だが、次からは勇者は
…えーと、魔王軍トランプがあったとして、
おっと、また話が脱線してしまった。
結論から言うと、要は勇者対策会議室の面々に大きな危機感を持って一年間対応してもらわないといけないという事だ。今回は普通に前回の事について話しても危機感を持ってもらえるだろうが、そんな危機感を持ったり持たなかったりの行ったり来たりを、毎度毎度繰り返す訳にもいかない。
勇者対策会議室の面々に、毎回危機感をもってもらえるように工夫して勇者の脅威を伝える必要がある。ではそれはどのようにして伝えれば良いのか。
前々回の上手くいった周回の事を考えると、タリアトを呼んで助力を願うのが良いのだろうか。前回の最後のこと…は、タリアトは覚えてないからそこは考えなくていいか。しかしそれを抜きにしても、タリアトに頼みごとをしないといけないとかどんな罰ゲームなんだろう。かなり気が進まない。
そのような事をデスクで考えながていると…
―――ガチャッ
「お呼びですか?」
と、明るい声で黒いメイド服を着てホワイトプリムを頭に付けたタリアトがティーセットを乗せたワゴンを押して部屋に入ってきた。
呼んでない。私はまだ呼んでない…。
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